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二十二話 黒龍ハ咆哮ス

や、やっとできた・・・。

今回は、待望の戦闘です!え、別に待ってない?それは心の中にしまっておいてください。


それと、いつの間にかPVが七十万を超えていて、ユニークが十二万を超えてました。

みなさん読んでくれて、ありがとうございます。

 それは不思議なお茶会。

 装飾は少ないが、どこか気品のあるテーブルと椅子が用意された中、二人の人物が向かい合う。

 一人は、白い髪に燕尾服に山高帽、そしてどこか不気味さを感じさせる白い仮面をつけた、決して感情を外に漏らしそうにない男。

 一人は、黒い髪に黒の瞳と黒のゴスロリのようなドレスを身に付け、まるで表情を変化させない人形のような少女。

 彼らは、先程から一言も言葉を口にせず、ただ正面に立つ相手を見つめ・・・いや、睨み合う。

 

「・・・・・・リュージは、行った。再度問う・・・お前は何者だ」


 その沈黙を破ったのは、黒い髪の少女―――アリアであった。

 先程までとは、比べ物にならないほど冷たい声で仮面の男―――”仮面王(ペルソナ)”に問いかける。

 常人なら怯えすくむほどの威圧を受けても、”仮面王(ペルソナ)”は余裕の姿勢を崩さなかった。


「俺は、こことは違う世界から来たいせか―――」


「そんなことは、知っている。・・・・・・私が聞きたいのは、お前自体が何で(・・)、何をしたいかだ」


 ”仮面王(ペルソナ)”の言葉を遮り、なおも挑発的に続けるアリア。

 しかし、挑発に乗りその身を怒りに任せることは、”仮面王(ペルソナ)”は決してしない。


「やれやれ、人の話は最後まで聞くものだぞ?―――魔造天使(エンジェロイド)?」


 ”仮面王(ペルソナ)”がそう告げた瞬間―――膨大にして蜂蜜のごとく濃密な魔力がアリア(・・・)から放たれた。

 先ほどまで漏れ出ていた神力とはまるで違う、禍々しい魔力が周囲に満ち、下位の精霊は一瞬にして消滅してゆく。

 精霊が消滅すると同時に、精霊のヤドリギとなっていた木々や花が、次々と枯れてそよ風に吹かれ、消滅していく。

 灰になり、風と共に命が消える光景を目にしても、”仮面王(ペルソナ)”は笑みを崩さない。

 まるで、自分には効かないとばかりに、笑い続ける。

 その光景を見てアリアは、心底悔しそうに唇を噛む。


「・・・・・・なぜ、そのことを知っている・・・!」


「知っているもなにも、有名な話じゃないか。狂った魔法研究者の、狂った発明品は。そうだろ?作品NO.034”魔造天使(エンジェロイド)”?」


「黙れッ!私をその名で呼ぶなッ!」


 アリアの周りを漂う魔力が収束し、数百本の黒い矢と化し”仮面王(ペルソナ)”に降り注ぐ。

 一本一本が致死の威力を込められた矢は、全て”仮面王(ペルソナ)”に届く直前で消滅した。 

「俺のテーブルと椅子は特注でな。俺に対して害意のあるものを消滅してくれるんだよ」


「・・・・・・ちっ」


 悔しそうに舌打ちをするが、アリアは怒りを鎮めることなく、攻撃の手をやめることをしない。

 無表情のまま、怒りをあらわにするアリア。その光景は、どこか不気味なものであった。


「安心しな。お前の願いも目的もすでに分かっているし、それを邪魔する気も毛頭ない。俺の正体も、気にかける必要はない。お前の本性をばらされたければ、どんな手を使って聞いても構わんぞ?」


