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亜空間商店  作者: たこね
第一章
11/18

第七話:月と灯り

 飯のハードルをあまり上げられると、くぐるよ?などと考えつつ、食器や道具を片付けながら、明日の献立の参考とすべく彼らの好物などをリサーチ。


 やはり朝は約二名を除いて軽めに済ますということなので、パスタにしてみよう。

 そして鶏肉をよく食べるという情報から唐揚げを夕飯にしてみよう。


 ちなみに武器防具についてもリサーチしてみたところ、皆、比較的最近に装備を新調したばかりだとか。


 まあ恐らく今回は肩慣らしなんだな、きっと、うん、そうに違いない。


 はちきれんばかりに夕飯を食べた事と、数日道に迷っていたことでの疲労が重なったらしく、皆早めに就寝した。


 朝食用の食材も取り出しやすいように整理が出来たので、後は寝過ごさないように気をつければ良い。


 というわけでマシューは定番となりつつある表の岩に腰掛け、煙草とビールを楽しんでいた。


 空には満天の星が輝き、月も出ている。


 しかも三つも。


 一つは見慣れたサイズの少し欠けた月、その右上に小さいとはいえ星と呼ぶには明らかに大きいサイズ。

 そしてそこからだいぶ距離をおいて中間サイズの三日月。


 日によってはかなり複雑な欠け方をした月が見れそうである。


 地球から何光年離れてんのかな、この星。


 そもそも亜空間経由なら全く別の世界で、この世界の宇宙のどこにも地球は存在していないかもしれない。


 まあ、デタラメがこれだけ続いているのだ、彼らが街に帰った後、唐突にあのオートスナックに戻されていてもおかしくはない。

 もしその時はきちんと銃は回収してほしい、どう考えても処分に困る、などと益体もないことを考えていると、誰か出てきた。


「マシューさん、起きてたんですか」

 ソントくんがやってきた。


「月を見ながら寝る前の一服ってところだ、君も飲むかい?」

 カゴの中に放り込んでおいたビールとコーラを見せる。


「リングを使って帰還予定日の変更を伝えようと思ったら、繋がらなかったんで外で試してみようと思って」


「あー、中だとそういうことがあるかもしれないねぇ」

 なにせ堂々と亜空間と名乗っている場所である、空間が違うんだったら魔法も電波も別け隔てなく遮断されて当然である。


 ソントくんが祈るような感じでリングを額に付け、もにゃもにゃ呟くと指輪を中心にほんのりと明るくなり、ゆっくりとと収まる。


「問題なく連絡出来ました」

 月明かりしかないため表情までは読み取れないものの、ホッとした雰囲気が伝わってくる、確かに連絡できないと捜索隊が即派遣されてしまい、無事でも料金をとられるのだ、中でリングが使えなかった事で落ち着かなかったのだろう。


「こっちは月が三つもあるんだねぇ、俺のいたところは月は一つしかなかったよ」


「あ、やっぱり遠くの星の方なんですね」

 え?普通にそういうレベルのお話通じるの?


 聞くと、大きい月には都市が存在し、観光や買い物が楽しめるのだそうだ。

 その関係で天文的な知識は一般的に広まっており、どこかに文明を持った星があってもおかしくはないという認識もされているそうで、この奇妙な店と店主を前にしてすんなり受け入れていた理由の一部が判明したのであった。


「そういえば明日調べに行く廃坑ってのは危険なモンスターがいるするのかな?」


「たまに危険なモンスターが住み着くことはありますけど、この規模の鉱山だとそういう奴には小さすぎるので、居たとしても周辺で目撃されたり、入る前に痕跡を見つけることが出来ますから、中でばったりってことはまずありません」


「なるほど、でも万が一ってこともあるから、気をつけてな、ちなみにどんなモンスターがやばい?」


「穴蔵トロルって言われている奴がいると危険ですね、ただ、光を嫌うので不意を突かれなければ逃げることは難しくありません」


「そうか、それならこいつを持って行ってみないか?」

 腰にぶら下げていたポーチからフラッシュライトを取り出し、ソントくんに見せる。


 このライトは発光部の反対側の底にスイッチが付いている、タクティカルライトとも言われているもので、光量が二段階に変化し、強い方の光量は向けられると目を開けてはいられない程の強さを持っている。


 サバイバルゲームで何度か使用したこともあるが、出会い頭に至近距離で顔を照らされた相手が声を出し、その場でうずくまってしまったことがある。

 すぐに回復し、ゲーム後にも改めて謝ったのだが、照らされ慣れてなかっただけだから気にするな、と許されたものの、その後の使用は自粛するようになった。


 スイッチを軽く押し、ローモードで入り口を照らし、戻して再度押し込むと今度はフルパワーで入り口が照らされる。


「これはすごいですね、手に持ったままなら魔法より早い」


 ソントくんに手渡し、光を自分で見ないようにと注意したのだが、何度か点灯させた後、自分に向けてしまった。


「だから言っただろう危ないって!」


「すみません、どうしても確認してみたくて、でも食らってわかりました、これなら目がある相手全般に利きます」

 一応覚悟の上で向けたようで、何度か目を瞬かせると視界は戻ったようである。


「これ、お借りしますね、必ず返します」


「いや、貴重なもんじゃないから無くしてもいいよ、無事に帰ってきてくれれば十分だ、そろそろ俺は寝るよ」


「あ、僕も戻ります」


「また明日」

「はい、おやすみなさい」

 食堂に戻り、挨拶をして別れる。


 よし、亜空間宿屋の店主として明日も頑張ろう。


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