十五話 決闘
遅くなりました!
最近は、テストが近づいているので執筆があまりできないです。
今度も少し遅くなるかもしれません・・・。
「ふん、逃げなかったのは褒めてやる。だが、この俺に逆らったことは失敗だったな」
「・・・・・・」
石でできた床の上、金の髪と金の鎧の青年と、黒い髪とこの世界にはないセンスで作られた奇妙な服装を纏った青年が対峙する。
「俺は由緒正しきサラン家にして、天から選ばれし勇者だ。平民ごときが俺に話しかけてもらえるだけありがたいと思えよ」
「・・・・・・」
周りにはさきほどまで教会に集まっていた〈教国〉の住民が、神父が、修道女が、衛兵が集まっている。
「だいたい、この勝負自体が間違っているんだ。たかが平民と俺じゃ、お話にすらならないよ。ほら、今すぐ俺に謝りたまえ。『分をわきまえずすいません』とな。そうすれば、俺も鬼じゃない。この寛大な心でお前の無礼を許してやらんこともない」
「・・・・・・」
金の髪と金の鎧の青年が吠える。
だが、黒い髪の青年はただただ相手を睨む。
「はっ!怖気ついて、声すら出せないか!」
「・・・・・・」
金の髪の青年は黒い髪の青年に挑発を続けるが、黒い髪の青年は身動きひとつとらず、全く持って反応すらしない。
「・・・いいだろう。こちらの善意を無視するというなら、俺にも考えがある。その罪・・・命で償え!」
「ハア・・・」
金の髪の青年は切りかかり、黒い髪の青年はため息をつく。
黒い髪の青年―――朝葉竜地も構えをとりそれを迎え撃とうとする。
―――こんな状況になったのは、ほんの数分前のことだった。
■□■□■□■□■□■□■□
「―――我が魂は、此の方と共に」
「・・・・はいっ?」
聖女は、確かにそういったはずだ。
俺は、その言葉にまともに反応することができなかった。それは皆も同じみたいだ。
ほら、なんか重要人物っぽいおじいさんも、笑顔で固まっちゃってるし。金髪たちも同じく。
皆、聞こえてはいる。ただ理解できないだけ。
俺は、今も頭を下げたままの聖女に、話しかける。
「えっと・・・もしかして入口に用だった?」
「・・・・・・」
「ああ、すまんな。流石に入口で突っ立ってるのは邪魔だもんな。アッハッハッハ!」
「・・・・・・」
ノーコメント!まさかの言葉のキャッチボール拒否!?
泣くぞこのやろう!
まあ、泣くわけないんだけどさ。
そうすると、聖女が喋り始めてくれた。
「・・・あなた」
「へっ?」
「・・・私が誓約を立てたのは・・・あなた」
「それは―――」
「―――聖女様ッ!!」
どう言う意味か、とは言えなかった。
司祭の横にいた神父が、話しかけてきたから。
「聖女様!なぜそんな素性もしれない若者に誓約など・・・今ならまだ取り消せます。さあ、今すぐこちらへ!」
おお、神父さんが代わりに聞いてくれたみたいだ。聖女の方は神父の言葉は聞こうとしていないが。
どうやら、このセリフとポーズは誓約というみたいだ。
それにしても・・・
「・・・誓約?」
『神官の間で行われる儀式みたいなものです。今、聖女が行ってるのは、滅多に行われることのない最上位の魂をかけた誓約ですからね。そりゃ、神父も焦りますよ』
横から、アテネが説明してくれた。解説係がいるのって楽だね。
アテネの話からして、その滅多に行われない魂をかけた誓約とやらを、素性もしれない若者に行なっているから教会は焦ってるみたいだ。
・・・とりあえず、俺はどうすれば・・・。
「―――ハハハッ!聖女様も冗談がうまい。さあ、相手を間違えております。こちらですよ」
金髪がやっと硬直からとけたのか、聖女に話しかける。
さっきから、やたらと図々しいなあいつ。
「・・・・・・」
しかし、聖女は何も答えない。いや、無視してるのか?
そんな様子を感じ取ったのか、金髪は顔を真っ赤にさせて睨んできた。
―――俺を。
「貴様っ!いかなる手段を用いて俺の聖女を誑かした!」
って、なんか俺悪者みたいになってるし!
何もやってないし、誑かしてなんかいないし、最後の方『俺の聖女』とか、別にお前が選ばれたわけじゃねえだろう―――って突っ込みどころが多すぎる!