「・・・・・・承知した。・・・・・・しかし、こちらの目的を、妨げるような行動がみられた場合、貴様を殺す」


「構わんさ。殺せるものならな」


 物騒なことを口にし、挑発しあいながら二人は笑いあう。

 その瞳に狂気をにじませ、その笑い声に嘲笑を含ませ。

 すべての命が消え去った灰色の大地の上で二人が笑い声をあげていると、どこからか爆音が鳴り響いてきた。

 視線を向けると、確かそこは先ほど竜地が中位の精霊に連れられて行った方向と同じ。

 そのことに気がついたアリアが急ぎ椅子から立ち上がろうとしたが、体は鉄で固められたかのように動かすことができない。

 ”仮面王(ペルソナ)”を睨みつけ、先ほど使ったものより数段質量が増大した黒い槍が飛んでゆくが、またもや全て消されてしまった。


「・・・・・・この拘束を解け、邪魔するなら容赦しないと言ったはずだ・・・!」


「俺も介入するつもりはないんだがな、今回は諦めてもらう。これもあいつにとっては、必要な事だからな」


 怒りを具現化させたように、黒い槍が飛び交う。

 そのほとんどがテーブルと椅子の効果で消えていく中、一本だけ槍が絶対防壁を通過し、”仮面王(ペルソナ)”に襲いかかる。

 槍は、空間に黒いシミのようなものを残しながら進み、仮面に突きたった瞬間、”仮面王(ペルソナ)”の右手に握りつぶされた。

 人外の握力に潰された槍は、端から砂のように消えていき、黒いシミも消しゴムをかけられたかのように消えていった。


「ほう・・・いきなり【原罪】を使うとは思わんかったよ。そこまであいつに執着する意味はわからんが、残念だがこの程度では俺は殺せん。諦めてここで待つことを勧める」


「・・・・・・貴様にはわからん。さっさとこれを外せ。そして、あそこで何が起きている?」


「やれやれ、拘束は外さんが、何が起こっているかは教えてやる。この〈神森〉の最深部は、かつての勇者の契約精霊である光の精霊が眠っており、精霊に認められたものしかそこにたどり着くことはできず、また偶然たどり着くことができても契約することはない・・・と、伝説では書かれている」


「・・・?・・・・・・それがどうかしたのか?」


「おおありだ、実はだな、この伝説には二つ誤りがあってな?眠っているんじゃなくて封印されているんだ。しかも、それは光の精霊なんかじゃない。この世界にて最強の生物、そして、かつて大陸に永久の傷と恐怖を埋め込んだもの、その炎は海を干上がらせ、その爪は大地を割り、その牙は山をも砕く、魔王の右腕、竜種最強の”真龍族”の長―――”邪龍ウロボロス”が封印されているんだよ」




□■□■□■□■□■□■□

 

 

 

 大地が黒い炎に包まれ、晴れ渡る空は雲もないのに灰色。

 そして、見渡す限りの何もない黒の大地。かろうじて、空が灰色のため地平線がわかるくらいだ。

 光り輝く湖は、まるで血のように赤く染まり、飛び交う精霊は消えて、木々は黒炎に包まれたと思ったら、いつの間にかこの場所に移動していた。


『案ずることはない。我が本性を表すと周りの被害が酷いのでな。それに、あの場所も我のお気に入りなのだ、無駄に傷つけることはしたくない。なので、我の固有世界に移動してもらった』


 わお、いろいろとツッコミどころが多すぎるセリフですね。

 何、固有世界?あの某弓兵みたいなもの?大量に剣でもでてきたりするのだろうか?

 黒龍は口元を歪め、牙を見せながらうっすらと笑い声を上げる。


『クックック、固有世界が何かわからんといった顔だな。我ら、”真龍族”は、気性が荒くてな。度々決闘が起きるのだが、もちろん双方本気を出すため、そのたびに周りが破壊し尽くされてしまう。そのため作られたのが固有世界だ。これを使えば、世界ごと自分の固有世界に移動するため、周囲への心配がない。つまり・・・我も本気を出せるというわけだ』


 ・・・あれ?なんか嫌な予感がしてきた気がする・・・。

 黒龍は、空を覆うかのごとく大きな二枚の翼を広げ、空へと飛び立つ。

 しばらく空を飛び、再び俺の目の前に滞空し始め、口の中に魔力を貯め始め・・・って!


