十九話 仮面王のパーフェクト魔法教室
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それでは、本編どうぞ。
「えぐっ・・・ひっく・・・折角・・・あちきのことをわかってくれる・・・仲間が・・・できたと・・・ひっく・・・」
『ほらほら泣かないでください。あなたの願いことは、きっと叶いますよ。もっとも、願いとかその辺は私の管轄じゃないですが』
泣きじゃくるラファエルと、微妙に噛み合っていない会話を続けるアテネ。
・・・神様にも、管轄とかあるんだな・・・。
まあ、この女神なら、自分の管轄でも手を抜いてサボりそうだが。
『・・・なんか、考えましたか?』
「いや、別に何も言ってな―――って、考えた!?だから心を読むな!」
「無茶を言うな、”遊戯帝”。顔を見れば一発でわかるぞ。仮面でもつけろ」
「いやいや、お前こそ無茶を言うなよ」
頭の中で、”仮面王”のつけているような仮面をつけている自分を想像する。
・・・全身鎧以上の不審者ができた・・・。
「・・・すまん。勧めといてなんだが、俺的にも無理だった。はっきり言って怪しすぎる」
「安心しろ。その想像以上怪しい奴を、俺は知っている」
もちろん、目の前で仮面をつけている奴だ。
俺は、これ以上におかしなやつは知らない。いや、もしかしたら”電脳皇”も実は、見た目がおかしかったりするのか?一回もあったことどころか、見たことすらないからな。
・・・やめておこう。下手に考えると思考の渦にはまりそうだからな。
「うう・・・・皆あちきのこと忘れてる・・・」
あ、ラファエルのこと忘れてた。
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結局、全員(”仮面王”を除く)で、ラファエルをなだめることに成功し、今ではすっかり元気になっている。
「ハハハハハハハッ!今日も世界がキレイッス!アハハハハ・・・・・・」
・・・目が虚ろで、空元気にも見えるが。
やっぱりOHANASIは大事だね!
ひとまず、ラファエルは隅に置いておき、再び”仮面王”と話すことにした。
「結局、お前は一体何で呼ばれたんだ?俺と同じということは、お前も勇者になるっていうことか」
「いや、俺はお前の補佐役だ」
「・・・?補佐?」
補佐、ということはつまり・・・
「勇者パーティーの一員っていうことか?」
「だいたい正解だな。異世界に来たばかりの勇者に、常識とか色々教えるため、俺はお前より少しだけ早くこちら側送られたんだよ」
”仮面王”は、やれやれと言わんばかりに肩をすくめる。
なるほど、道理で俺がこっちに来る三日前から学校に来なかったのか。
てっきり、なにかとんでもないことをしでかそうとしているのかと、学校中戦々恐々していたんだがな。
「そういや、俺より早くってことは、この世界に来てから何日くらいなんだ?」
「だいたい・・・一か月くらいか?」
「一か月!?」
えっ、なにこいつ。そんな長くこっちで生活してるの!?
てか、三日で実質三十日?だいたい十倍ぐらい時間軸も違うのかよ。
昔ゲームに載ってた、世界が異なると時間軸も変わるって本当なんだな。
俺が驚いていると、どこからか、暗い声が漂ってきた。
「ハッハッハッ!・・・・・・あちきは、まだいいって言ったのに。無理やりこっちの扉を開いて、好き放題暴れまくって・・・」
声から聞くと、”仮面王”は、好奇心を抑えられずに、無理やり特攻してこっちに来たみたいだな。
やっぱり、一か月も早く来るのはおかしかったのか・・・。
声の主には、同情がやまないな。
「もちろん、早く来たからにはそれなりのものを身につけたぞ。この世界の常識とか、魔法とか、歴史とか」
「・・・常識は知っていても無視するし、魔法は平気で理の外のものを使うし、歴史に至っては、矛盾点をあげて相手を挑発しまくっていたじゃないですか・・・」
「・・・お前本当に何やっちゃてるの?」
過去に、これほどまでやりたい放題行なった男はいたであろうか?
