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宣戦布告

 

 ティンセル(絹とリネンの交織り)を着崩し、変形トガのように着ている金髪ポニーテールのこの男。恐らくドフォール商会の者だろう、アルフレンドの街であったガタイのいいハゲと一緒にいるからな。


 この金髪ポニ男が重役とかなのかなぁ。ハゲの方はお供のボディーガードって感じがする。立ち振る舞いとか見てれば、金髪ポニ男の方が偉そうに振舞ってる気するからな。



「質問だが、君はお金という存在をどのように捉えている?」


 ポニ男は垂れる前髪をわっしゃわっしゃ手で分け人差し指を額に添え、もう片方の手を肘に添えている。

 なんでジョジョ立ち? それ今する意味あるの?


 その額にくっつけてる、人指し指がよ!

 なんか見てると腹ただしい!

 


 で……金の存在?

 商品やサービスとの引き換え券だろ。

 この世界だと交換通貨だから券とは言わないか。

 今のとこ銀行らしき制度は見当たらないが、金貨や銀貨が主流である以上、この世界は金本位制度だろう。



「金は一定の基準を持っていて、価値との引き換え物だ。使ってこそ意味がある。金を多く持って破滅したりする人間もいるが金そのものに善悪はない。と俺は思うがな」



「ふむ……気になった商人にはお金という本質について質問をすることにしているが、なかなか実相を捉えているようだな」


「悪いことは言わん。君の商品は使い道がありそうだ。ドフォール商会の参加に入れ、今より楽に金が稼げるぞ」



 やっぱりこいつら、ドフォール商会の人間だったか。


 見かけによらず単刀直入だな……。金髪ポニ男は、はい。としか言わせないような鋭い目付きしてこっちを見てるぞ。



 だがな……組織に所属するなどお断りなんだよ。何と言っても、めんどくさいからな。金はそりゃあった方がいいが自由がなくなるくらいなら、ボチボチやってた方がマシだぜ。


 まあ条件くらい聞いておくか。


「入ったら給金はどうなるんだ?」


「月の給料は9キーク(ミル銀貨90枚ほど)だ。その他に歩合報酬を月の売り上げに応じて支払うようにしている。どうだ? 他の商会よりいい条件だとはおも……」



「お断りだ! 何でアンタらみたいな横暴な連中の下で働かないといけないんだ? どうせ、イカのスミよりブラックな商会なんだろ」



「なっ!? 」



 口開けてそんなに驚くことないだろ。

 金髪ポニ男よ、そんなに意外かね?

 9キークだからミル銀貨が月に90枚最低でも払われるってことだよな。ん~この世界の価値基準をそんなに理解できてない俺だが、条件はけっこういい気がする。



「だいたいアルフレンドで俺を傭兵に襲わせた連中はアンタらなんだろ。調べはついてんだよ、とっくにな」



 まあ証拠は無いし、知らん!

 カマ掛け、カマ掛け。



 金髪ポニ男は表情を少し歪めただけだが、横にいるハゲは顔を紅潮させ、汗をダラダラとかきはじめた。分かりやすいなコイツ。



「なっ……何の証拠があると言うのだ!?」



「あの傭兵がお前達に頼まれたと証言していたぞ。能力を使ったら簡単に口を割ったよ」(大嘘)




「そんな報告は聞いてないぞ、使えん奴らめ」



「そりゃそうだ。一から百まで作り話だからな、だが張本人は簡単に見つかったようだな、なあ?」


 金髪ポニ男は事態を理解してないようで、ガタイのいいハゲに説明を求めるかのように視線を向けた。


「し、知らんぞ! ? 俺は知らぬ!」


「何やら部下が手際をしたようだ」



 そう言って金髪ポニ男は地面にチャリンと金貨を1枚投げ出した。チャリンチャリンと音を立て金貨が俺の前に輝やかしい存在を主張する。拾えとでも言わんばかりに。



「詫び料だ。受けとっておきたまえ」




 このやろぉ!

 カチンと来るぜ、人に謝罪する態度じゃねーだろ!

 人を何だと思っているのか!!?



 でもな、金貨ですよ金貨!

 初めて目にしたぜ!まあ……ありがたく貰っとこ!プライド? そんな執着はボロ布を捨てるように流すぞ俺は!


 少し悔しいからすげえ不満そうな顔して、金貨ひーろおっと。よっしゃ儲け儲け!