『我が名は”邪龍ウロボロス”!さあ剣を持て!いざ尋常に―――勝負!』


 開戦の宣言と共に、ウロボロスの口から真紅のレーザーが放たれた。

 あらゆるものを融解する、光の速さで迫る光線を俺は避けることもできず、呆然と見ていた。動かせたのは右腕だけ、いや、勝手に動くのは右腕だけ。

 脊髄反射ともいうべきスピードでウロボロスに向かって突き出された右腕は、至極当然の如く真紅のレーザーにぶつかり―――消滅した。レーザーが。


「・・・へっ?」


 間の抜けた声が出てしまう。レーザーは、右手に触れた部分から食いちぎられるようにどんどん食われていく。

 傍目から見れば、とんでもなく奇妙な光景だろう。なにせ、光線という気体液体と言う前に、実体すらないものに、歯型が残されながら食われていく光景は。

 ウロボロスは目を見開き咄嗟に空へ飛び、それを避けようとするがそれは逃がしはしない。

 光線を食い散らかす不可視の牙は、ザシュッと生々しい音を立てながら、ウロボロスの右翼を食いちぎった。


『ガアアアアアッッ!!!』


 世界を揺らがすような悲鳴の咆哮が響き渡り、黒の大地からは青い炎が吹き出る。

 片翼を失ったウロボロスは、空中でバランスをとることができずゆっくりと落ちてゆき、直後巨大な地震が大地を走った。

 あまりの揺れにしゃがんでしまい、揺れが収まったところを見計らって顔を上げると、そこには先ほど落ちていったはずのウロボロスの爪があった。


「・・・・・・ッ!」


 右腕から魔剣をだし、迫り来る爪を防ぐ。しかし、いくら強化されていおうが相手は龍。あっさりと弾き飛ばされてしまった。


「―――ガハッ!」


 数十メートル地面と平行に吹き飛ばされ、大地に身体を叩きつけられる。

 肺の空気を全て押し出されて呼吸困難に陥るが、そんななかでも竜地は直感で右に転がる。

 ヒュンッとウロボロスの爪がすぐ横を通り過ぎ、大地を引き裂く。

 岩盤ごと引き裂かれた大地は、崩落していき谷へと変わり、それを埋めるかのように黒炎が吹き出す。


『・・・ここまで我が追い詰められた随分と久しぶりなことだ。今代は中々の魔剣使いのようだな』


「褒められてんのかわからんが・・・ありがとよとだけ言っておく。てか、こっちの手札(魔剣)も割れてんかよ・・・」


『当たり前だ。あんな次元法則も全て無視したような、無茶苦茶なことができるのは魔王の魔剣のみだ』


 やっぱり無茶苦茶だったか・・・。次元法則とやらはよくわからんが、多分世界にとっては重要なことなんだろう。

 魔剣を使い、《嫉妬の執着》で全身鎧を身に纏う。これで、爪がこようが牙がこようが大丈夫だろう。・・・レーザーは知らないが。

 

「”形状変化(モード)―――大鎌(サイズ)”」


 《嫉妬の執着》を発動し、デフォルメの大剣から大鎌に変化させる。

 装飾も何もない錆びでできただけの鎌だが、その鎧と相まって死神を連想させる禍々しいものであった。もともと、殺した生物の血でできてるしな。

 竜地は、なにも初期動作のない状態から一気に加速し、ウロボロスの右前足まで跳ぶ。

 ウロボロスは、それを迎え撃つため、その凶悪なまでに尖った尾を振り回す。

 竜地はその尾の鱗のあいだに鎌を引っ掛けるという神業に近い技を発揮し、更に加速し前足を通り抜けて後ろ足を切り裂く。

 少しばかりでも斬り裂ければと思い鎌にしたのだが、その予想はいい方向に裏切られた。

 もともと速かった竜地の加速に、尾による加速が加わった竜地の鎌の速度は、ウロボロスの右後脚を閃光のような速さとともに切り飛ばした。


『ガアアアアアアアアアアアッッ!!!』


 先ほどより大きな悲鳴が大地に響き渡る。

 大地の黒が染み渡るように赤に変わっていき、青い炎が大地から吹き出る。

 

『ハアッハアッハアッ・・・どうやら我は貴様を見誤っていたようだ。ならば、我も封印を解放させてもらおう』

 

 負け惜しみか、とは言えなかった。

 ウロボロスの頭に、深紫の紋章が浮かび上がる。最初と同じ、互いの尾を飲み込もうとする蛇の紋章だ。

 ウロボロスは右前足を振り上げて、紋章を叩き割るように振り下ろす。

 カシャンと呆気なく散っていた紋章は紫色の光の粒子へ変わり、ウロボロスの体にまとわりついていく。

 光の粒子は、ウロボロスの体に消えていくが、特段変わったことはない。

 そう、切り落としたはずの翼と後ろ足が復活していること以外は。


「・・・なんで、新しいのが生えてるんだよ」


『我は”無限龍”と呼ばれることもあってな。その身体が尽きることはなく、その魂が消えることもない。肉体の欠損など、取るに足らんことだ、封印が解かれた我にはな』


 ウロボロスは、天に向けて咆哮し尾を叩きつけて大地を割る。


『再戦だ。今度は、死んでも知らんぞ?』


 


