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消えたオリハルコンの行方

 

「……どこに置いたんだ? 例えば置き忘れとかとか、まだ探してない場所がある可能性は?」


「ちゃんと部屋に置いたのよ!」


「いつなくなったか、だいたいの時間は分かるか?」


「上に来る前はあったよ。だけど部屋に戻ったらオリハルコンが……オリハルコンがぁ……あれがないと困るだよ……ひっく……ひっく……」


 参ったな。


 だが、こういう時こそ俺が落ちついて対処していかんといけん。年上的に考えて。


「まずおちつこうか。下に降りて状況を整理しよう」


「だけど……だけど」


「ここで嘆いていても状況は変わらない。きっと船の中にあるさ、ルクスも混ぜて探そうか」



「ひっく……ひっく……わかった」



 涙目で肩を震わせるパエリアをなだめ、下に降りようとしたら船長に呼び止められた。



「お客人。あんた方のおかげで舟と船員達の安全は守られた。この舟の船長として礼を言わせてくれ」


 船長は俺達に深々と腰を下ろし長く頭を下げた。そして顔を上げてシブい声で言うのだ。



「どうしたお嬢ちゃん。魔物に怖い目にでもあったかい? そんな風には見えなかったが、涙目じゃねえか」


 俺はパエリアの方に視線を落として、事情を説明する。


「盗難だとぉ!?」


 ひぃっ!? 船長の迫力が怖いっす。

 船長のヒゲがピクピクと磁石に引かれるように、上がっていく。



「あぁ……だが可能性の話だよ。舟の中にあったものが勝手に歩いて、どっか行くことはないだろう? だからこの舟にあるのは確実だ」



「ふむ。庇うワケじゃねーがここにいる船員達が、盗みを働くとは考えられねぇ。時間的に動けたのは調理場のオババ辺りと……あとは」


「客だな。この舟の客は何人いるか教えてもらえるか?」


「それくらいは答えてもいいだろう。6人だアンタ達を含めてな」



 そういやさ……一番怪しい人間がこの舟にいるじゃねえかよ。盗賊のリシェルだ、あの女かなり怪しいぞ。少し行動を共にしたことがあるが、あいつの性格からして……恐らく徒党は組まないだろう。


 一匹狼に違いない。


「船長! ある客の部屋を知らべてもらうことは出来ないか? 心あたりがある」


「ソイツは難しいな。客のプライベートをこっちの裁量で勝手に調べるワケにはいかねえ」


「そうだな。じゃあメシの差し入れを、リシェルて金髪の女の部屋にしてくれないか?」


「そういうサービスはやってねえぞ。知ってると思うが客が食堂に来て食うシステムだからな」


「なーに。魔物騒動のお詫びとして差し入れしてくれればいい。その女だけの限定で口外はしないで欲しい。その際にちょろっと部屋を見てくれるだけでいいんだ」


「なるほど、なるほど、なるほどな。それなら請け負うとしよう。アンタ達には世話になったからな」



「だが今日はもう夜も更けたから、明日にさせてくれ。風邪をひくなよ客人」



 船長は身を翻し、片手を上げて向こう側へと行ったぞ。頼れる男の背中って感じの存在感だ。




「ぐすっ……ぐすっ……なんとかなりそぉ?」



「なるんじゃない、絶対になんとかするんだよ」



 俺達は下に降りてランプをつけルクスを揺さぶって起こした。


「なんだよ師匠ぉ……もう朝になったのかい?」


「パエリアのオリハルコンが盗まれた。心辺りはお前もあるはずだルクス」



「えぇっ!? おっ、俺じゃないからなパエリアの姉ちゃん!」


「それは知ってる。限りなくあの女盗賊が怪しいのは確かだ。これよりあぶり出し作戦を開始する」


「なんかいい案があるの?」


「俺は黒田官兵衛ほどの知将だと言われたことがある。俺に任せろ」


 パエリアとルクスが顔を見合わせて、首を少し同時に傾ぐ。


 まあ酔っ払いのホームレスに言われただけだから、説得力の欠片ないけどな。がっはっはっはっはっ!



 まぁ、なんとかしてやるさ。


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