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斎藤次目は恋をしたら死ぬ  作者: あつ
一章
1/22

序 恋寄心は私をも殺す


「駄目だよ、間違ったら。」


 目の前の着物姿の女性にそう告げられる。



 私、斎藤次目さいとうつぎめは綿菓子でできた玉のごとくやわらく愛らしく生まれ、両親の愛を一身に受けてすくすく育ち、生まれた頃の愛らしさはかろうじて残しつつも一二の年頃相応の男子として健やかな成長をしてまいりました。


 そんな私が何か間違いを犯したのでせうか。

 大変申し訳ありません。

 しかしながら何を間違えたのか、とんと自覚がありません。

 何分若いもので、どうかご教授くださいませ。



「惚れたでしょ、クラスの杏樹里奈あんじゅりなちゃんに」


 はあ、確かに懸想いたしました。

 キラキラしすぎたお名前に当初戸惑いましたが、歳に似合わぬセクシーさに始まったばかりの思春期を抑えきれず恋い焦がれました。


「アウトォー!!!」


 着衣に似合わぬ横文字を叫び私を弾劾するお姉さん。

 何故ですか。

 セクシーが駄目ですか。


「君の相手は決まっているんだよ」


 え、ほんと!運命の赤い糸!

 そういうことなら、致し方ないと思います。

 お相手はどちらのどなたでしょう?


「それは言ったらつまらないでしょ。ワクワクしなさいよ」


 そうですね。

 しかしながら、今回運命から外れる想いをしてしまいましたが、その場合は如何様になりますか?



「死!あるのみ!」



 は?


「運命の人と恋をなさい。さもなくば死すべし。例外はない!」



 それはあんまりではないですか?

 私もうら若い男子ですから、寄り道の一つや二つ、思春期ですもの致したいです!


「お黙り!そんな不健全はなし!一途に生きよ!」


 そんな無体な!横暴です!

 ええいあなたは何様!?


「私、ゴッド。いわゆる神。オッケー?」


 ふざけるな正しい日本語をお使いなさい神の癖に!



「ちなみにここ、三途の川ね」



 あたりを見渡すと、そこは白い霧に包まれた川沿いの施設であり、死に装束姿のお年寄りが桟橋に向けて列を為しておりました。


 川辺では私よりも小さな子どもたちがお兄さんたちと仲良く遊んでいるかと思えば、なんということでしょう。

 石を泣きながら積んでるしお兄さんではなく鬼いさんでありました。

 なんということでしょう!?



「今回は知らなかったんだし、ノーカンにしたげる」



 優しく私の肩に触れるゴッド。神。

 いいや、もはや死神め。



「よい恋しなよ!!」



 私は、突き飛ばされ凄まじい浮遊感のなかで、嗚呼、帰るのだなあと思いながら、これまでの十二年の生の中でも感じたことの無い程の明確な怒りを覚えておりました。


 運命の赤い糸に首が締められ、間違ったら糸がギロチンに早変わり。

 神様お墨付きの逃れられぬ死!


 なんという仕打ちでしょうか。


 あんまりだ。


 これから甘酸っぱい青春、時に嬉し恥ずかし、時に辛し悲し、時にパトスエロスなはずの私の一生が、過ち一つで即死であります。


 本当に、あんまりだ。



 しかしながら、生きることにはかえられない。

 受け入れるしかないのでしょう。

 これから、辛く険しい人生を積み重ねる未来の自身を思いながらこう願うのです。



 我、恋患うこと無かれ!



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