□■□■□■□■□■□■□



「・・・・・・な、んで、そんな大物がここに・・・!?」


 アリアは、息を呑む。

 ”邪竜ウロボロス”・・・最下級でも強力な竜族、その中で最強と言われる種族”真龍族”。その長が、邪竜ウロボロスだ。

 竜族は、大まかにランクづけすると五つに分かれる。

 最下級の《兵士級(ソルジャー)》から始まり、《騎士級(ナイト)》《貴族級(ノーブル)》《将軍級(ジェネラル)》そして最後に、《皇帝級(エンペラー)》となっている。

 《兵士級(ソルジャー)》は、知能を持たない小型(それでも五mは普通にある)の竜など。

 《騎士級(ナイト)》は、少しばかり知能を身につけた竜で、たいてい”真龍族”はここに入る。

 《貴族級(ノーブル)》《将軍級(ジェネラル)》は、ランクとしては分かれているが、どちらも同じくらいの強さ。分け方としては、膨大な魔力を使った戦い方をするのが《貴族級(ノーブル)》で、その強靭な身体能力を使った戦い方をするのが、《将軍級(ジェネラル)》である。現在確認されているのは、両者共二体である。

 そして最後に君臨するのは、《皇帝級(エンペラー)》。強さは竜族一であり、この世界で最強の生物であり。そして、過去に魔王の右腕として人族に立ちはだかった世界最悪の敵である。

 竜族が生まれてから現在まで《皇帝級(エンペラー)》の名を持つ龍は一匹しかおらず、それが”邪龍ウロボロス”と言われている。

 竜族が一度争いを起こせば、この大陸は滅びるとまで言われているぐらいなのだ。


「さあな、本人、いや本竜にでも聞いてくれ」


「・・・・・・じゃあ、光の精霊はどこへ?」


「光の精霊はその功績を認められて、大精霊の一段階上の存在、亜神に昇格した。少なこともここにいないことは確かだな。まあ、その代わりにウロボロスがここに根付いたんだが・・・」


「・・・・・・このことは、誰から聞いた?」


「それは教えられないな。本人も、見知らぬ人間が押しかけられても面倒だしな。ちなみに、このことを知っているのはあと三人だけなはずだ。人族の中ではな」


「・・・・・他の種族は、このことを知っているのか?」


「それに関しては口止めされている。ノーコメントだな」


 アリアの質問を、適度に情報を与えて肝心なところをのらりくらりと躱す”仮面王(ペルソナ)”。

 そのことを気づいているアリアは、なんとか情報を集めようと質問を繰り返す。

 もう一つの戦いが行われているのか、再び爆音が鳴り響き、爆炎が〈神森〉が噴き上がった。

 天を焦がすかのような真紅の炎は、果てなく天を貫いていく。

 直後、ガラスのようなものが崩れ落ちる音が響き、崩落音と共に衝撃波が、地面を舐める。

 衝撃波は、木々を吹き飛ばしながら進み、周りに満ちていた神力は次々に消滅していく。

 

「・・・ッ!”光の城砦盾”!」


 アリアは、衝撃波に備えて聖術最硬の防御力を誇る守備術を発動する。

 しかし、衝撃波はそれを乗り越えるかのように通過し、アリアに襲いかかる。

 覚悟を決めて目をつぶり身を固めるが、いつまでたっても衝撃波はこなかった。

 前を見ると”仮面王(ペルソナ)”は気だるそう言う。


「言っただろう、このテーブルと椅子は、俺に危害を加えようとするものを、すべて消滅させる。それより・・・ほら、決着がついたみたいだぞ」


 そう言われて、障害物がなくなった森の中央を見ると、そこには横たわった黒い巨龍と、剣を地面に刺して身体を支える赤い騎士がいた。




□■□■□■□■□■□■□




 そこから先は、持久戦とも言えない戦いだった。

 切っても切っても次から次へと欠損部位が復活し、逆にこちらの怪我が増えていくばかり。

 骨折などは鎧によって防がれているが、先ほど放たれた真紅の熱線は避けきれず、左腕を焼いていった。魔剣の《暴食の悪食》も、何故か最初の大技っきり発動していないため、防げなかったのである。流石にこの鎧も気密性がなく、左手は炭になってしまって全くと言っていいほど動かない。


