第二話:おもてなし
「店の中はまだ空っぽなんで、奥に食堂があるからそこで続きをしよう」
一行を食堂まで案内する。
「あれなんか珍しくない?」
俺の持つカゴを指して魔法使いっぽい格好のマトルが小声で回復職っぽい格好のミアーナに話しかける。
「おーホントに何もないな」
店舗内を見たボーマーが言う。
「むう、この広さで柱がないのか、床もこんなのは見たことがないぞ」
様式や建材に興味を持ったのか、スパンドが呟く。
各々思ったことをちょこちょこ口に出しながらも概ねおとなしく付いて来てくれた。
アイランドキッチンと平行に向き合うように置かれた楕円形のテーブルに座ってゆく。
最終的にJの字を描くように反時計回りにミアーナ、マトル、ソント、アキーノス、スパンド、ボーマーという並びで落ち着いたようである。
彼らの場所取りを眺めながらお茶の用意ができるか確認する。
大人数でも対応できそうなお茶用のポットとマグカップ、緑茶、紅茶、コーヒーを見つけることができたが、一応彼らに希望はあるか聞いてみることにする。
「お茶を用意するけど、こういうのが嫌いだ、好きだってのはあるかな?」
「やたら渋いのは苦手ですが、概ねお茶ならなんでも大丈夫ですね」
アキーノスが答え、他のメンバーも頷いている。
「酒はないのか」
スパンドが酒を要求してくる。さすがドワーフ、ぶれない。
「ビールならすぐ出せるかな」
冷蔵庫に十本位入っていたはずだ。
「ビール?」
「エール酒みたいなもんかな」
「それだ」
すると全員がビールを希望。
一応酒を飲んでいい年齢が決まっているか確認すると、種族ごとに成長速度や寿命が異なるので明確に決められてはおらず、自分で得た収入の範囲内であれば問題ないらしい。
参考としてソントくんとマトルの歳を聞いてみたところ共に二十歳だったので余計な心配だった。
缶のまま出すのも趣がないななどと思いつつ、棚をチェックすると素焼きのタンブラーを発見。
つまむ物は、冷凍庫に枝豆とレンジ用チキンナゲットがあったので、鍋にお湯を張り、枝豆を放り込んで解凍、ナゲットはレンジに入れて加熱する。
タンブラーを並べ、六人分のビールを注ぐ。
枝豆をチェックすると解凍も終わっていい具合になっていたのでざるに開け、二枚の皿に取り分けてビールと一緒に持っていく。
「この豆はなんて豆なの?あんな短時間で火が通るとは思えないのだけど、後これ食べていい?」
マトルが先ほどちょっとだけつまんだスナックの袋を振り、同時に枝豆について質問してくる。
「食べていいよ、こいつは枝豆と言って、故郷では一般的に食べられている豆だね、塩ゆでが済んだものを凍らせておいて、それを温めて戻しただけだから短時間で済んだのさ、食べ方はさやを潰す感じにすると中から豆が出てくるからそれを食べ」
言い切る前に威勢のいいドラ声が被さってきた。
「このビールってのはうまいな!、もう一杯くれ!」
早いよドワーフ。
「とりあえず食べ方はわかったよね?、食べてみて」
冷蔵庫に残っていた缶ビール四本を取り出すと、電子レンジに入れていたナゲットも調理が済んだようなので、一緒に持って行く。
「冷えてるビールはこれだけだよ、あとこっちはチキンナゲット、鳥肉の揚げ物だ」
スパンドのタンブラーを回収して缶のプルタブを開け、注ごうとするとスパンドがまだ開けていない缶を取り、自分でタブを開けてそのまま飲み始める。
「むう、さっきとは味わいが違うがこれも悪く無い、この容器も面白い造りだな」
「タンブラーに注ぐと細かい泡が出て口当たりが柔らかくなるんだったかな、好みによるけど」
などと説明している間に缶も飲み干し、まだ注がれていなかったビールを要求してくる。
このまま飲ませていいものかと、他のメンバーの様子を見ると、皆チキンナゲットに夢中になっていたのだが、枝豆を確保して味わっていたアキーノスがこちらに気づき、軽い苦笑交じりにフォローしてくれた。
「彼は酒に目がありませんので、それは飲ませてやってください」
「俺ももう一杯ほしいな」
ボーマーもおかわりを要求。
「となるとあと一杯分ですか、ソントとマトルは食べる方に夢中ですね、ミアーナ、最後の奴は僕がもらっていいかな?」
ちょうどナゲットを頬張ったところだったので、ミアーナは手で口元を抑えながら首を縦に振る。
男性陣に残ったビールを注ぎ、空き缶とあっという間に食べ尽くされていたスナックの袋と枝豆のさやを回収するが、さやの数が妙に少ない。
「さやの部分もいい塩加減でなかなかいけるねぇ」
豆を食い尽くしたボーマーがさやだけを食べている。
「そうね、塩だけでこんなに美味しくなるなんて」
マトルも食っていた。
確かにたまにさやごと食う人もいるなぁなどと思っていると、回収しようとしていたさやのカゴを置くように要求される。
仕方ないのでカゴを元の位置に戻し、代わりにあっという間に食べ尽くされたナゲットの皿を回収。
空き缶をゴミ箱に放り込む前に、午前中に捨てたビニールがどうなっているかを確認する。
やはり消えていたので気兼ねなく空き缶と袋を放り込む。
そしてお茶の用意だ、こいつらガバガバ飲みそうなので大量に用意しよう……ねえ、俺商店の店主になったんだよね?なんかやってることが飲食店じみてるんだけど今のところ。
いや、これはこれから販売する商品のプロモーションだ、試食販売だと考えればいい、商品リスト更新されてるって出てたけど、今食わせたものってリストに残ってるのかな、確認しておこう。
大型のポットに紅茶の茶葉とお湯を入れ、抽出の間にタブレットを操作し商品リストをチェックする。
よし、銃器関係が消えているだけで食料品などはほとんど変わっていない。
とりあえず目についた商品を脳内リストに登録しておく。
さて、待たせるのも何だし、お茶もいい頃合いだろうから持って行くか。




