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十一話 鉄ハリセン

ちょっとおかしな表現がいくつかあるかもしれません。


お気に入り登録ありがとうございます!

 なぜ、竜地は鎧を持っているのか?

 その答えは、秘められた力が解放されその力が鎧の形になった・・・というわけではなく、もちろん竜地の持つ魔剣の能力である。


 魔剣の能力、《嫉妬の執着》には大まかに分けて二つの能力がある。


 一つは、強力な接着による刀身の破壊不可


 もう一つは、刀身に空気を接着―――いや、『酸素』を接着させることにより刀身が急激に酸化し錆が発生、それで剣の形状を変化させることのできる能力だ。


 しかも、その力で生みだされた錆にも破壊不可は付いているので、どれだけ細い細剣(レイピア)にしようが、どれだけ柄の長く先端が重い槌にしようが折れることはないのだ。

 無茶な形状にすれば、その分自分も扱いづらくなるが・・・。


 そして今回は、『相手に正体をバレたくない』と『できるだけ安全に戦いたい』ということで竜地が思いついたものは、錆による全身鎧(フルプレートアーマー)だ。

 もちろん、この全身鎧(フルプレートアーマー)にも《嫉妬の執着》はついているので、壊されることは決してないし、うっかり外れることもない。

 衝撃だけはしっかり通るが。


 そんな数々の安全対策があったからこそ、竜地は戦場に出ることができたのであった。




■□■□■□■□■□■□■□




『キング・オブ・ヘタレですね』


「―――黙れ。今いいとこなんだから」


 勇気を振り絞って、頑張ってきたのにそれを否定し続けるアテネ。

 安全装備の何が悪い!命あっての冒険だろう。

 それに、盗賊とはいえあくまでも”人間”だ。

 殺さないように、とか考えて後ろから刺されました。じゃあ、笑い話にすらなりやしない。


「八っ、ハハハハっ!不審者だぁ?馬鹿なこと言ってんじゃねえぞ!こっちは十人いるんだ。テメエみたいな奴が勝てるわけねえだろ!野郎ども!あいつをぶっ殺せぇっ!!」


 うん、それ死亡フラグだと思う。

 なんてわかりやすい悪役、まさにテンプレだね。

 しかし、そんな悪役でも殺すのは流石になぁ・・・。

 なんか末代まで祟られそうだし。いや、祟られるのは美少女限定。おっさんに枕元立たれてもこれっぽっちも嬉しくない。


「おらっ!死ねぇ!」


 そんなことを考えていたら、いつの間にか目の前に盗賊――Aでいいや――盗賊Aが迫ってきていた。

 それにしてもどの形状にすればいいか・・・そうだ!

 

「”形状変化(モード)―――」


 やっぱりこれだろ。伝説の武器その名も―――。


「―――ボケ殺し(鉄ハリセン)”!」


「へぶらっ!」


 ボケ殺し(鉄ハリセン)が盗賊Aの顔面に命中。そのまま、五メートルくらい飛行する盗賊A。

 流石ボケ殺し(鉄ハリセン)。やっぱり威力が違うね。


「なっ、剣の形が!?」


 盗賊の側で、驚く姫様(仮)。盗賊はあまりの光景に呆然としています。

 まあ、いきなり変われば驚くよね。俺もびっくりしたもんだ。


「あ、あんなもんハッタリだ!数で袋にしちまえ!」


 盗賊リーダーがうろたえながらも、指示をとばす。

 そうすると、残る全員――盗賊リーダーを除く――が襲いかかってきた。

 いくら安全対策はバッチリでも剣が当たれば痛い。

 広範囲を攻撃するには・・・あれがある。

 

 魔剣を、地面に刺す。


「”形態変化(モード)―――」


「おいおい、諦めたか!?だが残念だったな、もうテメエに生き残る道はねえんだよ!」


 その動作が、降伏のポーズに見えたのか、盗賊リーダーが吠える。


 俺はフルフェイスマスクの中で笑う。


 さあ、この攻撃を放ったらあいつはどう吠えるのだろうか。

 そして俺は、それを放った。

 