「ハアッハアッハアッハアッ・・・いったい、いつになったら、倒れるんだよ・・・!」


『言ったであろう。我は無限であると。一撃でこの身を一片の塵もなく消さねば、我が地に臥すことはない』


 満身創痍の俺と違い、余裕綽々の声で答えるウロボロス。

 その余裕は果てしなく苛立たせるが、いいことを聞いた。

 一片の塵もなく消滅させれば、流石のアイツも死ぬということだ。

 いままでの俺なら、諦めていただろう。しかし、今の俺には切り札のようなものがある。

 それは―――魔法。

 発動方法は聞いている。それに、一般の魔法の威力は知らないが、勇者(笑)を見る限りかなり強力なものだろう。てか、あれより出来ないのはなんか認めたくない。

 この魔剣で塵もなく消すことは無理だろうが、魔法さえ使えれば出来るかもしれない。

 

『何か考えがあるようだが、もう終わりだ。残念だったな、導かれし者よ』


 ウロボロスは、再び口内に魔力を貯め始める。また、光線を打つ気なのだろう。

 魔剣を杖がわりにし、すがりつきながら立つ。


「俺は・・・諦めるわけにはいかねえんだよッ!」


 魔剣でを形状変化させ、身体を補強するように動かす。そして、剣本体も形状変化させあるものを形作る。

 それは、筒。地面に生えるかのように四本の固定脚があり、それらを押しつぶすかの如く重圧な砲身。

 それはまさに、この世界ではありえない銃・・・いや、大砲であった。

 

『このひと時、中々のの殺し合いであった。それでは、最後に遺言はないか』


 ウロボロスは魔力を貯め終わったようで、俺に聞いてくる。

 遺言?そうだな・・・。


「じゃあ、最後に言っとくぜ―――油断大敵だったな」


 砲身に、俺が見た二つの魔法陣が展開される。

 一つはゲラーの”氷の薔薇”、もう一つは勇者(笑)の”光の閃光(ホーリーレイ)”。

 俺が見た魔法陣はこれだけ、それに俺は魔力を全力で注ぎ込み、ウロボロスに狙いを付ける。

 すると、魔法陣から異常が起こった。

 溶けた。はっきり言えばそうしか言えない。ドロドロと、端からロウソクのように、魔法陣が溶けていく。

 魔力の注ぎすぎかと思い、慌てて魔力の供給をやめるものの、もう手遅れと言わんばかりに魔法陣は溶けていく。


『・・・・・・さよならだ。導かれし者よ』


 ウロボロスから、先程までとは違う、灰色の光線が放たれる。

 真紅の光線ほど派手さはない、しかし、本能で理解する。あれはくらってはいけない。

 もう一度、魔法陣を展開しようと思い砲身に意識を向けると、一つの血のような色の魔法陣が出来上がっていた。

 どうにでもなれ、そう決意し、魔法陣に魔力を注ぎ込み、ウロボロスに発射した。

 砲身から撃ちだされたのは、白色の炎の塊。白炎弾は、灰色の光線にぶつかり、その身を削りながら突き進む。

 

『これは・・・まさか、”原初の白焔”!?』


 ウロボロスの驚愕の声が聞こえるが、意識が朦朧とした頭では判断ができない。

 魔力を注ぎまくった時から頭がフラフラしてきたのだがら、これが噂の魔力欠乏状態だろうか。

 確かにこれはきつい。

 白炎弾を押し返そうと、ウロボロスは光線を吐き出すが、それらをせせら笑うかのように白炎弾は突き進む。

 

『うおおおおおおおおおおおおおお!!』


 ウロボロスが雄叫びを上げる。

 しかし、白炎弾は灰色の光線を突っ切り、ウロボロスに着弾した。

 瞬間、光が爆ぜた。

 立ち上る真紅の爆炎は天を貫き、ウロボロスの固有世界を突き破る。灰色の空は、真ん中をくり抜かれたように穴が空き、そこから亀裂が走ってゆく。

 白い炎にウロボロスは焼かれ、大地に今までとは比べ物にならないほどの亀裂が走り、黒炎がそれらを押し留めるように噴き出る。

 

『ガァァァァアアアアアアアアアアアアア!!!』


 ウロボロスの悲鳴が世界に轟く。

 ゆっくりと、その巨体が倒れていく中、俺の必死につなぎとめてきた意識も消えていく。

 ・・・俺は・・・勝ったのか・・・?

 世界が崩れてゆく景色と朦朧とした思考の中、ウロボロスが笑っているような気がした。

どうでしたか戦闘は?これで、〈神森〉編は終了にしたいです。まだ決まってませんよ、はい。

次回は、少し本編から外れようかと思います。

誰の話になるかは、あなた次第!

・・・なんてことはないです。


あと、『錆びゲー』の番外編として新しいのを始めました。

よかったら、読んでください。


訂正

・『心象世界』から『固有世界』に変更しました。

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