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私が“ヤンデレ乙女ゲーム”に転生したら……

一作目「ファンクラブ会長がヒロインを“呼び出し”してみた。」

今作 「私が“ヤンデレ乙女ゲーム”に転生したら……」

三作目「“ヤンデレ乙女ゲーム”のサポートキャラの私。」



*病んでます。注意が必要です。


生徒会長とその非公認だがファンクラブ会長が付き合っているという噂は、瞬く間に学園中に拡がった。


「田中会長、羨ましいー」

「私も、生徒会のファンクラブに入ろうかな。キャッ!」



「………」


その様子を影から見守っていた私は、彼女に同情を禁じ得ない。



(お気の毒に)



突然だが、この世界は“ヤンデレ乙女ゲーム”の世界である。

そして、私()転生者のうちの一人。


非公認ファンクラブ会長――田中華澄(たなかかすみ)さん――彼女も、本人に確認はしていないけれど、きっと転生者だと思う。

だって、私――藤田舞(ふじたまい)――は、ずっと“攻略対象者”を傍観していたから。


ゲームの世界と気付いた私は、早速“傍観”する事にした。

だって、ヤンデレの世界って! 他人事だとワクワクするし(酷い)


あ、噂をしていたら田中さんと生徒会長――白兼聡(しろがねさとし)――だ。

田中さんが引きづられるように音楽室(防音)へ。

その姿は、顔を真っ赤にして涙目である。


(ああ、逆効果だよなあ)


白兼先輩はいい顔をしていて…その目つきは野獣である。(歩くR18キャラだったから)

……音楽室(防音)か…… あの、スチルかな……ギリギリの『CERO C』いや『Z』だろう!! ってファンの間でニヤニヤしながら物議をかもし出したあのシーンか。


(本当に、お気の毒様です!)



ハンカチで涙を拭いていると、背後から明るい声の二重奏が聞こえた。


「まーいちゃん! 何してるの?」

「捜したよ?」



「!!!」


振り向くと、フワフワとベビーピンクの髪がなびいて、肌も瞳も綺麗で可愛い美少年。


ショタっ子属性の1年生の男子である


清流陸(せいりゅうりく)

清流海(せいりゅうかい)


陸と海がニコニコと私に近づいた。


同じ顔が並んでいる。


ニコニコ。

ニコニコ。



ヒィィ………背中に冷や汗が…。



彼らは、生徒会の会計をつとめている。

そう、彼らもこのヤンデレ乙女ゲームの“攻略対象者”である。


彼らのヤンデレルートは、チームを組んでヒロインをストーカー・監禁と24時間体制365日無休とまぁ、働き者なヤンデレである。

束縛が半端ない。もれなく監禁である。

キャッチコピーは『絶え間なく君と一緒に』…息が詰まるわ!


そして、彼らは双子(・・)ではない。

会計が双子なら判る。乙女ゲームの鉄板だ。しかし、こいつらは三つ子(・・・)なのだ。

製作者も悪ふざけがすぎる。


三男は清流空(せいりゅうくう)という隠しキャラで、結構ヘヴィーな生い立ちをしている。

財閥の息子である彼らは、長男である(陸) 次男である(海)と、世間では双子として通じている。三男である(空)は、生まれもって身体が弱く、2人よりも劣っていた。それを恥じた祖父が、『いないもの』として一族総出で空を隠し、彼らのストック(・・・・)として育てられた。陸か海に病気か怪我があれば、その『身体』を差し出すために。


――重い。 重い。 この設定重いから。


因みに、高校生になってからの空は健康的に育っている。


3人は仲が良い。

両親の目を盗んでは、学校に通わせてもらえない三男を、長男か次男の片方と『入れ替わり』学園に通っていた。

その、『入れ替わり』をした日。

双子(・・)キャラの乙女ゲームの定番である、『どっちがどっちでしょうか?』の名前当てクイズに私が、たまたま選ばれた。

この世界のヒロイン――吉水葵(よしみずあおい)さんが声をかけてきたのだ。


「えー判んないなー。藤田さん、判る?」

「え?」


急に、声を掛けられてその時はびっくりした。

彼女の事も(どのキャラのルートに行くんだろう)と傍観しているだけで、普段は親しくしていなかったからだ。


ちなみに彼らの見分け方は


長男が微かに一番前に立っている。

次男はその少し後ろで右足が若干後ろに引いている。

三男はほんの少しだがこのゲームをすると頬が赤くなる。


である。(公式攻略本参照)


「じゃあ、どっち?」

「どっちだ?」


う……。

双方の瞳がこちらをじっと見てきた。

しかも、今日は“3男”が来てる。


正解は、右が『陸』 左が『空』


どうしよう…。確か、彼らのゲームは『正解』すると好感度が上がるんだっけ?

