八話 ありえないこと
遅れました!すみません。
今回は主人公は出てきません!ごめんなさい!
ではどうぞ!
〈side ラミス〉
私の名前はラミス。いちおう、冒険者だ。
本当の名前はもっと長いんだが・・・今は秘密だ。
さて、今私はフルール村の村長の依頼を二つ受けている。
一つ目は討伐。
村の近くでAランクモンスター〔ナックルベア〕が確認されたらしい。
つまりそれの討伐だ。
二つ目は捜索。
昨晩から村長の娘が行方不明だそうだ。
森に行った、という目撃証言があり本当は村長も行きたそうだったが、危険ということで遠慮させてもらった。
ナックルベアは確かに危険だが、私にも頼りになる仲間を連れてきているのし、私自身もAランクなので、大丈夫だろう。
近接格闘系に関しては奴は確かに脅威的だが、魔法に関しては耐性はほとんどない。
まあ、それでもAランクなので一発では死なないが。
捜索は、獣人系の仲間に任せてある。
いつもは、ふざけてる奴だが・・・やるときはやってくれるやつだ。いろんな意味で。
でもだいたいの目星はついている。
その場所は・・・寂れた教会だそうだ。
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「・・・こんなところに教会があったとはな・・・」
今は見る影もないが、大きさからしてかなり位の高い教会だったことが伺える。
「二手に分かれるぞ。私とエリシアが、ミーラ嬢の捜索。フロットとネムが、周囲の警戒だ。
大丈夫か、皆!」
「あいあいさー」
「わかったわ」
「わかりました~」
上から順番に、獣人――フロット、魔法師――ネム、神官――エリシアが返事をしてくれた。
ナックルベアがどこで出るかわからないので前衛後衛という分け方だ。
「よし!では―――捜索開始だ!」
そうして、依頼が始まった。
*
「・・・と、言ったはいいがが」
「まあそうですよね~」
ミーラ嬢はすぐに見つかった。
教会の入口近くに寝かせてあったのだ。
「最初、血まみれだったのは驚いたが・・・」
「傷はどこにもなし、全部返り血ですねェ~」
なぜか血まみれでだ。
なんの血か果てしなく気になるが。
しかしその疑問は直ぐに解けることとなった。
「―――大変だよ!ラミス!」
フロットによって。
*
「これは・・・」
そこは、地獄絵図だった。
散乱する肉片、漂う鼻を刺すような腐臭、そして・・・
「ナックルベア・・・」
両腕がないナックルベアがそこにいた。
「左手は結構綺麗な状態で教会の中に捨ててあったよ~」
「なぜだ?ナックルベアの甲殻は売れば、一人ぐらいは遊んで暮らせるくらいの代物だぞ?」
そう、ほとんど魔法により討伐されてしまうナックルベアは、だいたいは火の魔法で討伐されるので、無事な甲殻は貴重なのだ。
「それが・・・」
躊躇いながらもフロットが差し出したものは・・・。
「おいおい・・・嘘だろ・・・」
正面から真っ二つに切られていた。甲殻ごと。
そして、さらに驚異的なことをネムが教えてくれた。
「ラミス・・・これ、魔法で切られたものじゃないわ。ついでに強化の魔法を使われた形跡もない」
「なに・・・つまり、ナックルベアの甲殻が強化無しの身体と剣で・・・で切られたということか?」
「ありえない話だけど・・・そうなるわ」
まさしくありえない話だ。
いや、もう夢かもしれない。
「・・・実は魔物同士で戦っていたというオチじゃないか?」
「―――それもありえないですゥ~」
いつの間にか、隣に来ていたエリシア。背中にはミーラ嬢が背負われている。
「この子の記憶を読ませていただきました~
詳しくは、ぼやけてて見えませんでしたが、ナックルベアを討伐したのは多分記憶の最後に残っていた二人組ですゥ~」
「わたしは、それよりもおまえの術の方にびっくりなんだが・・・」
いつのまにそんな危険な術を覚えたんだろう。
「精霊にも聞いてみたよー。多分エリシアの言ってる二人組だったみたいだね」
フロットもエリシアの意見に賛成みたいだ。
いや、それよりも・・・。
「いつから精霊と話せるようになったんだ?お前が霊獣の獣人ということは知っていたが・・・」
「ちょっと前に、ノリで」
あいもかわらずいい加減な奴だ・・・。
「まあ、私たちは何もやっていないが・・・依頼は終了だ。
帰還するぞ」
「ちょっと待って。もう一個重要な話が・・・」
「まだ何かあるのか?」
「多分一番重要な問題。この子の右手を見て」
そう言われ皆がミーラ嬢の右手を見る。
そこに描かれていたのは・・・先端が分かれている一本の剣の紋章
つまりこれは―――
「まさかこれ・・・加護の紋章ですの?」
ネムが震える声で皆の心のうちを代弁する。
「精霊がそう言っているから間違いないよ。それもかなり高位の神様のみたいだよ。
精霊が言うには確か・・・」
「”断罪の女神”・・・」
「そうそう!そんな感じの名前だよ!―――ってそれって超レアな加護じゃん!」
”断罪の女神”の加護を持っていたのは歴史上で、たったの三人・・・つまりこの子は四人目ということだ。
「はてさて、この子も大変だな・・・」
加護を持つものは、大抵の者が波乱万丈の人生をおくると言っても過言ではない。
ましてや、”断罪の女神”の加護だ。それ以上であろう。
「ミーラ様の人生に幸あれ・・・」
エリシアが、そう呟いた。
誤字脱字があれば報告お願いします。
PVがついに3500を超えた・・・。
やっほー!
訂正
・協会の『協』を『教』に修正しました。