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亜空間商店  作者: たこね
第一章
7/18

第三話:お金の話

 テーブルに角砂糖の入れ物とミルクポットを置き、紅茶の入ったマグカップを配る。


 流石に先刻のような派手な反応はないものの、角砂糖は珍しかったらしく直接食べたりしている。


 ようやくお茶を飲む余裕が出来た。

 ティーバッグではない紅茶だったおかげか、大雑把な淹れ方をしたにも関わらずかなり香りが良い。


「色も香りも素晴らしい、この茶葉も商品の一つですか?」

 アキーノスさんかなり気に入ったようである。


 タブレットを操作して同じものがあるか調べたが、どうやらリスト外のようである。

「残念ながら開店祝いとして貰ったもので、そこにあるだけだねぇ、おかわりする分にはだま余裕はあるから遠慮なくどうぞ」

 キッチンを指して説明をするが、まあ商談が進んだあとに個人的に譲ってもいいだろう。


 そうだ、確認しておくことが一つあった。


「商売の話をする前に、そちらの通貨を一種類づつでいいので見せてもらえないだろうか?」


 買い取りメニューによると買取品を倉庫か工作室のボックスに入れるとCrで買い取り価格が出るようなので、そこに通貨を入れればレートが分かるはず。


 ソントくんがアキーノスと話し合い、納得がいった表情になったソントくんがミアーナに声をかける。

 それを受けてミアーナが革袋を手に取り、そこから一枚づつコインを出しながら説明してくれる。


「まずこれが銅貨、十枚で銀貨一枚分になるわ」

 十円玉よりひと回り小さく、倍くらいの厚さがある。


「こっちが銀貨、十枚で大銀貨、百枚で金貨一枚」

 銅貨より一回り大きく、八角形っぽくなっている。


「そして大銀貨、十枚でこの金貨になるわ」

 五百円玉サイズの銀貨と金貨が並べられる。


「あと金貨百枚で大金貨というのがあるけど、流石に持ってないないわ」


「なるほど、どれでもいいのだけど、一枚貸してもらえないだろうか?調べたらすぐに返すことを約束する」

 思った以上にすんなりと銀貨を渡してくれたので席を立つ。


「あ、なんだったら付いて来る?工作室に物の価値を割り出してくれる装置があって、それを使って調べてくるだけなんで」

 全員付いて来た。


 工作室に入ると倉庫にあったものと同じロッカーがあるので銀貨を入れ、扉を閉める。

 倉庫でやっても良かったのだが、空の倉庫を見せると店のシステムの詳細まで説明しないと不安に思うだろうし、いちいち説明していくのも面倒だと思っていたのだが、工作室にも同じものがあったおかげで説明の手間を省略できた。


 タブレットの買取画面をチェックすると”1Cr”と表示され、同時に”通貨が登録されました”というメッセージが出る。

 どうやらお釣りや買取の支払い用に銀貨を出せるようになったらしい。


 銀貨を取り出し、ミアーナに返却。

「ありがとうございました、とりあえず説明をしたいんですが、ここじゃ狭いんで食堂に戻りません?」

 八畳程度の部屋に七人が入っていたのだ、これでは落ち着いて話す気にならない。


 食堂に戻り、先ほどの席に全員座ったところで説明を再開する。


「さっき銀貨を借りて調べたのは、この店ではクレジットという単位で商売をしていてお金の単位が違う。それで銀貨が何クレジットに相当するかってのを調べた結果、銀貨一枚と一クレジットが同じ価値を持っていた。おかげで計算が非常に楽になった」


「え?どういうこと?」

 マトルが説明を求めてくる、君は頭脳職じゃないのかね。


「例えばさっき食べた枝豆はうちで売る場合三クレジット、銀貨三枚だけど、例えば金貨一枚が百二十クレジットだった場合、三クレジットの枝豆を買うのにいくら掛かるかって事」


「ああ!ごめんなさい意味がわかったわ、それだと銀貨二枚に銅貨五枚だわ、今回は釣り合ってるからスパンドやボーマーでも悩まなくて済むけど、もっと細かい桁でずれると二人じゃ計算出来ないもの」

 全く間を置かずに通貨換算の結果を導き出し、例に出した以上のケースすら想定するのは流石の頭脳職であり、こちらの説明が足りなかったってことの証明でもあった。


「俺を馬鹿の代名詞みたいな言い方をするんじゃない」

「その言い方はひどくないかマトルちゃん、まあわかりやすい例えだけども」


「まあ毎日のように取引する間柄であれば別の機会に埋め合わせたりできるんだけどもね、街まで遠いんだよね?」

 この店がある場所はどう考えても客がひっきりなしに来るような立地にはなさそうである。


「予定では目的地まで二日、遅れても三日あれば着くはずだったのですが、僕が現在地を見失ってしまったせいでここまでに五日かかってしまっているんです、このままだと依頼を諦めて帰るにしても食料がギリギリでして」

 悔しげな表情を浮かべながらアキーノスが答えてくれた。


「霧が出た上に狼の群れに付きまとわれたのが原因ですよ、アキーノスさんのおかげで全員無事なんですから」

 ソントくんのフォローに全員が同意する。


「そういえば表の草原だとか店の上の崖だか大岩って、目印になっていたりしないのか?」

 アキーノスの表情が変わり、地図を取り出ししばし見つめた後、表に飛び出して行き、すぐに晴れやかな顔で戻ってきた。


「地図にありました、目的地は後一時間も歩けば到着できます」


「食料は買うことにしたんだから、予定を組み直して今日はここで休みゃいいさ、現場には明日向かえばいいんじゃね?」

 先程の脳筋認定が悔しかったのか、ボーマーがクレバーな意見を提示する。


「捜索隊が出るまでに戻れば問題ないな」


「スパンド、リングに予定変更の連絡入れる機能があるんだから、新しい予定を立てたらソントが連絡すればいいだけよ」

 マトルの容赦のないツッコミがスパンドを襲う。


「ねえマシューさん、このお店って宿屋もやってるのかしら?」

 ミアーナの質問で宿泊室の存在を思い出した。


 マトルが言っていたリングとやらの話も気になるが、まずはミアーナの質問への解答だ。


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