十三話 結局・・・
テストが終わったんで少し遅れました。
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「そういや、聞きたいことがあるんだが・・・」
『?なんですか?』
「ほら、姫様を助けたあと、護衛騎士に盗賊の仲間扱いされて襲ってきたじゃん?」
『確か、そうでしたね。・・・自分で言っていて悲しくないですか?』
「後で復讐するから問題なし」
孔明も真っ青なトンデモ計略にかけてやる・・・。
黒い笑みを浮かべる俺を、アテネは呆れたと言わんばかりの目で見ている。
『おかしな所で、決意を固めるのはいいんですが・・・それが、どうかしたんですか?」
「いや、あの護衛騎士。なかなか腕は良かったよな?」
『そうですね・・・。昔戦った魔王が、使役していた黒騎士ぐらいですかねぇ』
「いや、その基準はわからんが・・・なんで俺は、そんな奴と互角以上に戦えたんだ?」
そう、今回の疑問点はここ。
俺は、ゲームをこよなく愛する廃ゲーマーだ。
不良によるオタク狩りを何度も返り討ちにしてきたと言っても、所詮そこらのチンピラよりは少し上というレベルだ。
この争いの絶えない世界(元の世界もだいたいそうだが)の騎士と比べては、チンピラは底辺もいいところ。
そんな、底辺に勝てるだけと言うレベルの俺が、何故、あいつと打ち合えたのか?
『そりゃ、あなたの世界は一応この世界の上位世界ですからね。いくら人間でも上位世界から来たのならば、そこらの騎士には負けることなんてありえませんよ。それだけ世界の差というものは大きいのです』
「なるほど・・・」
つまり、天界から落ちてきた天使や、地獄から這い上がってきた悪魔が、下っ端でもやたら強い設定なのは、そのせいか。
『いえ、それは単なる種族の地力の差です。・・・と言っても、あなたの場合は、さらに特殊なんですけどね』
「・・・?どう言う意味だ?」
『決まってるじゃないですか。あなたの手にある魔剣ですよ』
そう言って、俺の右手の魔剣を指さす。
名称不明、出所不明、一部効果不明、の三拍子揃った、素敵なアイテムだ。
「・・・まだ何か、能力があるのか?」
『そんな嫌そうに聞かなくても・・・』
「何言ってるんだよ、どうせまたキチガイ能力にひっついて、トンデモ呪いかなんかがあるんだろう」
『前に説明したものとは別系統なので問題無いですよ。その剣についている錆は、デフォルトの場合全て、今まで剣が殺してきた血によって、構成されています』
どうしよう、今すぐ魔王を倒す旅じゃなく、魔剣を壊す旅に出かけたくなってきた。
殺した血でできてる剣なんて、正直触りたくもない。
『もちろん、その血は多種多様の生物の血により構成されていて、その中には、英雄と呼ばれるものの血もあれば、天災と呼ばれるほど強力な魔物の血も入っています』
「・・・つまり、何が言いたい」
『その剣の常時能力で《重ねられた豪血の戦歴》というものがありまして、剣でその生物を殺す、いえ、剣にその生物の血を吸わせることによって、その生物の身体能力を何分の一か、持ち主に付与することができるのです』
「・・・・・・えっ、なにそのチート能力」
あまりにも、強すぎね?
ネットゲームだったら、掲示板に抗議の嵐が起こるだろう。副作用もないし。
でも・・・
「それだけ能力があっても、剣を小さくする能力はないんだな・・・」
そう、《嫉妬の執着》は刀身を大きくすることはできても、短くすることはできなかった。
『・・・?なんで小さくする必要があるんですか?』
アテネが、心底不思議だというような顔をして、問いかけてくる。
そんなこと決まってるだろ?
「・・・血でべったりの剣携えて、今から行く〈教国〉とやらに入れるのか?」
『・・・そういや、無理ですね』
明らかに異常者か不審者。憲兵か衛兵が、風の早さでやって来るだろう。
「せめて、鞘でもあれば・・・」
『ありますよ』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」
今、こいつは何を言ったのだろう。
アテネは、俺が聞こえていないと思ったのか、もう一度繰り返した。
『だから、ありますよ。鞘』
「・・・オーマイガー」
今まで俺が悩んでいたことって・・・。
『落ち込むのはいいですが、聞きたくないんですか?』
「是非、聞かせてもらいます。ミス・マドモワゼル」
ちなみに、後半はなんて言ってるのか自分も知らない。
『・・・まず、剣を左手に持ち替えてください』
「えっ、手から離れないんじゃ―――あっ、離れた」
どうやら、刀身のどこかが素肌に触れれていれば、いいらしい。
アテネは、驚いた俺をおいて、説明を続ける。
『次に、右手を前に突き出して』
俺は、アテネに言われる通り、右手を前に伸ばす。
『剣を振りかぶって』
左手の剣を、振りかぶり。
『右手に、突き出す!』
「えい♪―――って、出来るわけねえだろ!」
一瞬乗せられかけたよ!巧みな話術に唆されそうになったよ!
