魔女と騎士、参上
ガラガラガラガラガラガラ…
ガラガラガラガラガラガラ……
上流貴族の、ガウロと名乗った男と共に馬車に乗って早二時間あまり。私はこの男と話すことなど何も無いので、マイスとおしゃべりをして過ごしていた。
「ねぇマイス、貴方どうしてそんなに綺麗な髪の毛をしているの?」
「セリカ、貴女は自分の髪を見てから言ってください」
「ねぇマイス、その瞳は何を写すの?」
「私の大事な人しか写しません」
「ねぇマイス、その舌はどうしてそんなに動くの?」
「貴女に応えるために」
言葉遊びのようなものだ。ガウロは気まずそうに体を動かすが、そんなもの知った事か。
私はマイスの横にピッタリと寄り添い、腕を絡めてマイスを見詰めた。これだけピッタリくっついているのに、なぜ赤くならないのかしら…あら、違った、赤くなるのを抑えてるのね、目がキョロキョロしているわ!ふふ、可愛い…
ふぅっ
「っ!セリカ!」
「何かしら」
「〜〜〜!!だからっ……!」
「ふふっマイス可愛いわ」
耳に息を吹きかければ面白い程体をひきつらせた。顔を赤くしてこちらを見るけれど、私がにっこり笑うとダメね。そこが好きなんだけれど。
私はうふふうふふと笑いながらこてんとマイスの肩に頭を乗せた。
骨張った手を自分のと比べてみる。あらまぁ、大きいわね。意外なところに男らしさが。
「……魔女殿、着きますぞ」
「ええ、分かっています」
ぼそりと顔を逸らしながら呟くガウロに返事をしながらマイスにくっつく。
ふふふ、ガウロ様ったら、目のやりどころに困るでしょう?ちょっとした仕返しよ。
私は満足げに笑って、止まった馬車のドアがあくまで待っていた。
先にマイスが降りて、私に手を差し出す。私はそれを当然の様に受け取り、立ち上がる。するとマイスは私が降りるより速く、私の膝裏に手を入れたかと思うと一瞬の浮遊感、後に膝裏と背中に逞しいマイスの腕を感じた。
「あら、お姫様抱っこね!」
「このまま行きますか、セリカ」
近くにあるマイスの綺麗な顔をするりと撫でて、マイスの質問に首を振る。マイスもそれを分かっていて言うのだから、悪い男よね。
「さ、ガウロ様が待っているわ、行きましょう」
マイスはそっと私を下ろすと、私の後ろを付いてきた。
ガウロ様を促し、陛下の場所へと案内させる。
さぁ、ここからが本番ね。
私はガウロ様に付いていきながら不敵に笑った。