「―――剣の軍勢(ソードソルジャーズ)”」


 瞬間、九つの紅い花が咲いた。




■□■□■□■□■□■□■□




〈side レミア〉


 私は、とんでもない人に助けを求めてしまったのかもしれません。


 最初に来てくれた時は、とても嬉しかったです。

 でも、それはすぐに恐怖に変わりました。

 わたしの声を聞いて助けに来たあの人が、死んでしまうのでは・・・と。

 あの鎧についた血からみて、弱いということはないでしょう。

 しかし、いくらなんでもこの数では多勢に無勢です。

 一対一ならば負けることはないでしょうが、この数では私の騎士でも無理でしょう。

 

「おらっ!死ねぇ!」

 

 盗賊の一人が、不審者さんに突撃していくのが見えます。

 しかし、不審者さんは動きもしません。


 ―――危ない!


 そう叫びそうになりました。

 しかし、私の考えていたこととは全く別のことが起こりました。


 剣の形が・・・変化したのです。


 突然の変化についていけず、突撃していった盗賊はあっけなく吹っ飛ばされていきました。


「なっ、剣の形が!?」


 思わず口に出てしまいました。

 

 剣の形を変えた魔法―――形状変化の魔法は無属性系統の最高術式です。


 仮にできるのだとしても、あんな一瞬で発動する事はできません。

 わたしの国の魔法師全員を動員しても、一日はかかるでしょう。

 それを、あの不審者さんは一瞬でやってみせ、しかも動きが鈍くなっていたとはいえあの体制から盗賊を吹っ飛ばした力や技量も含め、あの不審者さんは相当な高位な魔法師にしてかなりの腕を持つ戦士なのでしょう。

 横にいる盗賊たちも、同じことを考えているのか、口を大きく開けています。


「あ、あんなもんハッタリだ!数で袋にしちまえ!」


 しかし、腐っていても盗賊、盗賊には数の利というものがあります。

 全員で一斉に攻撃されては、あの不審者さんでも防ぐのは無理でしょう。

 しかし、不審者さんはさらに訳のわからない行動に出ます。


 剣を、地面に突き立てたのです。


 あれは、どうみても迎え撃とうとしてるようには見えません。

 あまりの戦力差に絶望してしまったようにしか、見えません。


「おいおい、諦めたか!?だが残念だったな、もうテメエに生き残る道はねえんだよ!」


 またもや、私とおんなじことを考えたのか、盗賊リーダーが吠えました。


 あと少しで、不審者さんにたどり着くそんな時にそれは起こりました。


 地面から、無数の紅い剣を持った腕が生えたのです。


 盗賊は、離れた場所にいるリーダーを残し、全滅しました。

 

 そして私は気づきました。

 あれは魔法武器(マジックアイテム)なのでしょう。それも神装具級(アーティファクト)の。

 それならば、納得はできます。

 しかし、そうすると新たな疑問が更に浮かび上がってきました。


 この人は、誰なのでしょう?


 神装具級(アーティファクト)はたった一つで、国がまるまる買えるレべルの秘宝です。

 見つければ、全世界に名が知れ渡るレベルです。

 なのに、こんな強力な神装具級(アーティファクト)は聞いたこともありませんですし、それを見つけた人に関しては聞いたこともありません。

 なのにそれをこの不審者さんは長年使ってきた武器のように軽々と使いこなしました。

 なぜ、これだけの人ことが知れ渡ってないのでしょうか?


 そんなことを考えていたら、不審者さんが近づいてきていました。


「な、なんでしょうか」


 声が少し震えてしまいまいした。


「怪我はない―――」


『姫様ぁぁぁぁぁ!!!』


 彼が何かを言おうとした時、聞き慣れた声が聞こえました。

  

 振り返って見えたのは、大急ぎでこちらに向かう私の騎士の姿でした。

次はちょっと遅くなるかも・・・。


二作品同時にすすめるのはきつい・・・。

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