門外不出
大きな、大きな国があった。その国はさらに大きな壁に囲まれていた。
国の中ではいつも音楽が流れ、映画が映り、誰かが何かをしていた。
ただひとつ不思議なところは、ここで生まれる人はおらず、ここで死ぬ人だけがいると言うこと。
壁にある幾つかの門のひとつに二人の男がいた。一人はこの門の門番。そしてもう一人はこの国の住人だった。
「門番さん、いいですか?」
「なんですか? 確か貴方は歌を歌う人では?」
「ええそうです。私は誰かが歌った歌を歌う人。それはさておき門番さん。お願いがあるのです」
「何でしょう?」
「ここを出ていきたいのです。門を開けて貰えますか?」
「何を言っているんですか。そんなこと出来るわけ無いでしょう」
「何故ですか、私は外に可能性があると思うんです。私は外の人たちに私を知ってもらいたいんです」
「それでもだめです。これは国の方針なのですから」
「でも、出ていってる人もいるじゃないですか」
「貴方は何か勘違いをされてらっしゃる。ああ、ここの門の隙間からも見えるでしょう。私の制止を振り切ってまで外に出ていった人達を」
「外、日差し強そうですね」
「そうですね。日差しはあまりにも強いので人々は焼かれます。そうでなくとも外には棘の大地が広がっています。『この国に関わった』という足枷は棘の大地を歩くことをより困難にさせます。どうです? ここから出ていくと痛い目に遭いますよ?」
「ですが外を堂々と歩いている人たちがいる。あの人たちは何なのですか」
「あの人たちはまた別です。ある人は元々外の世界で『地位』という笠を手にいれて日差しを防いでいます。またある人は『この国に関わった』という事実を無かったことにして棘を避けています。今の貴方に、その二つがありますか?」
「…………ありません。笠も、足枷を外す気も」
「そうでしょう。そもそも貴方を含めたここの人々は、元々外の世界で生きてこられなかった人たちです。日差しも棘も、痛みがあったのではないですか」
「ですが、外に出ても必ず私の事を応援してくれる人がいるはずです。その声があれば、私はどんな障害だって跳ね退けましょう」
「そうですか。そこまで言うなら止めません。どうぞよい旅を」
そう言って門番は門を開いた。この国の住人、いや旅人は、笑顔で門をくぐる。
「有難う門番さん。また会うときはいい知らせを用意します」
「お元気で旅人さん。また会うときは期待しています」
そうして旅人は、歩き出し、門番は再び門を閉じた。
幾つかの時が過ぎた日の夜。門番は何時ものように門の前にいた。
その時だった。門の向こう側から門が力強く叩かれた。
「門番さん開けてください! 早く!」
「おや、その声は旅人さん。どうしましたか?」
門番は何時ものように話した。
「外の世界はあまりにも過酷です! 日差しも棘も痛くてたまりません! この国の人の声も聞こえてなんてきません! 私が間違っていました!」
「そうですか、間違いに気付けたことは幸せですね。ですが門は開けられません。決まりなので」
「そんなこと言わずに! 化け物が!化け物が迫ってるんです!」
「決まりは決まりですので。それにあなたが戻ってきても、あなたの居場所なんてありませんよ。あなたの事などみんな忘れています」
門番がそういった瞬間、肉を裂く音がした。
門番は息を一つ吐くと、また番に戻る。
「ほうら、外に出るとろくなことがない。堕ちてきた人が、逃げてきた人達が、外に出ていこうなど」
や、どうも衣乃城太です。
今回も思い付きのスピード小説です。
内容はあらすじの部分で語ってるのでまぁなんとも。
この前あるサイトに「下手くそな文を書く人は、頭の中のイメージをそのまま描写しようとする」と書いてありました。
耳が痛いです。
ともあれ大賞、引っ掛かるといいなぁ。
それでは衣乃城太でした。