いや、たぶん居ないであろう。
”仮面王”だからできる無茶、これこそ白鷺高校で恐れられる”仮面王”の一面だ。
「弁解することは特にないはずだがな・・・おっともう時間だ。時間凍結を解く。ラファエルは、一応姿を消しておけ。教会のやつらに見つかると、神が舞い降りただとかなんとか言って、教会に引きずり込まれるぞ」
「わかったッス・・・・・・」
ラファエルは、カウンターに置いてある酒瓶をひとつ手に取り消えていく。
何ナチュラルに、泥棒してんだよ。と言いたいところであったが、今回は黙っておいてやる。
これ以上あいつから何かを取り上げると、心が壊れるかもしれん。
そっとしておこう・・・。
”仮面王”が、パチンッと一回指を鳴らすと世界に『動』が戻ってきた。
いつの間にか消えていた喧騒は、静かな世界にいた耳には少しきつかった。
再び横を見ると聖女がこちらを見ており、無表情で告げた。
「・・・・・・前の男から魔法発動兆候あり。・・・・・・気をつけて」
「ほう、俺の魔法に気づくか天使。流石だな」
「・・・その天使ってなんだ?可愛らしいっていうことか?」
まさか、”仮面王”はロリコンだったのか?それなら、元の世界で、そのミステリーさに惹かれた、とかなんとか言っていた女子の告白を断ったのも、わかるが・・・。
「なに、其の儘の意味さ。どう解釈しようがかまわん」
「・・・ほんもんだったとはな」
「別に、美しいものを愛でるのは罪にはならんだろう。俺のが罪になるなら、ペットショップで動物をめでてる奴や、アイドルファンは全員犯罪者だ」
「愛でている対象が問題なんだけどな・・・」
「お待たせしました!コーケとグリームのピザと、ピグのレッドスパゲッティになります!」
どうやら、料理ができたみたいだ。
早速食べることにしよう。
あ、ちなみにコーケは、鶏が二周りぐらいでかくなったやつで、グリームがパセリみたいなもんで、ピグが牙の生えた豚だ。
味はなかなかうまかった。
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夕食を食べ終わった後、三人分の部屋を取り(金は大司祭から貰った)、聖女を除いて、一度俺の部屋の集合することになった。
「部屋だけなら、空気遮断だけでもいいな」
”仮面王”が、パチンッと指を鳴らすと、下からの音が聞こえなくなった(宿場スペースは二階から上)。
指を鳴らすのは、魔法に必要な動作か何かなんだろうか。
『おそらくそうですね。しかし、この仮面はとんでもなく規格外ですね』
「なんでだ?ただ、魔法が使えるのがそんなにおかしいのか?」
「いや、たぶんそこの女神はこう言いたいんだろう。『魔法陣も詠唱もなしに、単一動作でここまで複雑な魔法が組めるはずない』・・・こんなところか?」
『・・・あなたも、心話の魔法ができるのですか?』
「いや違うな。顔を見ればそいつが何を考えているかだいたいわかる」
『本当に、規格外の人間を選んでしまったものですね・・・』
まったくだ。
それより・・・
「魔法って・・・なんなんだ?」
「なんだ、そこの女神から聞いてないのか?」
”仮面王”が、アテネを見ると、アテネは気まずそうに眼を逸らして言った。
『基本的に神は魔法が使えませんからね・・・魔法を学ぼうとする神なんていないんですよ』
「敵の情報を集めるのも立派な戦略なんだがな・・・。まあいい、俺が解説してやる。聞きたいことを言え」
聞きたいことか・・・。やっぱり魔法といえば・・・。
「属性とか、ランクとか、この世界ではどれくらいが普通か、・・・ぐらいかな?」
「わかった、他に聞きたかったら後で聞け。
属性に関してはだいたい『無』、『火』、『水』、『風』、『土』の基本属性が五つと、数が少ない『金』、『氷』、『雷』、『光』、『闇』の上級属性五つに、失われた秘術の『時』、『空』が二つだな。普通、属性は一人につき三~四つくらいで、稀に五つ以上持っている奴がいる。魔力も、この世界にいるやつはたいてい持ってるし、庶民では生活に魔法を、国では兵器として魔法を扱っているといった、ありとあらゆることに使える便利なものそれが『魔法』だ。
この世界の普通といったら・・・まあ、基本属性が大半で、上級属性を持っていれば国から勧誘が来るし、失われた秘術を使えるなら、間違いなく大陸中の国に引っ張りだこだな。もっとも、失われた秘術を使える奴なんて居ないけどな。
魔法にはランクというのもあって、一番下が一レベルで、一番上が十レベルといった十段階だな。
普通のやつなら、一レベルから二レベル、それなりの魔法師だと五レベル、現在のもっとも魔法が発展してる〈ヴァンデス帝国〉の宮廷魔法師長がだいたい八レベルだったか?そんなところだな。」
「”仮面王”はどれくらいだ?」
「俺か?俺は全属性に、使用可能レベルがMAX以上だ」
「・・・・・・驚かないぞ。突っ込まないからな。絶対に、突っ込まないからな」
なんとか出そうになった右手を、左手で抑える。
ここで突っ込んじまったら、負けだ。こういう奴だと、納得しなければいけないんだ・・・!
俺が苦しんでいると、”仮面王”は何かを思い出したかのようにポンと手を叩いた。
「おお、そういえば魔法には属性以外にも種類があるんだ。三種類あって、『精霊魔法』、『普通魔法』、『特殊魔法』と言われているやつがあるんだった。いや、すっかり忘れていた」
「・・・精霊魔法・・・?」
それは、まさかあのキャルーンとした、少女型の小人みたいなやつが戦うんだろうか?それとも、人間ぐらいの大きさの、半透明のお姉さんなのか?
あの人類の夢の・・・精霊なのか?