「ち、違う!俺は何も―――」
「黙れ!衛兵!こいつを捕えろ!」
金髪がそう言うと、衛兵が槍を構えて、だんだんと近寄ってくる。
ギャアアアッ!!まさかドしょっぱなからの牢獄エンドですか!?
捕まっても逃げるけど。
とにかく、衛兵は前にしかいないし幸い後ろは出口だ。走行破壊兵器|(自転車)を使えば一瞬で逃げることができるだろう。
この世界の人たちのスペックがわからないから一概には言えないけど、衛兵も前に出会った暴走護衛騎士よりは弱いだろう。
てかあれより強かったら、あの暴走護衛騎士の国はもう滅びているだろう。
護衛騎士は、普通の兵士より強いのが相場だし。
どのタイミングで逃げるか、見計らっていると、司祭の爺さんが周りに一喝をいれた。
「待て!聖女は自らの意思で誓約をした!これを妨げることはしてはならん!」
「し、しかし、聖女様はあの者に操られているのでは・・・」
「聖女には、魔法は効かない。それを忘れたか?」
「・・・・・・っ!す、すいません!」
何そのチートスキル。
バランスブレイクすぎるだろう。
『スキルじゃありませんよ。単純に、神力が強すぎて魔法は中和されてしまうだけです』
「・・・それでも強くね?」
『その中和を上回るほど魔力を込められた魔法には勝てませんし、そもそも魔法を無効化と言っても、魔法による水や土の攻撃等の物理系は消すことはできません。その程度の能力でしかないんですよ』
「・・・なるほどな」
『まあ、あれだけ神力あれば、大抵の魔法は防げるでしょうけどね。それよりいいんですか?』
「・・・?何がだ?」
『私の姿は、普通の人には見えないんですよ?』
「は?それがどう―――」
「さっきから何をブツブツ呟いている!盗人が!」
しまった!これじゃあ金髪の言うとおり危ない人じゃん俺!
「大司祭!これは、明らかにおかしい!選定の儀式のやり直しを要求する!」
「だから、ならんと言っている。我々は、聖女の意思を尊重しなくてはならん」
「し、しかし・・・」
なおも食い下がる金髪。
ちなみにあと二人の方は、青い方はこっちを睨みつけており、赤い方はわからないが、雰囲気からして諦めてる模様。
それにしても、あの人さっきから雰囲気暗いな・・・。
「・・・わかりました」
おお!何か知らんが金髪も納得したみたいだ。俺はさっぱり状況を理解できないが。
金髪は、一度聖女を見てからこちらを睨んで剣を取り―――って、え?
「―――決闘をしろ!」
おおい!まったくわかってねえじゃねえか!
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そんなこんなで、大司祭や他の神父も金髪の提案に納得したところで、決闘が始まった。
俺は何も聞かされてないし、納得もしてないけどね!
ルールは簡単。
勝利条件は、相手が降参するか、相手を気絶させること。
一対一で青髪、赤髪、金髪と順番に戦い、全員と勝てたのならばその強さを認め、聖女を連れていくことを認める、だそうだ。
別に俺は聖女は欲しくないんだけどな・・・。
普通の神官でいい、なんて今言ったら教会全体を敵に回しそうなので、俺は諦めておくとしよう。
あの大司祭とか、親馬鹿っぽいし。
まあ、連れて行って損は(少ししか)無さそうだし。回復役は、強いに越したことはないだろう。
そんなわけで、決闘開始。
先方、青髪の男。名前は・・・確かゲラーだっけ?
「くっくっく。俺に立ち向かうとは馬鹿な奴だ・・・。まさか、俺の名前、知らないのかい?」
「いや・・・確かに知らんが・・・」
この世界来たばっかしだし、まだ二日しか経ってないし。
「知らないなら教えてやろう!俺の名前はゲラー!―――”蒼氷のゲラー”だ!」
そう、ゲラーが言った瞬間、周りの観客が騒ぎ始める。
えっ、そんな有名なのこいつ?どうみても、序盤で死にそうな山賊Aとか、その程度の名前しかつきそうにない顔なんだけど。
『まさか・・・あの〔オーク〕の三十匹切りの冒険者ランクAのゲラーか?』『違いねえ・・・。あの青い全身鎧に、青い髪・・・魔法剣士のゲラーだ』『あの青い全身鎧は、確か危険区域の〈蒼氷の針森〉の、蒼紺鋼だったか?』『嘘だろ?あの金属は、中層に行かないと採れない貴重金属のはずだ。そんな金属をあんなに大量に使った鎧なんて勝てるわけねえじゃねえか』
周りの観客が頼んでいないのに、解説をしてくれる。便利だね。
それより、さっき言っていた『蒼紺鋼』ってのが気になる。
今度はどんなびっくりアイテムなんだ?
