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この星の文化は難しい

小屋の中で、簡素な食事を取る。

カスカスのパンを、何かのフルーツジュースで流し込む。


正直、ひどい食事であるのだが、目の前の二人がニコニコしているのを眺めていると、なんだかおいしいような気がしてくる。

不思議なものだ。


体内のナノ装置、面倒なのでナノと呼ぶが、一応警告は出してきていない。

多分食えるのだろう。

駄目でも仕方ないし、もうどうでもいい。

辺境の惑星で、一人侵略者が死ぬだけだ。


あらためて、太陽系第三惑星の住民を眺める。

自分と同じ、ヒューマノイドタイプだな。


デザインが随分と個性的だ。

惑星連盟では、胸をあれほど強調しない。

だが、なんだろう。

随分と心が引かれる。


チチの胸元に手を伸ばし、モミモミとしてみる。

柔らかい、先っぽにコリコリとした塊があり、それがさらに心を魅了する。


ふと、先ほどまで笑顔だった二人の顔が引きつっている。

散々に蹴られて、小屋から追い出された。

どうも、文化的にまずいことをしたらしい。


「がpg;@あぎ@あp」


ナノでも翻訳できないような罵声を浴びて、外に投げ出された。

相当まずいことをしたようだ。

しまったとも思うが、もうどうしようもない。


そのまま、外に寝転がって、夜空を見る。

たくさんの星がキラキラと輝いている。

あのどれかに、惑星連盟の母星もあるかもしれないな。

上司の3足歩行型連動思考機に、一発くれてやればよかった。

いまさらに、そんなことを思う。



いつの間にか、小屋の前で眠ってしまったようだ。

朝の陽ざしが皮膚に刺さる。

日焼けした後が、赤くなっている。

ナノが体内で動いているので、大事にはならないだろうが、痛いのはやはり嬉しくはない。


小屋の中から二人が出てくる。

二人とも心配そうに覗いている。


資料で見た、日本式の謝罪を試してみる。

ジャパニーズ土下座だ。

これは最大級の謝罪を意味するらしい。


許されなければ、セップークという、処刑の儀式が行われる。

まぁ、許されなくてもいいか・・・という気持ちも少しある。

彼女たちは、自分を助けてくれた人だ。出来る限りの謝罪はしておきたい。


「ねぇ リュートちゃん、頭打ってたし、それであんなことしたんじゃない?」


「チチ、聞いたことあるぞ、子供専門に狙う変態外人がいるらしいって。」


「でも、それならあんな風に謝るかしら。」


「・・・わからないよ。」


どうも二人は、謝罪を受け取ってくれたようだ。

これ以上は迷惑になるかもしれない。


早々に立ち去ることにしよう。

そう思って、あてもなく立ち上がる。

二人にもう一度頭を下げて、靴を脱ぐ。

足にぼろぼろのビニールを巻いて、のろのろと歩き出した。


海はきれいだな。あそこで死のうか・・・。


足音がモシャモシャと鳴る。


どかぁっ

いきなり後ろから蹴られる。


リュートが、目に涙を溜めて立っていた。


「そんな寂しそうにしたって騙されないんだからなっ」


そんな風に言うのなら、行かせてくれよ・・。

悪かったね、知らなかったんだ。


「今日はもっと働いてもらわないと、許してあげないよっ」


いつの間にかチチが、僕の手を引いてゴミの山に向かって歩いていく。

もう少し、生きてみようかと、彼女に連れられて歩く。



ゴミの山の前には、老人と見張りの男が待っていた。

その横には幾つか電化製品が並べて置いてある。


比較的綺麗なものを選んでおいたようだ。


「この辺を直してもらえたら、いくらか払おうじゃないか。」


鋭い目つきでこちらを睨む。

見張りの男はTシャツをまくると、少しだけ銃を見せた。

少女たちは怯えているようだ。


「わかりました。中身を見てみます。部品が無ければ治らないかもしれませんが・・。」


正直この星の電化製品は、自分が子供の頃に遊びで組み立てた玩具によく似ている。

基本的な物理を利用した製品が多い。


もちろん、捨てられていた工具だけでは、全てを直すわけにもいかないが、僅かな断線や汚れのつまりでの動作不良程度で捨てられているものも多い。

そんなものを直すのは、大した手間ではない。


夕方を迎えるころには、彼らが満足する修理することが出来た。

少年が昨日と同じだけ、アメリカドルを受け取ると、素早く靴に隠す。


また、3人で小屋に戻る。

雑貨屋によって買い物を済ませ、スカスカのパンと何かのジュースを飲む。

昨日と同じだ。


こんなに代り映えのない日々を、この星では繰り返しているのか・・・。

そんな風にも思うが、まぁ、もうどうでもいい。


そのうちリュートが顔を真っ赤にして、こちらにやってきた。

チチは外でトイレを済ませているようだ。


「チチのはダメだけど、俺のならいいよ。」


う~ん、有難いけれど、男型には正直興味がそそられない。

でも、気持ちを無碍にするのは忍びない。

気乗りはしないが、触ってみる。

似てはいるが、やはりモミモミするほどの量がない。


「ごめん、男性型はものたりない。」


そういって、すぐに手を引っ込める。

一瞬世界が凍ったようになる。理由はわからない。


「ぶあぐあg-ういあ」


また、ナノの翻訳機能を超えた言葉を投げかけられて、外にけりだされる。

この星の文化は難しい。



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