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――大丈夫かな……
――……
――何とか言ってよ!
――……
――ねえ!
――黙っててって言ったじゃん。
――そこら辺は空気読んでよ。
――空気は読むものじゃなくて吸うものですー。
――腹立つ!
KYはやはりKYだったと確信を持ったところで、ようやく返信が来た。
『とりあえず、病院に行ったほうがいいよ』
『外に出られない』
『だよね』
また沈黙。
『じゃあ、私が先生に言ってあげる』
『きっと信じてくれないよ』
『写真を見せれば大丈夫だよ』
『写真を見せるの?』
――ど、どうしよう? 見せるって。
――今更何を言ってるのよ。
――そうだけど……
――まあ、ここまで来たら行くところまで行くしかないっしょ。
――うん。
KYの言う通り、ここで断ったら話が進まない。家から一歩も出ないで誰とも話をしなければ、元に戻ることはおろか、餓死してしまうだけだ。写真を見せた以上、もう進むしかない。私は覚悟を決めた。
『うん。お願い。先生に見せていいよ』
『分かった。あ、もう授業始まるから、休み時間に見せてくるよ』
その言葉で吉子とのチャットは終わった。
――あああーー。言っちゃったーーー。
――うるさい。
――大丈夫かな。大丈夫かな。
――もうこうなったらなるようにしかならないよ。
――はぁぁぁ。どうしてこんなことになっちゃったんだろ……
本当に、どうしてこんなことになっちゃったんだろう。昨日、何か悪いものでも食べたっけ?
私は昨日のことを思い返した。日曜日で学校は休みだったけれども、私は朝早くに起きた。胸がどきどきして寝られなかったのだ。なぜならその日は憧れだった現寺くんとの初デートの日だったから。
駅で待ち合わせをしてバスに乗り、郊外の公園でピクニックをして手作りのお弁当を一緒に食べた。湖畔でボートを楽しんで、見晴らしのいい高台のベンチに座ってたくさんおしゃべりをした。そして、最後にはファーストキッス。最初から最後まで現寺くんは私をリードしてくれた。
私は幸せの絶頂だった。
――もしかしたら昨日幸せすぎたからこんなことになったのかな。
――んなわけない。
――じゃあ、どうしてこんなことにっ?
本当に泣きたい気分だけれどもこの触手の頭についている目には涙を流す機能はついていないようで泣くことすらできなかった。
ダメだ、こんな気弱になってたら。
「大丈夫。きっと何とかなる。今は吉子を信じよう。吉子ならきっとうまくやってくれるはず……」
私は自分を励ますように何度もそう口の中で繰り返した。
それから2時間くらいして、携帯のベルが突然鳴り響いた。
「はい。宇治です。……、あ、先生。……、はい。ありがとうございます」
電話の主は担任の先生だった。吉子から話を聞いてすぐに電話をくれたらしい。学校としてこれからのことを話し合いたいから、迎えをやるので学校に来てほしいということだった。
私はこれでようやく安心できるんだと何度も先生にお礼を言った。それから、チャットで吉子にもお礼を言っておいた。部活なのか返事は帰ってこなかったけれど。