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9.海運の国

「やっと着いたか」


 ザパァ


「海運の国、"ザパーン"」


 そこは陸から300メートルは離れている海上の上に国が存在していた。


 陸から繋がる道にいる私達は、遠くからそれを見つめる。


「やっと着きましたね」

 ティアが私の前にピョンと跳ねてきて、私の顔を笑顔で覗き込んでくる。


 今はこんなに笑顔だが、途中まではとても笑顔を見せる余裕などなかった様だった。

 しかし、ここに来るまでに色々な失敗を重ねて成長したお陰だろう、テントを張れる様になり、片付けも出来る様になった。お金の使い方も私が教えたお陰で、頭の中では理解できている様だった。


 まぁ、後は実践でちゃんと出来るかだが…


(綺麗なところじゃない!)

(おぉー。綺麗ー)

 2人はこの国が気に入った様に声を挙げる。


「そうだな」

 俺はティアに気付かれない様に言う。


 その国はまさに1つの島の様に存在しており、青や白を基調とした色合いで、どこか元気になる様な色だ。

 また沢山の船があり、観光客の様な人も多く、私達の横を通り過ぎて行く。

 それほど魅力的な国だと言う事だろう。


 私達は城壁がある所まで歩いて行くと、大きな門があった。そこには国境の様な兵士がいる訳でもなく、皆が自由に出入りしていた。


「…何の確認もなしか」

「何かあるよりもいいじゃないですか! 私、身分を証明する物とかないですし…」

 ティアは哀愁を漂わせ、地面を見つめる。


 まぁ、俺達にとっては好都合だろうな。身分を証明する物がなければ、長い時間拘束されるだろうし。しかもティアに関しては逃亡奴隷と来た。これがバレたら、奴隷商人がティアを捕まえる為にわざわざここまで来る可能性も考えられる。

 あいつ等の情報収集能力はそこらの国よりも優れているという。


 身分証明書を作っておかなければならないな。


 それにしても…ここに何の確認もないのは個人としてはありがたいが…国として考えたらダメだろ。


 私は海運の国ザパーンに、一抹の不安を覚えながら門をくぐった。



「へぇ…!!」

「す、すごい人がいっぱいです!!」

 ティアが叫ぶ。


 まさかこんなに栄えているとは思っていなかったな。


「さぁ! らっしゃい!!」

「今日は良いホーンフィッシュが取れたよ!!」

「ビックラットの大串! 食べればほっぺがとろけるぞー!!」

「今日はうちに泊まっていかないかい! サービスするよ!!」


 パッと見た所に八百屋、魚屋、屋台、宿屋等があった。もっとしっかりと見れば、色々見つかるだろう。




 さてと…【物体会話】発動。


 周りにバレない様にスキルを発動させると、周囲の物体から声を聞く為に目を瞑り、集中する。


「…レルさん?」


(それにしてもあっちぃな!)

(最近は涼しくなってきたみたいよ)

(またあの人、やったみたい)

(アイツにとって人はそれ程の価値しかないって事だよ)

(そういえば最近海で化け物が出たって話聞いたか?)


 ふむ。色々と面白そうな話があるみたいだな。

 流石、海運の国と呼ばれる事はあるな。話題に尽きなそうだ。



 私は口角を上げ、1番気になった話をしていた物体の元へ向かった。

「面白い!」

「続きが気になる!」

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