「では失礼するよ。そうそう、私が君を引き入れようとしたのは、珍しい商品に興味があったからだ。君の人柄や能力に対してではない。行くぞドブッシー」


「はいっ若」




「おい商人。わざわざこんな遠くまで来て路上販売とはご苦労なことだ」



 わざわざ俺の傍へ来てハゲの男はこんなことを言う。

 なんだよ、そんなに俺に相手してほしいのか面倒くせえな。


「えーと、どちらさまで?」


「きっ貴様!? バカにしているのか!」


「はて? いったい何のことやら、商売の最中なんで邪魔しないでもらえますかね」


「ぐっ……ぐぬぬっ。フンまあいい大人しくドフォールの傘下に入れば良いものを。それに貴様は重大なことに気づいていない。貴様の商品のいくつかは文化を破壊しているのだぞ」



「はあ? 何がだ???」



 文化破壊の意味分からん。

 アレか? 最後にレスバトルで勝ったと思わないと不機嫌になるタイプかコイツ。めんどうだなー。



「フン。知らんのも無理はないか、アルフレンド住民や旅と風の神シルフィ、土と豊穣の神タイタンの教徒達から非難の声が上がっているのを」



「回りくどいな、もっとハッキリ言ったらどうだ」



「貴様の売った透明な瓶が土にも還らず燃やすと異臭がし気分が悪くなった者がいる。それをシルフィやタイタンの教徒達が問題視しているのだよ」




 マジかよ……。

 ペットボトルのことだよな。

 確かに土には還らないし燃やすと異臭はするが、そこまで気が回らなかった。良かれと思ってやったことが文化破壊とまで言われるとは……。





「フン。だから我々の傘下に入れば良かったのだ。金でどうにでも出来るというのに。だがお前はもう我々ドフォール商会を敵にしたのだ。仕組みで稼ぐ我々に一個人で敵うはずもないというのにな」



 しっしっしっ。

 今考えごとしてるんだ。

 さっさとあっち行け。



 俺は手振りでハゲを追いやる。






「おいドブッシー」

「すいません若! すぐ行きます!」



「おい。アイツは誰だ?」


「若はウチの副会長だ。本来なら貴様ごときが口も聞けんお方だ」



「ふーん。あっそ、もう行っていいよ」しっしっしっ!


「貴ィっ様ァ! 舐めた態度を取りおって! 覚えておくがいい!」





 ふぅ……うるさいのは去ったぞ。

 俺はその場で座禅を組むかのように腕組みして座り込む。そして考える。


 この世界で売る商品はエコじゃないとダメってことだな。瓶は問題視されてないようだし、木の皿や陶器の瓶や皿も問題ないだろう。石油商品のプラスチック類はダメってことだな、でもライターは何も言われてないし関連性が見えてこないな……。


 俺に精神的苦痛を与える為のハゲの嘘とか?

 う~ん嘘を言ってるようには思えなかったな。

 何で同じく土に還らないライターはOKでペットボトルはダメなんだ。




「ねえ」



 ともかく販売の戦略を変えないと金を稼げない事態になっちまうな。ともかく消費できて土に還るものなら大丈夫てことだろ。



「ねえったら」



「ん? ああパエリアか」



「こんな道傍に座って何してんのー?」



「見てのとおり俺は思考に耽っている」



「もう一人の子は?」


「商品売りに行かせてるが、どうかしたか?」


「アナグラ王国に戻れるようになったの教えてあげようと思って」


 はて戻れる?

 何かやらかしたっけか?



 俺が首を傾いでいると、少しムッとした表情でパエリアはビッと指を差してきた。


「もう~あっきれた。ついこないだのことなのにさ、あのままじゃ戻れないからドワーフのコネクションを使って、アナグラ王国街道治安部隊から調査と聞き取りをして不問にしてもらったんだよ~」



「へえ。ドワーフの族長となるとコネが色々あるんだな」


「とは言っても、あっちに問題あったしパパに頼んで仲介してもらっただけなんだけどね~」


「よし。じゃあルクスを探しに行くか」



 ルクスを探す為にパエリアと街をぶらつく。


 30分くらいかけてようやく路地の片隅でルクスを見つけたのだが、壁を背にする形で10代半ばの男数人に囲まれる事態になっているようだった。


 男達は木の丸カゴなどをその場に置いていたので、呼売商人であることは察しがついた。


「お前な! 急に来た新参者クセに俺達の場所に入ってくるんじゃねえよ!」



 そう言って男の一人がルクスの肩を突き飛ばす。

 回りの奴等はルクスよりどう見ても年上で体格がいいので、身体の小さいルクスは後ろにヨタヨタと身体をもつれさせる。


 それを見たおせっかい気質のありそうなパエリアは。


「コラ~! よってたかってみっともないわね!」


 

 やっぱり声を荒げたのだった。










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