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二十三話 大天使の心配

遅くなりました。 

これからは少し不定期更新になるかもしれません。

作者の勝手な事情で遅れることを、深くお詫びします。


今回は、久しぶりに登場の神と大天使の話です。

ではどうぞ!

 〈side アテネ〉


 竜地たちが〈神森〉で激戦を繰り広げる中、アテネとラファエルは何をしていたかというと・・・。


「はふ~・・・」


「お茶がうまいッスね~・・・」  


 のんびりとお茶を飲んでいた。やたらとだらけた感じで。

 空中に浮くことができることをいいことに、寝転がりながらチュウチュウとストローでお茶を飲む。

 神職者がこの光景を見ようものなら、無礼であっても目の前で失神するか叱咤しかねない光景だが、残念―――幸いなことに、このふたりを視認することができるものはここに存在しなかった。

 

「いや~こんなふうにのんびりと二人でお茶を飲むのも久しぶりですね。いつぶりでしょうか?」


「三十年ぐらいじゃないッスか?ここ最近は、下がうるさくて会うことができなかったですし」


「ああ、あれですか・・・あれらにも困ったものです。ただお茶をしているだけなのに、あることないこと言いふらすなんて・・・天使として恥ずかしくないんでしょうか?なんですかあれ?仲良くすることで、自分の失態を見逃してもらってるなんて、あるわけないじゃないですか。だいたい、私はその程度で動きませんよ」


「そう言わないでください。天使たちにとって、噂話も立派な娯楽ッスからね。たとえ嘘だっと知っていても、喜んで言いふらすのが天使ッスから・・・」


「いい子もいるんですから、全部まとめた言い方はいけないですよ?」


「そうッスけど、素直なやつはどうしても目立たないッスからね・・・」


「目立つ時は、大体ほかの天使にハメられて、悪評を流される時ぐらいですからね・・・」


 天界では、常に皆が皆上昇思考を持っているんですがどうしてなのか、何千人もいると自己を鍛えることではなく他者を蹴落すことに努力する奴がいるんですよね。

 神人は天使を目指して、天使は大天使を目指して、大天使は神を目指して、努力します。

 と言っても、昇格の方法が現在主神となっておられるエピメス様から属性を授かる、ですから、なんとか自分を見てもらおうと、また他の奴が目にかからないように、頑張るわけです。

 あ、後、属性はよほどのことがない限り消されませし、また、属性は授けた人―――つまり、エピメス様が自分の手で授けたものしか消せません。他の神が授けた属性を消そうと思ってもできないというわけです。まあ、属性を自由に行使できる方はエピメス様しかいませんが。


「・・・いや、もう一人いましたね・・・」


「・・・?どうしたんッスか?」


「なんでもありませんよ。それより、ここの光の大精霊は亜神に昇格しましたから、もうここにはいないはずなんですが・・・勇者は一体何と契約するんでしょうか?」


「どうッスかね・・・まあ、正直言うと、あの魔剣があれば大抵のことはくぐり抜けられる気はするんッスけど・・・アテネさんは大丈夫ッスか?」


「・・・何がですか?」


「決まってるじゃないッスか、魔剣の能力ですよ」

 

 ラファエルが、先ほどとはまるで違う、真剣な表情でこちらを見る。

 姿勢も、さっきまでの寝転がっていたものではなく、真っ直ぐに立っているものである。


「あの魔剣の能力(スキル)には、《憤怒の恐怖》っていう名前の、周りの生物のステータスを全て一段階下げるといったやつがあったはずッス。もちろんそれは、我々大天使や神も例外じゃないはずッス。私は隷属契約を結んでいるせいか効果はありませんし、”仮面王(ペルソナ)さんもアリアさんも聞いてないようですが、アテネさんは違うはずッス・・・森に入ることはできないと嘘を言ったのも、力が消耗していたからでしょう?」