「・・・少々不穏な気配を感じるが・・・気のせいだろう。精霊魔法は契約した精霊の力を借りて、魔法を発動する事だ。これの利点は、魔力を渡すだけで勝手に精霊が魔法を発動してくれること、欠点は精霊と契約すること自体が難しいし、精霊の霊格もそれなりに高くないと、どれだけ魔力を渡してもしょぼい魔法しか発動しないということか。発動する魔法の種類も、精霊の気まぐれだしな。普通魔法は・・・さっき説明した魔法のことだ。最後に特殊魔法、これはその名の通り特殊な魔法に付けられるもので、普通魔法にも精霊魔法にも当てはまらない魔法のことだ。だから、これが一番種類が多い。その力も千差万別で、とんでもなく強力なものもあれば、全く役に立ちそうにないものもある。まあ、個人の工夫次第だがな」
「さっき言ってた、空気遮断とか心話とかもそっち系に入るのか?」
「空気遮断は、俺のオリジナルだ。心話は、少し違う」
「・・・・・・心話は?」
「お前が連れてきた天使が主に使う聖術のことだ。聖術は流石に俺も多くは知らんが、言ってしまえば所詮神の真似事だ。模造品とはいえ、強力なことに違いはないがな」
『なかなかいい線を付いている解説ですね。将来は賢者か何かになるつもりですか?』
「・・・生憎そっちは興味はなくてね」
アテネの言葉に言葉を少し濁らせる”仮面王”。
この世界は、本当に驚くことばかりだ。まさか、”仮面王”のこんな姿が見れるとは・・・元の世界なら、皆既日食並みのレア度だな。
「歴史はどうなんだ?魔王の現れた原因とか無いのか?」
「そこらへんに書いてある本の歴史は長いからな・・・少し省略させてもらおう。
この世界には、双子神がまずいた。
弟神は、世界想像に必要な『創造』の能力を持っていたが、兄神は持っていなかった。
そこで、いつしか劣等感を覚えた兄は、いつしか天界から立ち去ってしまった。
今のところは、果ての丘という場所で自害したということになっているな。
兄が消えてから、ちょうど百年。
大陸の中心で―――魔王が誕生した。
魔王は、世界に瘴気をバラ撒き、世界を汚染した。
それを見ていた弟神は、自分のチカラで瘴気を中和し、別の力に変えた。
それが、最初の魔力の誕生だ。
魔王は、七人の側近―――”七罪姫”を大陸の中心にある魔王城に連れて行き、悪逆非道の限りを尽くした。
人々は、魔王に抵抗したがその力は強大で、全く歯が立たなかった。
弟神は、この世界の人間ではダメだと知り異世界の神に頼み込み、一人の人間を譲ってもらった。
この人間が、最初の勇者だ。
勇者はとても正義感が強く、自分がここに連れてこられるために、元の世界で殺されたことを悲しむものの、嘆き悲しむ世界の人々を見て勇者を引き受けてくれた。
勇者は、一騎当千の力と契約精霊である光の精霊の力を使い、次々と魔王の尖兵を打ち破り、”七罪姫”を倒し、そして頼れる仲間をみつけた。
聖女、戦士、魔法師、聖騎士、これら四人が勇者の仲間だ。
そして、勇者はついに魔王を倒すことに成功した。
勇者は、いつしかどこかに消え、聖女は〈ロマリア教国〉を、魔法師は〈ヴァンデス帝国〉を、戦士は〈ジッダ王国〉を、建国し、聖騎士はまだ魔物に苦しむ人々のために旅に出て、旅先で見つけた有能なものでギルドなるものを作った。
しかし、魔王は滅びず何度でも蘇り世界に復讐を続けている・・・。
といった感じか?勇者の行方は誰も知らない・・・これは多分魔王と相打ちの可能性が高いと言われている」
「実は陰謀で殺されていたって線が、濃厚そうなんだが・・・」
『私も、勇者のその後に関しては、知らないですね』
「あちきもッス」
アテネとラファエルが、そう言う。
誰も知らない勇者の行方・・・なにかありそうだな。
「他はもうないか?」
”仮面王”が訪ねてくる。
最後にまだ一つだけ、重要な質問が俺にはあった。
「”仮面王”・・・お前はこれからどうする?」
「どうするもなにも、勇者の補佐に選ばれたのは俺だからな。責任はちゃんと果たすさ」
「・・・・・・ありがとう」
俺はただ感謝を続ける。
元の世界の友人がいるというのは案外心の支えになるというものだ。
この返事は、本当にありがたいものであった。
「あちきも行くッスよ!」
「そういえば、ラファエルは何ができるんだ?」
「あちきは、風の化身ッス!治癒に関しても、そこらの人間には負けないッスよ!」
「大天使が人間に負けることがあれば、それこそ天界の危機じゃないか?例えば俺とか」
「・・・間違えましたッス。そこらの天使には負けないッス」
あさっての方向を見て、汗を流す大天使と、不気味に笑う仮面の男。
どうやら、仲間が増えたみたいだ。
やったねりゅうちゃん。仲間が増えたよ!
・・・ごめんなさい、少しやってみたかったんです。
誤字脱字アドバイス等がありましたら、ご報告ください。
訂正
・『光の力』から『契約精霊である光の精霊の力』に変更しました。