『別にそこまですごいもんじゃありませんよ。せいぜい、ちょっと壊れにくくて氷結系統の魔法が強化されるだけです』
すかさず入るアテネの解説。だから、心を読むのはやめて欲しい。
『こっちのほうが、周囲から怪しい目で見られませんよ』
人生妥協というものも大切だな。
「では、えっと・・・」
「あ、俺の名前はリュージでいいですよ」
「わかりました。では、リュージさんは武器を貸し出しますのでこちらに・・・」
「ああ、武器なら大丈夫です―――ほら」
そう言って、右手から魔剣を取り出す。
『・・・っ!おいあれって、まさか・・・』『魔剣・・・なのか?』『おいおい・・・魔剣で戦う気かよ』『こりゃあ、見るまでもないな』
周囲の観客が、再び騒ぎ始め、審判役の神父とゲラーはあんぐりと口を開けて呆けている。
あ、あれ・・・?なんかまずかった?
突然変わった空気にビクビクしていると、ゲラーは大声で笑い始めた。
「クックック・・・ギャハハハ!まさかお前!魔剣使いだったとはな!こりゃあいい勝負になりそうだ!クックック・・・」
えっと・・・どう言う意味?
『魔剣使いは、魔剣自体に問題がある場合が多いのであんまりいないんですよ。それに、仮に魔剣を使いこなすといっても、強力な魔剣ほど呪いも強くなっていきますからね。魔剣使いってのは大体が名も無いような鈍らしか人間には使えないので、魔剣使いは世間的に見れば雑魚なんですよ。使い道といったらファッションぐらいなものですね』
この世界の人間はファッション感覚で、魔剣を身に付けるのか?
確かにデザインは悪くないけど・・・。
まあ、そんな疑問はどうでもいいとして、どうやら俺は客観的に見れば雑魚に見えるというわけだ。
正直俺もそう思う。運動もそこそこ得意で、喧嘩もあまり負けたことのないと言っても、死ぬか生きるかの毎日を送っている人たちに比べれば、どうしても劣ってしまうものだ。
だが、事実だとしても舐められたままでいられるのは―――気分が悪い。
ならば覆してはどうだろうか?
その間違った予想を。
「じゃあ、遺言はねえよな?魔剣使い」
「そっちこそ」
「はっ、一瞬で肩をつけてやるよ!『それは、凍てつき散る氷の造花。咲き誇れ!”氷の薔薇”』
ゲラーが呪文を唱えると同時に、手のひらから頭ぐらいはありそうなサイズの魔法陣が展開され、その中から大きな薔薇と、六本のムチのような茨が出てきた。
『あ、あれは!』『”氷の薔薇”じゃねえか!ゲラーの奴、最初ッから本気だ!』
どうやら、あの魔法は氷の薔薇と言って、あの薔薇の部分が盾となり、茨の方を鞭として戦うスタイルらしい。
飛来する氷の茨、棘の部分がでかく、カスリでもすれば瞬時にその部分の肉をもっていかれるだろう。
俺はそれに対し、ただ剣を振り下ろしただけ。
そう―――魔法を喰らう魔剣を。
魔剣と茨の鞭が触れた瞬間、氷の薔薇自体に込められた魔力を魔剣が吸収、魔法陣は魔力を失ったため消えていき、魔法自体が消去された。
魔法とは、車風に解釈すると、エンジンにガソリンを注いで、運動エネルギーを発生させる感じ。
この中で一つでも欠けているものがあると、魔法はとたんに発動しなくなる。
今回は、その中の魔力を奪った感じだ。
「・・・・・・は?」
魔剣の能力を理解している俺にはわかるが、なにも知らないゲラーや観客にとって魔法が消えるという非常事態。
皆、誰もがその光景に硬直してしまった。もちろん―――ゲラーも。
その隙を見逃す俺ではなく、瞬時に間合いを詰め、剣の平の部分で一撃。
ゲラーはあっけなく、気絶。あまりの光景に審判も唖然としている。
「審判、宣言を」
「・・・はっ。しょ、勝者、リュージ!」
審判が戸惑いながらも勝敗宣言をし、歓声は飛び回る。
どうやら、さっきの魔法消失現象は、ゲラーの魔力の注入忘れということで納得したみたいだ。
そんな中、人ごみがモーゼの十戒のように二つに分かれていき、次の対戦相手が入ってきた。
次の相手は―――金髪だった。
あれ?確か次の相手は、赤髪だったような・・・。
「”赤の狩人”ファイレーン様はこの決闘を棄権されたので順番を飛ばし、対戦相手は”金の英雄”サラン様になります」
