第2話『涙の~あ~とに~は~ウ~エ~イ~ト~リフティング!!』
長らくお待たせしました!テストが忙しくてなかなか投稿できませんでしたが、今回も見ていただければありがたいです!!
「……ごめん、今なんて言った?」
「だ~か~らぁ~、俺お笑い芸人なるねんて! 割とマジで」
そこ復唱せんでいい! まあ、でもここは……
「ふ―んそう、頑張ってね」
こんな風に流したらすぐに忘れるだろう。
「いやほんまやねんって! 仕事が終わった後にお笑い養成所で勉強するつもりや、月水金土で」
こいつが真面目に計画を建ててることに面食らった。というかよくよく考えてみたら冗談にしては手が込んでいる。あたしは念のためにもう一度聞いてみることにした。
「もう一回聞くけど、本当なの?」
「当たり前やん。パパが嘘ついたことあるか?」
これはマジでやる気だ。
「じゃあ何? そのへたくそな関西弁もそうなの?」
「おおそやで! まずは何事も雰囲気から始めなね!」
嬉しそうにはしゃぐ父にあたしは頭を抱える。
こいつは昔からこうだ。いい年して突拍子もない行動をする。それに振り回されるあたしの気持ちも考えてよ。
「あっ、そや。早速コント考えたから見てくれへん?」
「………………」
「おいおい、何かリアクションしてくれよ~」
「…………てよ」
「ん?」
「いい加減にしてよ!!!」
気づけばあたしは父に対してまくし立てていた。
「昔からあたしを散々振り回しといて今度は芸人になる? ふざけないでよ!! あんたのせいであたしがどれだけ困ってきたと思うの? 少しはあたしの気持ちを考えてよ!」
怒りとともに今まで溜まっていたものを全てぶちまける。あっけにとられたのか父はそれをただ黙って聞いていた。
「ほんとになんなのよ! なにもかも、なにもかも、なにもかも、なにもかも!!」
「希、俺が悪かったから一旦落ち着こう」
「うるさい!! 本当の父親じゃないくせに父親ぶらないでよ!!!」
「!!?」
瞬間、空気とともに父は固まった。しかし父はすぐに表情を取り繕うとあたしにポツリと謝った。
「…………ごめんな、希」
「あ…………」
父の表情は優しかったが、あたしを見る目はとても悲しそうだった。
「ッッ!!…………」
「おい希!!!!」
気がつけばあたしは家を飛び出し走り去っていた。
―――――――――――
「はあ……」
あたしはマンションを出て近くの商店街まで来ていた。
――あたしは昔から何かあったら肉屋の『のんのばあ』のところに行く。のんのばあとも血は繋がっていないがあたしを本当の孫のように可愛がってくれた。
「あら、希ちゃん」
後ろから声がした。振り向いたらのんのばあがいつもの優しい顔で立っていた。だけどのんのばあは少し困ったような顔で
「希ちゃん、目腫らしてどうしたんの?」
「え……?」
目元を触ると指が濡れていた。あたし、泣きながら走ってたの……。
「ぐすっ……ひっく……の、のんのばあ」
「希ちゃん、ばあちゃんは希ちゃんの味方よ」
「う、うわああああああああ!!!!」
泣いた。一ヶ月後には高校生なのにのんのばあの胸の中でみっともなく大泣きした。
「どう、少しは落ち着いたかい?」
「うん……」
あの後あたしはのんのばあの肉屋に連れられた。そこでもたくさん泣いたが今はだいぶ落ち着いてきた。
「希ちゃん、一体何があったの? ばあちゃんに話してみんしゃい」
「うん……実は――――――」
あたしはありのままのことをのんのばあに話した。のんのばあはうんうんって頷きながら聞いていた。
「なるほどねえ……しんちゃんはここに来てから結構無邪気過ぎるところがあるからねえ」
「………………」
――『俺は葉原司進、今日から君のお父さんだ!』
「…………そう、だね」
ふと、思い出してしまった。父とあたしが最初に出会った日。
思えば最初から父は無茶苦茶だった。でもそんな父のことをあたしは不思議と嫌じゃなかった。あれ? なんであいつのこと嫌いなのに嫌じゃないの……?
でもその時のんのばあはあたしにそっと言った。
「希ちゃん、しんちゃんは不器用なんだよ」
「…………え?」
「ちょっとやり過ぎだけどしんちゃんがあんなに無邪気にしてるのはしんちゃんなりに希ちゃん、そして皆に笑ってほしいからなんよ」
ウソ、父はずっとあたし達のためにあんな子供じみたことをずっと……?
「あの子は不器用だけど誰よりもみんなのことを見とる。そしてみんなを喜ばせようと頑張っとる。だから希ちゃん、これだけはわかってあげ。どんな形でもあんたのお父さんは頑張っとるんね」
「お父さん……」
親の心子知らず……か。あたしは何も知らなかったんだ。よし、普段についてはある程度は目をつむりますか。
「のんのばあ! 話聞いてくれてありがとね!」
「いいよいいよ、またここに遊びにきてくれるかい?」
「もちろんだよ、のんのばあ!」
「そりゃあよかった。おっと早く仕入れた肉を冷凍庫にいれないとね」
「あっ、のんのばあ! あたしも手伝うよ!」
そうしてあたし達は立ち上がると外に出た。
「それでその肉ってどこにあるの?」
あたし達は肉屋の裏の空き地に来ていた。空き地の真ん中には3mはあるだろう大きさのコンテナが2つ置いていた。
……想像はしたくない。もしかしたら肉は別のところに置いてるかもしれない。そういう期待を込めて聞いてみる。
「何を言っとるんね、肉はそこのコンテナん中に入っちょるよ」
はい、予想をどストライクで行ってました~
「いや、さすがにこの大きさを運ぶってのは無理なんじゃ――」
「まあ見ときなさい……よいしょぉ!!」
瞬間、そびえ立つ巨大なコンテナの一つがいとも簡単に持ち上がった。
――ここで捕捉。
のんのばあはぱっと見は普通のおばあちゃんだけど、実はものすごい力持ちなのだ。しかもその力はしゃれにならなくてヒグマ10頭同時に倒したという伝説まで残している。
『超常住民ファイルNo1.津川あきの
年齢・74歳
職業・肉屋
握力・右142kg左159kg
ウエイトリフティング・1890kg(6年前測定時)
趣味・筋トレ』「希ちゃん、もう一つのほう持ってくれんかい?」
「ちょ、いやいやいやいや!!! こんなの持てるわけないって!!!」
確かにちっちゃい頃のんのばあに鍛えてもらったけどさすがに限界はあるって!!
「ああ、じゃあばあちゃんが持っとるのを希ちゃんに渡すよ」
いや全く駄目だよ!! 押し潰される未来しかないって絶対に!!
「大丈夫よ、意外と軽いけん」
……そう言われてみたら大丈夫な気がする。いや、できるわけがない!!……でももしかしたら…………ええい!! 女は度胸だ!!!
「のんのばあ! こっちに渡して!」
「いいん? それじゃあいくよ……ほぉれ――――」
翌日からあたしは病院のベッドで春休みを過ごすこととなった。
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