影の側に
まほ学 第4話
本校舎から遠く離れた教室で2人。隠れるように壁に寄りかかり座り込む。そして彼女『レナ・メグリット・スター』は顔色を悪くしたまま僕を見つめるその目は何かを訴え求めているように見えた。
「私が何でこの学校に転校してきたか分かりますか?私は君の様に立ち向かう事を諦め逃げてきたんですこの学校に。」
「え……けどレナちゃんが居たのって。」
「はい、そうです。私はレーベル…レーベルアカデミー。貴族だけが入学を許されエリートだけが生き残ることの出来るあのアカデミーから…私は……私は逃げたんです。」
「何で……逃げたの。」
「そうですね………。自業自得とも言えるんですが私はこう見えて性格が良くない方でして。それが原因でずっと…っ……ずっと1人だったんです。私はそんな孤独に耐え切れず何もかもを捨てて逃げ出したんです。だから私はアルさんの事を尊敬します。私とは原因は違いますが目を逸らさず逃げずに立ち向かっている貴方の勇姿に。」
「……僕は……そんなに尊敬される様な人間じゃないよ。たった一人じゃ何も出来ない弱い人間だよ。だけど…誰かの為になら立ち向かえる。」
「………ありがとうアルさん。少し話せて楽になりました。」
そう言って彼女は立ち上がり笑顔を見えた。けれどその笑顔は僕に何かを悟られぬ様に隠した様に見えた。
「もう、あの人達も居ないみたいですし私、エマ先生の所に行ってきますね。」
「1人で行ける?」
「はい…ありがとうございます。アルさん。」
そう言うと彼女は教室から出て行った。僕はそんな彼女を一人にしても良かったのかなと思いながらも彼女の後を追うことはしなかった。…しなかったのではない、できなかったというのが妥当なところだ。なぜと聞かれても自分でもわからなかった。ただ。追いかけられなかった。
「…………。」
時計をふと見るとゲイルさんとの修行の時間を少し過ぎていた。
「………そろそろ。ゲイルさんの所に行かないと怒られちゃうな…………。」
僕は重い腰を上げ教室から立ち去った。のそのそと歩く背後に誰かが立っていたことに僕は気づくことはなかった。
「………アル・サクシード・レジェットハート。」
「遅くなりました。」
「遅いっ!何をしていたアル!この俺様を待たせるとはどうゆう事だ!!」
「…と言いつつもさっきまで行ったり来たりウロウロしながら心配してたよねルー君。」
「うっ……それを言うのかシーナ。……まあ、ともかく!早く着替えて来い。」
「はい。」
返事をして走り出した木製の軋む床は旧校舎。老朽化が進んでいると聞いていたが見た目はそれほどではない。旧校舎の1階スペースは大きな広間になっており、2階3階が空教室になっている。今は物置としてしか使っていないけれどいろんな物が揃っている。それに生徒や職員が来ないほど学園の隅にぽつんと建ててあるからゲイルさんやシーナさんが見つかる心配はない。修行場所としてこれ以上にない最適な場所だった。
「よお、アル。」
「ブレア君!今からなの?」
「おうよ!やっとめんどくさい実技試験も終わったしな。ゲイルさんに鍛えてもらった方が実技試験よりも楽しいからな。」
「それもそうだね。」
僕達は学園の運動服に着替え広場へと急ぐとゲイルさんもいつもの格好に着替え入念に身体を解していた。あの重苦しそうな鎧とマントを脱ぎ上下揃いの運動服を着ている。
「それじゃあ2人が揃ったところで修行に移りたいと…思ってたんだがこその前に……。」
その瞬間目の前からゲイルさんが消えた。
「「えっ!?」」
「お前は誰だ?ここで何をしている?」
声がする方を見てみれば旧校舎の入り口近くにある柱にいた。そしてゲイルさんはその物陰から逃げようとする人影を猫の首をつかむ様にして持ち上げマジマジと全身を見た。
「……シーナ受け取れよ。」
「は〜いっ!」
ゲイルさんはその誰かを力強く投げ飛ばすとシーナさんは椅子から立ち上がり大きく手を広げる。
「「ええーーーっ!!」」
僕とブレア君はゲイルさんが予想以上に高く高く投げたことに声をあげて驚いてしまった。がそれに驚きもせずシーナさんはふわりと羽根を掌に乗せる様にその人を受け止める。ゲイルさんが投げ飛ばしたのは今日は転校してきたばかりのレナ・メグリット・スターさんだった。
続いて!!