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十話 通りすがりの不審者

ユニークがいつの間にか1500に!

いつも見ていてくれてありがとう!

 森からすぐ出た場所、そこが悲鳴の発生源だった。


『これは大変です!どこの誰かは知りませんが、盗賊に襲われていますよ。助けてあげませんと。そうでしょ?勇者?』


「明らかに棒読みのくせに、口調もおかしくなってんじゃねえか」


 どう考えても逃げようとしてるとしか、考えられない。


『しかし、いいんですか?早く助けないと死ぬか、心に一生消えない傷が残りますよ?

ゆ・う・しゃ・の・せ・い・で』


「このやろぉ・・・!」


 決して逆らえない痛いところばかり突いてくる。

 自分のせいでだれかが傷つくってきついもんだ。主に罪悪感で。


「わぁーたよ!行きゃいいんだろ!行けば!」


『それでこそ勇者!本当に使い勝手がよくて助かります』


「他人事だと思いやがって・・・」


 なんだかんだ言って見捨てられない、そんな勇者でした。




■□■□■□■□■□■□■□




 襲われていたのは、やたらと豪華な馬車で、襲っていたのは、見るからに悪人顔をした盗賊だった。

 かなり長いこと戦っていたのか、馬車は扉が片方なく、屋根の部分は矢によって独創的なものになっていた。

 それにしても・・・。


「やめてくれよ・・・どう考えてもフラグじゃねえか・・・国家タイプの・・・」


『しょうがないです。諦めてください』


 いやだって・・・どうみても助けたら国に連れて行かれて、士官させられる未来が待ってそうなんだが・・・。

 だって、ほら、馬車の上にたなびいてるもの、王家っぽい紋が描かれた旗が。

 周りの兵士の装備も、なんかキラキラしてるし。

 扉の中から、王女様らしきものが見えてるし。

 これで、実は商人だったら詐欺だよ。間違えなく訴えるよ。俺が。


「・・・なんか変装できるもの持ってないか?」


『その右手にある剣を使えばいいじゃないですか』


「・・・はっ?」


 ついにアテネが壊れました。剣で変装なんか出来るわけねえだろ。いくら魔剣といったて・・・て、もしかして・・・。


「まさか・・・《嫉妬の執着》か?」


『やっと気づきましたか。《嫉妬の執着》はあらゆるものをくっつける能力です。そしてそれをうまく使えば・・・』


「わかった、わかった!・・・これならいけるな」


 これなら、顔もバレることなく助けることができる。

 フッフッフッ、完璧だ、完璧な作戦だ。


『あのー勇者?』


 むっ、折角いい気分を味わっていたのに。


「勇者言うな。で、なんだ?」


『馬車は、ほっといてもいいんですか?』


 馬車を見ると、盗賊に追いつかれて襲われている姿が・・・。


「って、ヤバ!行ってくる!」


『はいはい、頑張ってくださいね』


 俺は、そんな声援を聞き流しながら、大急ぎで向かうのだった。




■□■□■□■□■□■□■□




〈side レミア〉


 ガタガタと大きな音をたてながら馬車が走ります。

 それにつられて、揺れも大きくなります。

 いつもだったら、こんなことをしたら私の騎士が、大きな怒鳴り声を上げて、行者を怒っているでしょう。

 しかし、彼はいま、ここにはいません。

 

 盗賊が襲ってきたからです。


 護衛の皆さんも、ほとんどそちらのほうに行ってしまい、今私の近くにいるのは二人だけです。

 さらに、一人は怪我をしていて、肩から血がドクドクと流れています。

 わたしを庇って矢から守ってくれたのです。


 森は、もうすぐで抜けられ助かります。

 森を抜ける前に必ず追いつくと私の騎士が言ってくれたからです。

 しかし、そんな願いも叶いませんでした。


 盗賊に追いつかれてしまったのです。


 二人は必死に戦ってくれました。

 だけれど盗賊は十人います。

 とてもじゃありませんが、手負いの状態で勝つこと等できません。

 二人は切られて倒れてしまいました。

 そしてわたしも外へ引きずり出されてしまいました。


「なかなかの顔してんじゃねえか。流石、王女様だ」


「本当にそうっすね」


「それにしても、随分と手間かかせてくれたものだ。騎士だがなんだかは知らねえが、うっとおしくてしかたがねえ」


「でもまあこれで依頼は成功でしょう。さっさと帰りましょう。兄貴」


「そうだな。おら!行くぞてめーら」


 そう、リーダーらしき人が言い、盗賊は私を連れて、撤収を始めました。


「わ、わたしを誰だと・・・!」


「はいはい、〈ジッダ王国〉の第三王女様でしょう?」


「ならなぜこんなことを・・・!」


「依頼だよ依頼」


「依頼・・・?」


 そんなことを盗賊は言いました。


「そ、お前らが戦争中の〈ヴァンデス帝国〉の方からな。まあ怖がるこったねえ。可愛がってやるよ」


「・・・っ!誰か・・・」


「助けなんか来ねえよ。諦めな。お・う・じょ・さ・ま」


 盗賊は下衆な表情を浮かべ私の手をひっぱっていきます。


「誰か・・・誰か助けて!」


「来ねえっていてるだろ!」


「それがねえ・・・」


 不思議な声がしました。男とも、女とも聞こえそうな声です。

 咄嗟に振り向くと、手の拘束が外れました。

 いえ、切られていました。―――リーダーの男の手ごと。


「ぎゃあああああああああ!!」


「あ、兄貴!てめェ!なんてことを!」


「お前らもやってただろ。お互い様さ」


 そんな、涼しげな声で言う剣士はどこかおかしい感じでした。

 それは、なぜか?理由は・・・。


「一体何もんだ!?てめぇ!」


「見りゃわかるだろ?ただの通りすがりの―――」


 その右手には、血で錆びたような真っ赤な巨剣が握られていて。その体は・・・。



「―――不審者さ」




 血で錆びたような、真っ赤な鎧で覆われていました。

 




次回は、バトル!


更新はちょっと遅れる可能性があります。

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