じゃあ、なんとしてでも外さなきゃ。

私が“攻略キャラたち”との接触に焦っていると、吉水さんがこっそりと耳打ちしてきた。


「私はー、右が『空くん』でー、左が『陸くん』と思ってるよ?」



「え? 右が『陸くん』 左が『空くん』でしょ?」



……。


あ。


思わず、大きな声で言ってしまった。


おそるおそる清流ブラザーズを見ると、目を見開いた後に、すぐさま鋭い目つきに変わってこちらを見ている。


「……藤田先輩? でしたよね?」

「……ちょっと、来てもらえる?」


有無も言わさずに、片方の手を一人づつ掴んで、私は引きづられるように連れて行かれた。

ヒロインである吉水さんの方をみると ニコニコしながら手を振っている。

口パクで「頑張って」と言っているようで……。


ま、まさか?? 

―――ハメられた?



誰もいない教室に連れられ、ガチャリと鍵をかけられた。


「どうして、『空』の事、知ってるの?」

()の事は、誰も知らないのに」


殺気立って、詰め寄る二人に後ずさりしながらも、なんとか誤魔化そうとして。


「……ま、まちがえた~。てへ」

「………」

「……へぇ」



あわわわわ。


怖い。確かドSキャラは白兼生徒会長だけど、この清流の三つ子もドSはいっていたような。

っていうか、ヤンデレは基本ドSだよね? 自己中だし。 思いどうりにならなかったらすぐにキレるし。殺そうとするし。 監禁するし。 子どもじゃん。 暴力的な子ども。



「だって、名前が! 陸海ときたら空! 陸海空!! その3つがないとおかしいって思っていたから、思わず声に出ちゃって」


我ながら苦しい言い訳。

でも、その言葉に空が反応した。


「3つ……」

「空…」



その日は、名前とクラスとメルアドをしっかり白状させられて、教室に帰された。


そして、私は………


――三つ子(・・・)のルートに入ってしまったようで……。



あの日以来、教室に三つ子が入れ替わり立ち替わりやってくる。

一瞬の隙も逃さないくらい、登下校、休み時間、昼休み、そして休日。

必ず、三つ子の誰かが私の傍にいて離れない。


怖い。連携プレイ超怖い。

そして、何をしても“フラグ”が折れない。

ピンチである。



――ある日の休日


いつものように、無理矢理、清流家に連行された。


目の前の3つ子、右から陸・海・空と扇状に並んで私を取り囲んで座っている。


私を見つめる6つの瞳。

3つの美少年顔。

至福の眺めのはずなのに、怖い。超怖い。



「舞ちゃんってば、プルプル震えちゃって、可愛いなぁ」

「うさぎちゃんみたい! もう、うちで飼いたい!」

「それがいいね! 僕らの誰かは必ず家にいるし。 ずっと一緒にいられるね!」



ヒィィィ。 

勝手に盛り上がっているし。



今日こそ、はっきりと言おう。

私は、この世界ではモブで君たちの相手はヒロイン(吉水さん)という事を。


「あの…吉水さんの事は? それに、私……ファンクラブとかに目をつけられたら怖いし。そんなに毎日…一緒じゃなくても」


「ファンクラブなら、解散させたよ? 吉水先輩? え? もしかしてヤキモチ? かわいいいい!!!!!」

「不安だったの? ごめんね。もっとこれからは一緒にいてあげるね。 舞ちゃん、ほんと可愛いよね!」

「舞ちゃんに、何か言ってくる奴なんて、ころ(・・)…いや近づかせないから! 安心してね!」



ヒィ! 今、『ころ』って言った! 変換したら『殺』じゃないよね? ね?

それに、ヤキモチじゃないし! フェェェ。 あの日の自分が憎いわ!



喉がカラカラになって、目の前にあるジュースを飲み干した。

こうなったら、今日は焼け食いして帰ろう。


ズズズズズ



飲み干して、5分程たってから、フラフラとしだす。

彼らの瞳が光って、どこかで見た気がした。



(あ、しまった。 これ……監禁ルートのス…チル…じゃな…い?)



そして、私は意識を失う。



このゲームをしていた(前世)に、ヤンデレの出す、飲食物をむやみに口にするなよーヒロインってバカじゃない? って思っていたはずなのに……。





目を覚ますと、真っ白な5~6人は眠れそうなベットの上でフカフカとまどろんでいた。


それを囲む、上半身裸の3人。



「…ん」


フラフラする頭を抱えると「大丈夫?」と心配されるが、まだ上手く身体が動かない。


「さて、子作りしようか?」

「僕たち、初めてだけど、勉強したから安心して!」

「もちろん、舞ちゃんも初めてだよね?」


初めてじゃなかったら、相手を殺しているけど。 ねー。 そうそう。なんて明るく言っているけど……。


「何を言って……」

「舞ちゃんが何かあった時に、『ストック』がいないと大変でしょ?」

「いっぱい、子ども作ろうね」

「『ストック』は、沢山いた方が安心だもんね。うふふふふ」


(ストック?)


(え?)




…3人って



…3人ってーーーーー!!





――“ヤンデレ乙女ゲーム”の世界に転生したら無闇矢鱈に傍観せず、速やかに転校する事をオススメします。










→続編「“ヤンデレ乙女ゲーム”のサポートキャラの私。」

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