魔女と騎士、出会う
いちゃこらしてるやつ書きたかったんです。
顎←アギトって読みます。
空は重ぐるしい灰色をしていて、空気は澱んでいた。
酷い雨の日だった。
「…無様ね」
私は目の前の倒れている人間を見下ろして、なんの感情もこもらない声でそう呟いた。
「…………」
目の前の人間は、カヒュー、カヒューとおかしな呼吸音を立てる。よく見ると、肺のあたりに夥しい血がついている。
肺炎になりかけているのだろうか。
まぁ、そんな事などどうでも良いのだが。
「生きたい?」
我ながら、なんて残酷なことを聞くのかと思った。ココにいる以上、そういう意味なのに。
目の前人間がうっすらと目を開いた。
とても綺麗な、青い目をしていた。
私はその目がとても澄んでいることに気づいて、思わず目を丸くした。
まるで何も恨んでいないかのような目だった。
……こんなにも血だらけで、泥だらけで、死にかけているのは、身内のせいなのに。
「あなた…自分の家族を恨んでないのねぇ…」
「っ…………」
痛みに顔を歪めながらも、私の言葉に反応を示す。その瞳には何故知っているのか、という驚きと…そして、
「…あら、やっぱり、恨んでるのかしら?」
怒りが、チラついていた。
私がニッコリと笑いながら言うと、怒りが困惑に変わっていた。
「すぐに怒りを悟られないようにするなんて、凄いわね」
ちょっと見下す言い方になってしまった。まぁ、彼は気にしないだろう。
私はにっこりと笑いながら、彼の隣にしゃがむ。
「私、あなたの事気に入っちゃった」
「……………っ」
「一緒に来てくれませんか?」
丁寧に丁寧に、優しく包み込むように、死にかけた目の前の人間に手を伸ばす。
目を丸くした彼は、目だけで私と、私の手を見比べた。
暫くして、彼は傷ついたその身体を鞭打って、私の手をとった。
これが、私とマイスとの出会い。
エロなんて入ってきませんよ。多分…。