ゴミだって売れるんです
アルフレンドの街へ出ようとしたら、地理に詳しくない俺の為に孤児院のユーリという少女が、着いて来てくれることになった。イレアさんに街を案内してあげてと、言われたそうな。
年は16才で髪は茶色。
茶色で丈の短いチュニックの上にマントを羽織り、腰を紐で結んでいる。
下はひらひらとした、身体のラインがくっきりと分かる脚衣。
街を見渡す限り、チュニックとかキトンとか、皆がこういった格好をしている。
ユーリは女らしい腰つきで出てとこが出てる。
うん悪くない。
悪くはないのだが。
「あーあ、かったるいなぁ。何で私が案内しなきゃいけないんだか」
「そう言わないでくれ。本当に知らないんだ、この辺の地理は」
勝ち気というか男勝りの口調で、少し俺の苦手なタイプだ。
年上の俺に少しは敬意を払え、と言いたいがここは堪えるとしよう。
何せ年上だからな。
「オッチャン身なりからして無さそうだけど、そもそも金あるの?」
フッ見るがよい。
俺は、なけなしの入っていた10円玉を見せる。
「見たことないな……この銅貨。随分と模様や形が精巧に出来てるようだけど使えないだろ、他国の硬貨でもないし」
うんうん、ですよねー。
ユーリは珍しそうに、俺の出した硬貨をひっくり返したりして見ている。
「しゃーないな素寒貧か。このユーリさんが奢ってやるよ」
サイダーとジャガイモをくり抜いて、中にバターを入れたジャガバターを奢って貰った。
合計金額はトル小銀貨1枚でお釣りが、ミル銅貨9枚とのことだ。
街の広場で、木製の丸太のようなイスに腰かけてジャガバターを食べる。
奢りなら俺は、不味いラーメンと病気以外は全ていただく主義だ。
いただきます!
はふっはふっ、熱々のジャガイモにバターが絡んでイケるぞ!
それから温まった体へ、サイダーをごっくん!
ぷはー久々の炭酸が体に染みるうぅ!
サイダーの味は現代とあんま変わらんな。冷えてないのがネックたが。
そっか……この世界では、氷とか冷凍する技術がないんだ。
氷が召喚できたら、肉や魚を保存する手段として、売れそうだな。
こうして見渡すと街には、色んな店屋がある。
床屋に服屋、果物屋、いかつい量の肉を天井から吊るした肉屋などなど。
個人で出してる露天も並んで、買い物客などで、市場通りは賑わっている。
よしっ! スキルのお試しと行きますか!
食料品は今日は召喚出来ないから、本当のゴミ、ペットボトルとか召喚してみよう。
「ダスト!」
ポンっという軽快な音と煙。
ゴトゴトッゴト! と2リットルのペットボトル容器が5個落ちてきた。中身は空である。
「うわっ!? な、なんだぁ!」
ユーリが突然の出来事と、見慣れない物を見て驚いているようだ。
ふむ、潰れもなく形もいい。
上手くいったようだな。
スキルレベルゼロの物なら、イメージした物を召喚できるみたいだ。
次は空きビンとか召喚してみよう。
「ダスト!」
やや頭上からビンが落ちてきて、地面でガッシャン! ガッシャン!
「うわぁあ! こ、今度は何!?」
いきなり降ってきては、砕け散るビンに驚いてイスから飛び跳ねるユーリ。
そして、俺も驚いている。
せっかく召喚したのに割れるのかよ!
シビアだなこのスキル!
次はラグとプチプチを召喚し、その上にビンを召喚した。
気がつくとヒラリヒラリと俺の頭上から舞い降りる1枚の紙。
これはゴミの神からの手紙かな、どれどれ。
スキルレベルゼロの物は、ナンボでも召喚できるから。
あと、いちいち紙送るの面倒だから精霊派遣するからな。
それまで大人しくしとけこのフロンジ(浮浪児)が!
byゴミの神より。
と書いてある。
なんか毒舌だな……それに随分と面倒くさがりな神だな。
何がフロンジだ、クソが!
精霊ねえ……どんなヤツが来るんだろう。
ゴミの神同様に傲慢な精霊だったらイヤだな。
そして、俺が召喚した物だが。
・100円ライター(使用済み残り半分ぐらいの)10個。
・少し汚れのあるグラスやビン。
・それとペットボトル20個。
・後はダンボールとラグとプチプチ。
・100均で売ってるような、食器立ての台座。
これらを使って簡易ながら店屋を演出。
よし準備は整った。
これを売って金にしよう。
珍しい物だと思うし、この世界だと水筒は皮袋が主流のようだ。
ペットボトルが水筒代わりに売れると思んだよな。
自信はないがホームレスの時に、拾った使い捨てライターを20円で同業者に売った経験があるし、この中から一つぐらいは売れるだろう。
「オッチャン……アンタ不思議な力を使うけど、魔術士なのか? 噂ではや廃村や山奥に、ひっそり住まう魔術士がいるとか聞いたことがあるけど」
「そんなんじゃないよ」
「よし売るぞ!」
心模様は、自信半分と不安が半分。
迷わず進め、行けば分かるさ!
気合いを入れ、自分を鼓舞する。
その場に大きいダンボールを敷いてから、上からラグを乗せる。
そして食器用台座にビンや、ペットボトルを、所狭しと乗せていく。
最初は物珍しさもらあってか、道行ゆく人が足を止めるが誰も買ってはくれない。
うーん……そうだ。道具の説明と、これを持っていればどういう効果があって、お得なのかを説明してやればいい。
要はプレゼンだ。
納得させれば、誰かが買ってくれるはずだ。
「お、おい。一体何する気なんだ?」
「ユーリ悪いけど、これに水を入れてきてくれ。それに泥水も。あと適当な木を拾ってきてくれないか、それからもう一つ頼みがあるんだ」
「な、なんだよ急にさ」
「頼むよ」
「分かった仕方ないな。行ってやるよ」
ユーリに頼んだ物と秘策を用意してもらい、実演販売開始。
「さあさあ、道行くそこの旅人さん。ちょっと足を止めて下さい。これはライターと言いまして、ボタンをポチっと押すだけでは、アラ不思議。ご覧のように簡単に火を起こせます」
俺はユーリが適当に拾ってきた木に、火をつけてみせる。旅人はそれを見て目を丸くし、興味を持ったようで近寄って来た。
「今、何をしたんだ? 火打ち石を使ったようでもないし」
「どうぞ」
ライターのボタンを押す仕草をし、旅人へ手渡す。
「うわっ! ボタン一つで火が出たよ。信じられないよ、どういう仕組みで出来てるんだ?」
ニヤリ。
よしっもう一押しだ。
「持ち運びも便利で楽でしょう」
「そうだね。いくらなんだいコレは?」
そういや、値段決めてなかったな。
うーんミル小銀貨1枚でいいか。
ボリすぎかな、まっいいかとりあえず、この値段で売ろう。
「ミル小銀貨1枚です」
「よし買った! 火打ち石もだいぶボロになったし、助かるよ」
旅人は満足した笑みを見せ、ミル小銀貨が俺の手の平に手渡しされた。
う……売れたぞマジで。
ちょっとした感動がある。
現代だと、量も少ないし明らかにガラクタの一種なんだが
初めて売った品物で得た銀貨。
この1枚の重みを忘れないように。
そして、この感動を胸に焼き付けておこう。
そして、孤児院からピットとイレアさんが来てくれた。
ユーリに言って連れて来てもらった。
よっしゃガンガン売るぞ!
秘策開始だ!