『まあ、冗談は置いといて―――剣を右手の甲に押し付けてみてください』
アテネの言われたことを半信半疑で実行すると、右手の甲に剣が吸い込まれていき、そのあとに、真っ赤な色で描かれた、剣の紋章が残っていた。
「・・・これは?」
『魔剣の契約者の証です。後は、呼び出したい時に、意識すれば出せますよ。仕舞うときも、一緒です』
「おおっ、これは便利だ」
何度か、手の上で召喚したり、収納してみたりする。
持ち運びが便利でいい。
『さて、では早く出発してしまいましょう』
「いや、待ってくれ」
出発しようとするアテネを止める。
『?まだ何かあるんですか?』
「ああ―――なんで〈教国〉に行くんだっけ?」
『あれ?私、言ってなかったでしたっけ?』
「ああ、そうだな。俺がお前に渡された魔剣について聞いたせいで、話がシフトムーブしちまって、その話を聞いて俺がキレて、あれやこれやに盗賊と殺し合いをしてきたからな」
『・・・悪かったですね―――って、何も私は悪くないじゃないですか!』
「元はと言えば、お前が説明すっぽかしたからじゃないか」
『でも今回の件については、なにも私は関与してないじゃないですか!』
「ああそうだな」
『認めた!?認めちゃいましたよこの人!」
今日も二人は仲良しだ。
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『・・・〈教国〉では、神官や治療師を、育成しているんですよ』
つかの間の漫才も終了し、アテネは本題に入った。
「神官と治療師か・・・いったいどんな職業なんだ?」
『神官は、聖術の行使を主にしており、治療師は、魔法による治療を主として教育されています』
・・・また新しい、単語が増えたよ・・・。
「なんだよ、聖術って。神様でも降ろして戦うのか?」
『それらの術は、神の許可無くしては発動しませんよ。もし発動できたならば、禁術の類です』
・・・いつか、俺をここに送り込むことを決めた神に使うのもいいかもしれない。
『物騒なこと考えてないで下さい。あまり、失礼なことを企てると天罰が下りますよ』
「・・・ちっ」
さすが、心を読めるだけある。全てお見通しのようだ。
だが、ここで諦める俺ではない。いつか、必ずや、この手で復讐を・・・。
そんな黒い俺を放置し、アテネによる説明は続く。
『・・・聖術というのは、魔法と似たようなものです。この世界では、何十人に一人の確率で攻撃魔法使える魔力を持った人間が生まれます。魔力は、魔法を使うための原料のようなものですが、魔力では、聖術は発動しません』
「じゃあ、どうやって使うんだ?」
『簡単なことです。神力というものを使うんですよ』
『魔』と対抗して『神』か。安直だな。
『考えたのは、人間ですよ。神力も魔力と同じように生まれつきのものですが、ただ神力は、魔力と決定的に違うことがあります。それは―――確率です。神力を持った子供が生まれるのは何千人に一人という極めて稀な確率でしか生まれません。年によっては、ひとりも誕生しないということもあります。まあその希少な分、使える聖術も全て強力のものが多いですし、神力を持った子供が生まれた家庭は、くにによって支援を受けられるそうですよ。もちろん、子供は強制的に〈教国〉の教育機関に連れて行かれますが』
「・・・それだと、親は拒否する者もいるんじゃないか?」
なんてったって、子供が連れ去られて行くんだから。
『たまにそういう親もいますが、大抵の親は喜んで国に渡しますよ。それだけ、国から受けられる支援も魅力的なものも多いですし』
「・・・まるで、人身売買だな」
口を歪ませる俺に、アテネはしょうがないというように手を振る。
『奴隷よりは何倍も待遇はいいですよ』
「そういう問題じゃないんだがな・・・」
・・・そうだ。そんな便利な術があるなら・・・。
「俺には使え―――『魔剣にほとんど喰われてるので無理ですね』―――たらいいなと思うときも僕にありました。こんちきしょーー!」
膝蹴りを、魔剣に八つ当たり気味にぶつける。
あまりの痛さに、しばらく転がった。
か、硬ぇ・・・。
『・・・で、結局〈教国〉に行く理由ですが、その神官か治療師目的ですね。回復役がいたほうが、旅もはかどるでしょう』
「確かにな」
ボス戦で、最後まで役に立つのは回復役だ。
主要メンバーが死にそうな時とか大活躍だった。何故かボスも一緒に回復した時はイラっとくるが。
『丁度、今の時期は修行のため、旅に出るものも多いはずです。さあ急ぎますよ!』
「お、おい待ってて!」
勇者と、女神は急ぐ。
そこが、世界の分岐点と知らず。
『そういえば勇者』
「ん?どうかしたか?」
『別にわざわざ走らなくても、その剣で乗り物でも作ればいいんじゃないですか?』
「・・・・・・その発想はなかった」
ちょっと、ショートストーリーみたいなものも作ってみました。
次は新キャラがでます。