「・・・やれやれ、流石、数少ないプロメス様から属性を得た大天使なだけはありますね」


「・・・そんな危険を冒してまで、何故あの勇者と一緒に旅なんかしてるんッスか?」


「私はその程度で弱るほど脆弱じゃありませんよ。仮にも、かの双子神と同時に生まれた”断罪の女神ジャッジメントヴァルキリー”ですからね。力は多少消耗はしてますが、許容範囲内です」


「何言ってるんッスか!【正義】を使ってるならまだしも、これ以上は・・・!」


「大丈夫です。自分でも限界ぐらいわきまえてますよ。それに、いざとなったらあなたが何とかしてくれるでしょう?」


「・・・その言い方はずるいッス。そんなこと言われたら、断れないじゃないッスか・・・」


 相変わらず、優しい大天使だ。他の天使も、表面上は心配してくれるでしょうが、心の底では何を思ってるのかわかったもんじゃないですからね。真っ黒なやつばっかりですよ。何がとは言いませんが。

 しばらく無言でいると、〈神森〉から、精霊の騒ぐ声が聞こえてきた。(精霊は、自我を持って話すことはないが、なんとなくの感情は伝わってくる)


「これは・・・勇者が何かやったようですね」


「ここまで精霊が騒ぐのも珍しいッスね、ちょっと視て(・・)みます」


 そう言うと、ラファエルは目を閉じ、祈るような姿勢をとる。

 属性【風】の固有能力の一つ、《千里眼》だ。

 世界は、一部の例外を除き風でつながっているもの、【風】の属性を司るラファエルは、そのチカラで

自分の視界を風とつなぐことができるのだ。

 無言で見守っていると、ラファエルはゆっくりと目を開けた。

 しかし、その目はひどく慌てているように見える。


「・・・何が見えたのですか?」


「ヤバイッス。あの姿からして、あれは竜・・・いや、真龍族ッス。それも下っ端じゃない大物・・・最低でも《将軍級(ジェネラル)》はあるッス」


「はあ!?真龍族!?と、特徴はなんですか?まさか、金色の鱗なんて言いませんよね?」


 昔の悪夢を思いだし問いかけるも、ラファエルの答えはその予想の上を行くものであった。


「鱗の色はちょっとしか見えませんでしたが・・・黒ッスね。それも限りなく闇に近い色の黒ッス」


 その言葉を聞き、思わず目の前が眩むかのような錯覚が発生する。

 黒い龍鱗に、真龍族。それは間違いなく・・・。


「”邪龍ウロボロス”・・・!!」


「え、ウロボロスって言ったら、たしか魔王の右腕とか言われた・・・―――って、超大物じゃないッスか!?なんで生きてるんッスか!?先代の魔王討伐時に死んだはずじゃ・・・とにかく、マスターを助けに行かないと!」


「・・・いえ無理です」


「そんな!なんでッスか!?早く助けに行かないと私のマスターが・・・!!」


「・・・それ気に入ってたんですか?」


「いちおう隷属関係なのでこっちのほうがいいかなーと」

 

 ・・・どうしましょう。

 かなりふざけていったことが、実際に使われているとなんか恥ずかしいですね。


「それで、なんで助けにいかないんッスか?アテネさんなら、戦闘経験もあるッスよね?」


「それです。戦闘経験があるから、うかつに手が出せないことをわかっているんです」


「・・・?どう言う意味ッスか?」


「真龍族は、独自に開発した魔法として”固有世界(マイワールド)”という魔法があるんですよ。効果は、自分と、自分の周囲の敵対するものの亜空間移動。これを使われてしまうと、たとえ神であっても戦闘に介入することも、中から逃げることもできないんですよ」


「それじゃあ、マスターは・・・ッ!」


 本当に、あれはうざくてうざくてしょうがなかったです。

 途中でキャンセルすることもできませんし、無理やり連れて行かれて、発動者(龍?)を倒して元の世界に戻っても、次から次へとやってくるんんですから・・・。


「そ、それじゃあエピメス様に、助けを―――」


「―――ダメです!」(げしっ)


