第六話:カレーの魔力
料理といえば、マトルに事情を話して料理の手伝いをしてもらわねばならない。
「マトル、すまないんだが料理をつくるのをミアーナと一緒に手伝ってもらえないかな?」
先ほどの話し合いの結果を伝え、手伝いを依頼する。
「任せて!それで何を作るの?私としてはさっきの枝豆とナゲットもまた食べたいんだけど」
一応食材を見て何を作るかは決めてある、枝豆は剥き枝豆の入ったサラダにでもするとして、ナゲットは今回は見送ろう。
「道具を俺も確認しきれていないからそれ次第で変わるかもしれないが、カツカレーを作ろうと思う」
カレーに外れなしだ、問題は何人前用意するかであるが、まあ多めに作っておいて余ったら冷凍するなり、手はある。
食材を取り出し、キッチンに並べる。
そして棚をチェックすると、炊飯器がない。
タブレットを調べると有料支給品にあったのでその中でも大型のものを購入。
鍋やフライパンはあったので問題なし、そしてフライヤーはキッチンに据え付けられていた。
「俺はライスを用意するので、野菜を切って、みじん切りにした玉ねぎを炒めてもらえるかな」
「うん、問題無いわ!」
しかし、すぐにしょんぼりした声で
「ごめん、問題あったわ」
見ると、キッチンの高さがマトルの身長だと厳しい。
タブレットを見て踏み台でも用意しようかと思ったところ、キッチンの設定画面が開く。
見てみると足場の高さが調節できるようになっているので、早速操作すると、キッチンの足元が階段上にせり上がり、マトルでも支障なく使える高さになった。
「この高さなら問題無いわ!こんな機能があるなんて便利ね!」
「段差はあるから落ちないようにな」
「大丈夫よ、不安定な踏み台でやるより安全だわ」
頼もしい言葉を聞き、安心して大量の米を洗う作業に専念する。
炊飯器に米をセットしたのでしばし水を吸わせた後に炊飯開始するようにタイマーをセット。
カレーを煮込む寸胴鍋を用意し、続いてカツの準備に入る。
マトルの方も玉ねぎを炒める作業とうまく並行しながら大量の野菜を切り終わり、寸胴鍋に投入して煮込み始めていた。
程なく玉ねぎも炒め終わり、寸胴に追加される。
後はアクを取りながらしばし煮込み、ルーを投入すれば完成となる。
ルーの方も野菜が煮えたようなので、一旦火を止めてルーの投入準備に入ってもらい、こちらはトンカツの用意である。
本当ならここで手作りカツを作ってしまう流れなのだろうが、冷凍のカツを揚げるだけである。
フライヤーの油の温度を上げ、適温になるまでの間にルーを投入し、混ぜる。
量が多いためやはり大変だ、マトルは毎日毎食ではないにしても一人でやっているのだろうか、すごい娘である。
ある程度混ざり、油の温度も良くなってきたので休憩していたマトルに続きをお願いする。
驚いたことに、もともと打ち合わせでサラダを作るというのは依頼済みではあったものの、このちょっとした合間に用意していた、風呂から戻ったミアーナとの共同作業ではあったようだが、見事な手際である。
カレーを混ぜながらもこちらを興味津々で見ているマトル。
フライヤーにカツを投入、揚げ具合を見計らい、油きりのついたトレーに移動、すぐさま次を投入し、すべてのカツをきれいに揚げることに成功した、正直こんなにうまくいくとはは思わなかった、道具のおかげなのだろうが。
ライスも見事に炊きあがり、皿に盛り付ける、ルーをかけ、切ったカツを載せる。
付け合せのらっきょうや福神漬も用意し、いい出来栄えである。
テーブルに運ぶと見慣れない料理に皆興味津々である。
「味見させてもらったけど、ものすごく美味しいわよ」
ビールの代わりに用意した発泡酒と水も全員に行き渡ったので、いよいよ実食である。
全員一斉にカレーを口に運び、一瞬停止した後無言で食べ始める。
そして発泡酒を飲み、また食う、予想したとおり、あっという間に一皿目を全員完食し、お代わりの要求。
各々感想を口にしながら二杯目も完食、スパンドとボーマーは更におかわりを続け、気がつけば多少余るかと思われたライスもカレールーも残らず胃袋に収まっていた。
「詳しいレシピを教えてくれない?これは帰ってからも食べたいわ!」
とは言え、こちらも知っているのは市販のルーを使ったもの止まりであり、それら無しで再現できるほどのレシピを知らない。
ルーやカレー粉を売ってもいいが、やはりそれらが尽きたらおしまいである。
なんとか出来ないかと記憶を総動員し、ルーは小麦粉と何かをを合わせたら作れたかな、という情報と、各種スパイスのうち、記憶にあるターメリックや胡椒などの極一部のスパイス名しか思い出せなかった。
後はダメ元で商品メニューの検索欄に”カレー レシピ”と入力してみる。
なんとレシピ本がヒットした、値段は十Cr。
しかもご丁寧に商品ページには”おすすめ商品:カレー用スパイス詰め合わせ30Cr”
なんだろう、この店なんで武器扱ってるのかな。
武器屋っぽい活動って俺が銃買って的撃っただけだよね、しかも買った理由は趣味もあったけど、売ってるなら使う環境だと思っていろいろ覚悟を決めた結果だけど、彼らめっちゃ平和的よ?初めに出迎えたとき変なシミュレーションした俺すっごい痛いじゃん。
気を取り直してレトルトのカレーやご飯パックのことを伝えると、かなり真剣な話し合いという名のミアーナに対しての融資要請が続いていたのだが、マトルの爆弾発言により決着した。
「レシピは買って!街に戻ったら十倍で買い取るわ!、あと保存食のカレーやご飯は魅力的だけど、マシューの料理はきっとカレーだけじゃないわ、明日もきっとすごいのが食べれる筈よ」
販売前に既に売値の十倍に価値が跳ね上がっているんですが。
それと、ミアーナの所持金全部突っ込む勢いで買い物する計画に流れてません?