第二話
序章の間は他の登場人物は現れません。
自分が迷い込んだこの場所はどこなのか、ということについて一つの見解にたどり着いた、とも解釈できるこのタイミングでタブレットが反応を見せた。
そこに何らかの意思が働いていると判断し、タブレットを手に取りホーム画面を確認すると画面上端の通知エリアにメッセージが届いている。迷わずその通知をタップする
”亜空間商店メニューが更新されました”
さらにその文章をタップすると画面が切り替わりアイコンの並んだメニュー画面が表示される。
次にポップアップウィンドウが立ち上がり”ユーザー認証中”の文字が数度点滅した後、別のポップアップに切り替わる。
”認証ユーザー:マシュー・サクライ ステータス:アドミニストレータ”
俺の名前だ。
漢字で書くと桜井摩周なので正確にはマシュウなのだが、まあ発音としてはみなマシューと呼んでいたのでなじみのある表記ではある。
俺の名前をなぜこいつは認識しているのだ?アドミニストレータって事はこの亜空間商店と名乗る施設の管理者として登録されている、という事か?
「おい、どうなってんだよ!誰かこの状況を説明しろ!」
語気を強め、タブレットに向かって詰問するが、反応はない。
中途半端に誰かの手の上で踊らされている感覚に苛立ちを覚えるものの、現状を把握するためにはこのタブレットを弄り回してみるしかないようである。
自分の名前が表示されているポップアップを見直すと、名前とアドミニストレータの文字に下線が引かれており、何らかのリンクされた情報があることを示していることに気付く。
名前をタップするとユーザー情報画面が開き、自分のプロフィールが展開される。
そこで目を引いたのは所持金欄。貯金を含めた全財産と、今所持している現金がおそらく正確に表示されている。
そして月々の収支まで表示され、そこには一万円ちょっとのマイナスが表示されている。
そしてその下に同じように数字が並んでいるのだが、所持金欄には十万Cr、月の収支にプラス千五百Crとなっている。
SFなんかではこの通貨単位はクレジットと呼ばれているものだが、これが亜空間商店での通貨を示すのだろうか。
一旦そのことを棚上げし、アドミニストレータのリンクを辿ると店内設備への限定的アクセス権、および施設の拡張、改修権限、ゲストユーザーの管理が行えることが分かった。
ぼんやりとではあるが、自分の置かれた状況は見えてきたため、ポップアップを閉じ、メニュー画面を見ていくことにする。
アイコンを確認すると商品、支給品、買取、設備、システムと並んでいて、買取以外の三つに更新されたことを示す”NEW”という文字が躍っていた。
まずはなぜか剣と盾のアイコンが描かれている商品をタップ。
するとカテゴリー別リストが展開され、過去/未来と書かれたスライダー、その下に”武器(遠距離/近距離)、防具(全身/部位別:頭~足)、その他(食料/雑貨/医薬品…以下省略)”と分類がされていた。
筆頭が武器防具である、その他に分類されているものが多いために商店と名乗っているが本業は武器屋ですという主張。
遠距離武器をタップすると様々な銃器が表示されるが、一部はグレーアウトされている。
M4はグレーだから選べなくて、選べるのはAR-15にSCAR-16Sと17S、民間モデルだったよな、ってFA-MASがある、ってG2Felinってやつだよな、ガチ軍用な上に配備数はかなり少ないモデルのはずで輸出や一般販売などがされているとは到底思えない……どういう選択基準?
いや、そもそもこれ全部本物?初手から銃器?さっき外はのどかな自然が広がってたけど実は世紀末ワールド?
よぎる不安を抑え、チェックを続けると防具のほうもヘルメット、ボディアーマー、迷彩服などが並んでいる。
値段はネットで見たアメリカでの販売価格に近いように思えるので、Crという単位はドルに類似した価値があるようだ。
次にメニューの上部にあるスライダーに目が行く。左が過去、右が未来でスライダーは中央に位置している。
スライダーを右に動かそうとすると”ロックされています”という警告が表示された。
今度は左方向にスライドすると、銃が消え、弓が先頭になる。
遠距離から近距離にカテゴリを移すと両手剣、刀、片手剣、斧、槍…と安心できる内容に変化する、刀って独立カテゴリなのか。
防具もRPGでなじみのあるプレート、チェイン、レザーなどが表示される。
ざっと眺めてはみたが、同じ剣でも材質や品質の違いから価格がずいぶん違うようである。
防具についてはもっとも懸案となりそうなサイズについては、管理画面でゲストユーザー登録をするとその登録者のサイズに合わせたものが用意され、さらに好みに合わせたカスタマイズまで行った後、購入できるようである。
しかも買った後気になる点があれば返品も再調整も可能という至れり尽くせりなシステムになっている。
続いてその他の商品を眺めていたのだが、そこでマシューの動きが止まる。
「煙草も売ってるのか……」
彼は喫煙者であった、昼に近い時間になっていたにもかかわらず目覚めてから一本も吸っていないという事に気付く。
「とりあえず一服するか」
ついでに冷蔵庫を覗いて中に入っていたサンドイッチと缶ビールを手に取って表に向かう。
ドアを出て、改めて周囲を見渡すと、ドアの横に腰かけるのにちょうどいいサイズの岩があったため、そこに腰かけて煙草に火をつける。
一服を終え携帯灰皿に吸殻をしまい、サンドイッチを一口、続いて缶ビールに手を付ける。
「さて、これからどうしたもんか」
そう言いながらもすでに腹は決まっていた。
FA-MAS G2Felinというモデル名はでっち上げております。
G2とFelinと呼ばれるモデルを組み合わせたような形で、ゲームで登場したのですが、実銃でそのような写真を見たことがありません。
2016/01/30:サブタイトル修正
2016/02/16:SCAR-S16/S17を16S/17Sに表記修正