「へぶらっ!!」


 ラファエルの行動に反応して、つい側頭部を蹴り飛ばしてしまった。

 しばらく地面と平行に滑空し、そのまま手近な木に衝突する。

 近づくと、どうやら今の一撃で気絶してしまったようだ。

 ふう、危ない危ない、今こんなところで、あいつに計画が漏れるわけにはいかない。

 なにせ、天界では勇者は来ていない(・・・・・)ことになっているのだから。

 記憶操作でもかけようかと思いながら、しばしふわふわ浮かんでいると、突如杭のように回転した木が飛んできた。


「―――しっ!」


 神力を固めて造った光の矢を撃ちだし迎擊するも、次から次へと木や石が飛来してくる。

 空に飛んで逃げようかとも思ったが、ラファエルが自分の下に倒れているのでそれもできない。


(流石に、気絶させたまま放置して、死んでしまったら気分が良くないですからね)


 飛来物を正確に撃ち落とすスナイパーゲームをしていると、〈神森〉が弾けた。

 それと同時に、先程とは比べ物にならない量の木が、そして衝撃波が撒き散らされた。


「こうなったら・・・!『正義の盾は、弱者を救い、悪を拒絶する!”反射の鏡盾”!』」


 聖術は、所詮神の真似事、ならばオリジナルである神の術はどれほどのものか?

 ―――劣るわけがない。たかが人間の術に。

 鏡の盾は、防ぐことに重点の置かれた神術ではない、その特性は名前にあるとおり『反射』。

 ありとあらゆるものを反射する盾は、衝撃波さえも打ち返し、次々に飛来物を破壊する。

 すべてが終わったあとに周りを見渡すと、アテネたちがいる空間だけポッカリと穴があいたように無傷の空間が広がり、それに対して周囲は、それはもうひどいものであった。

 木々が突き刺さり、土はめくれ、熱波でも来たのか少し地面がこげているようだ。

 そして、アテネは〈神森〉へと視線を戻し、絶句した。


 何もない、そうとしか言えない。

 緑豊かな森は、全て吹き飛び燃やされ灰へと変わり、飛び交っていたはずの精霊も影すらなく、満ち足りていたはずの神力は、全て消滅していた。

 眼前に広がる灰色の大地に、ポツリと人が立っている。

 数は四人(・・)

 赤く錆びた全身鎧をつけた者を囲むように、三人が立っていた。

 あの鎧姿は見たことがある、確か勇者が盗賊と立ち向かった時に身につけていたものだ。

 あとの三人は、仮面をつけたもの、黒い髪のゴスロリのようなものを着たもの、そして、紫の髪がよく映える髪の色と同じ紫のワンピースを着た少女であった。


(・・・おや?〈神森〉に入ったのは確か、アリアさんと”仮面王(ペルソナ)”さんと勇者だけでは?)


 何故あの嵐のような惨劇の中無傷なのかなど、色々と気になることはあったが、とりあえずそういう思考は隅に置き、最初にいなかったはずの四人目の少女を見る。

 よく観察してみるも、どうにも思い出せそうで思い出せない。

 まるで、記憶の中にフィルターでもかかってるかのように、思い出したと思った瞬間モヤのようなものがかかってしまうのだ。

 疑問に思いながらも、とりあえず集団のところに行くことにする。

 ラファエルを肩に担ぎ、若干駆け足のスピードで向かいながらアテネは、ラファエルのいったことを思い出した。




 はて、ウロボロスはどこに消えたのか?

前回の話は、作者も少し反省しています。

改めて見ると、ひどかったです。ええ、そりゃもう。

てことで、いつか書き直しておきます。書き直しが終わりましたら、活動報告に書いておきますので、それでは。



次回は、本編です。

龍を倒した竜地。

そして消え去った聖域。

どうなる!?次回を待て!



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