表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/42

エルフの狩人娘ヨヨイ


 ちょうど街を出る際に、アーチ状の門のところで1頭の馬車とすれ違った。


「止まれ、荷台を拝見させてもらう」


 武装し槍を装備した門番の一人は、馬車の荷台にかけている白い布をめくった。



「酒と大地の実りの町ローローで仕入れたワインとラム酒、小麦粉ですよ。酒類は酒場に卸しに行きます」


「書簡を」


「ふむケッペル商会の者か。いいだろう小銀貨1枚だ」


「どうぞ。これから酒を卸してから、一杯やる予定ですよ」


「たまに商人が羨ましくなるよ。我々は勤務中に飲むワケにはいかん職だからな」


「ハハハハ。確かに酒がはいっては、危なげな賊や禁制品がうっかり通過しかねませんもんね。しっかり頼みますよ」



 なんて、やりとりが偶然にも聞こえていた。

 商人の男は随分とこんな、やりとりに手慣れていたように見えた。

 おそらく商人は、街に出入りするごとに税がとられるのだろう。


 これから商人をやろうて俺だ。

 何らかの対策が必要だな。

 待てよ、実質無限のスキル『アウト』がある、持ち込み放題じゃないか。

 何の心配もいらんな。

 疑念はすぐに氷解した。



 ところで、ヨヨイは何で離れて歩いてんだ?

 一定の距離を保ったまま、つかず離れず。



 これから向かう先は、アルフレンドを南下した先にあるという森だ。

 距離は街から約2キロほどだから、そう遠くもない。

 イレアさんの頼みで、俺も狩りの手伝いをすることになったけどさ。




 美人だが、極度の人見知りな美人のエルフ娘ヨヨイ。

 背中には細長くて丸い筒に入った矢束と、手には背格好に不釣り合いのけっこう大きめの弓。

 それと弓を引くための皮手袋。腰元に携帯してる1本のナイフ。


 格好だけは堂に入ってるというか、狩人みたいな雰囲気あるんだけど肝心の本人がね……。

 ヨヨイは俺の後ろの方から、10メートルぐらい離れて歩いてきてる。


 後ろを振り返る。

 ササッ。

 ヨヨイは木の後ろに姿を隠し、顔だけひょこりと出している。


 ……おいおいおい。

 借りてきた猫かよ、缶けり鬼ごっこやってんじゃねーんだぞ。

 ずっとこの感じで、家から森までの往復じゃさすがに俺が耐えがたい。

 向こうは私に話かけないでくださいオーラを、全身から出してるし。



 それより何よりだ!


「あのさー」


「は、はいっ。なんでしょう」


「そもそも森までの道分からないから、前の方歩いてもらえる?」


「たっ……確かにそうですね!」



 だだだだだだっ!

 猛ダッシュで俺を追い越して、前の方へ行くヨヨイ。


 うん、なんだ、その。

 さっきと全然距離変わってねぇよねコレ。

 何かきっかけでも作らんと、無言のまま一日が終わりそうな気がする。


 う~ん。

 俺はトークの達人でもないしなあ、どうしたものかこの状況は。


 とりあえず転んだフリでもして、気を引いてみるとか。

 我ながらしょうもない案しか出てこない。

 いや……ハンドスプリングでもやってみるか。

 前方宙返りの手をつくバージョン。


 昔はできたから、できるだろ多分。


 勢いつけて、とりゃああああああ!


 ドサっ!

 あっ、いてぇえええ!?


 足から綺麗に着地するはずが……失敗した、失敗した、失敗した、失敗した。

 背中から地面に派手に落下。

 か、かっこわりいぃいい……頼むから気づかないでくれ。

 これじゃ俺、ただの一人プロレスで自爆した格好悪い人じゃん!



 ……チラっ。


 やべえ、めっちゃ見てるよ……あ、意外。

 すげえ勢いでこっちに走ってきた



「だ、だ、だ、大丈夫ですか? 派手に転んだようですけど」


「……そ、そうそう! あはははっ! 転んじゃってね派手に! 何でこんなことろに石あるんだろうねー」


「い、石、見当たらないですけど……」


「あっれーおっかしいなぁ……転んで石が、どっかに飛んでいったのかなぁ」


 言い訳が非常に苦しい。

 なんとか話を誤魔化そう。


 ん? あの左右にニョロヨロと、高速でこっちへ向ってくるのは何だ?



「へ、ヘビだ! 危ない!」



 体長は1メートルぐらいありそうな、茶色い色のヘビだ。

 ヘビの動く速度は予想以上に速く、ヨヨイの背中にまで迫ってきていた。

 噛みついてきそうな気配、予想は的中した。

 身体をしならせたムチのように使い飛びかかり、無防備なヨヨイの背中に牙を向けようとしている!


 俺は確実に、ヨヨイが噛まれると思った。


 だが――ヨヨイは視線を少し後ろに向けると、ヘビの頭を空中でキャッチし地面に叩き付ける。

 そして、流れるような動作で、一瞬の迷いもなくナイフをヘビの首元に突き刺し仕留めた。


 ひぃっ!? 一瞬でヘビを仕留めた!。

 何……今の超反応!?

 どう見ても、普通の人の反応じゃなかったぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