どうやら、そういうことらしい。こっちの剣は理不尽の塊だしな。狩人の勘で気づいたか。
それにしても、さっきから二つ名がやたらと痛い。誰だよこんな名前つけてる奴。
控え室から出てきた金髪―――サランは、やたらと高圧的に話しかけてくる。
「ふん、逃げなかったのは褒めてやる。だが、この俺に逆らったことは失敗だったな」
「・・・・・・」
金髪は、一人演説みたいに喋りつづける。
「俺は由緒正しきサラン家の長男バスフール・サランにして、天から選ばれし勇者だ。平民ごときが俺に話しかけてもらえるだけありがたいと思えよ」
『天から選ばれし勇者』、そこのところで周りにいた観客が息を呑むのがわかった。
どうやら、勇者とは教会から信託を授かり、初めて正式に勇者と名乗れるらしい。
そして、勇者の称号を持つ者は、その名にふさわしい特殊な能力を授かるとかなんとか。
「だいたい、この勝負自体が間違っているんだ。たかが平民と俺じゃ、お話にすらならないよ。ほら、今すぐ俺に謝りたまえ。『分をわきまえずすいません』とな。そうすれば、俺も鬼じゃない。この寛大な心でお前の無礼を許してやらんこともない」
「・・・・・・」
・・・さっきからやたらと死亡フラグを立てるなこいつ。
いや、噛ませ犬フラグか?
「はっ!怖気ついて、声すら出せないか!」
「・・・・・・」
まさか。
お前のセリフの馬鹿さ加減に呆れてるだけだよ。
と心の中で言っておく。現実に言ったら、どんな報復が来るかわからないからな。
いちおうこいつも大貴族みたいだし。
「・・・いいだろう。こちらの善意を無視するというなら、俺にも考えがある。その罪・・・命で償え!」
「ハア・・・」
思わずため息が出てしまう。・・・今のどこに善意があったんだよ・・・?
そう聞きたかったが、それより先に金髪が襲いかかって来てしまった。
しょうがない、さっさと終わらせるか。
迎え撃とうとすると、金髪は急に剣を掲げ出した。
「おい平民。目に焼き付けておけよ。平民には二度と見ることの出来ない景色だからな」
そう言うと、金髪の周りに光の玉みたいなものが集まり始め、剣に吸い込まれていく。
あまりにも隙だらけの光景だが、変身ヒーローが変身中は攻撃をしてはならないのが鉄則。
別に変身はしてないが、同じようなものだろう。
そうして、少し待っていると、剣が突然光り輝き始めた。
その中から出てきたのは豪奢な飾りが施された一本の剣。
金髪はそれを振りかぶり、大声で叫んだ。
「これが天に選ばれしもののみが使える武器―――聖剣エクスカリバーだ!!」
・・・マジで?
アテネに尋ねてみる。
『ええ一応聖剣ですよ。ただし、模造品の劣悪品ですけど』
つまり、偽物らしい。まあこんな序盤で見つかるわけないよね。
そんなことは露も知らない勇者|(笑)は聖剣をかかげ襲いかかってきた。
「その薄汚い魔剣共々切り捨ててやるわ!」
「ふん!」
金髪が降り下ろした聖剣を、魔剣を横にして防ぐ。
鍔迫り合いの中、効くかどうかはわからないが、魔剣反則能力その四を発動。
「”侵略を開始する”!」
そう俺が唱えると、聖剣は一瞬で―――錆剣へランクダウンした。
俺が発動した能力は、《強欲の侵略》。その能力は相手の武器を錆びさせ、さらに能力を解除することにより破壊をすることができる。
俺が発動を止めると、元聖剣は端からポロポロ崩れていき、全てが錆クズとなってどこかに消えていった。
自分の切り札を消され、呆然としている金髪。
ゲリーと同じように剣の平の部分で殴り、気絶させた。
「・・・しょ、勝者、リュージ!」
審判が勝敗宣言を行い、決闘は終わりを迎えた。
悪目立ちしすぎたか・・・?
かなり悪目立ちしまくったリュージ!
そして、聖女と旅するのはどんな感じになるのか!?
それは、作者にもわからない!(ストック切れ)
次回はいったいどうなるのか?
あ、後魔法の説明は次の回に入れようと思っています。
訂正
・ゲラーのランクをAに訂正しました。
・『あんなけ』を『あれだけ』に訂正しました




