十話 通りすがりの不審者
ユニークがいつの間にか1500に!
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森からすぐ出た場所、そこが悲鳴の発生源だった。
『これは大変です!どこの誰かは知りませんが、盗賊に襲われていますよ。助けてあげませんと。そうでしょ?勇者?』
「明らかに棒読みのくせに、口調もおかしくなってんじゃねえか」
どう考えても逃げようとしてるとしか、考えられない。
『しかし、いいんですか?早く助けないと死ぬか、心に一生消えない傷が残りますよ?
ゆ・う・しゃ・の・せ・い・で』
「このやろぉ・・・!」
決して逆らえない痛いところばかり突いてくる。
自分のせいでだれかが傷つくってきついもんだ。主に罪悪感で。
「わぁーたよ!行きゃいいんだろ!行けば!」
『それでこそ勇者!本当に使い勝手がよくて助かります』
「他人事だと思いやがって・・・」
なんだかんだ言って見捨てられない、そんな勇者でした。
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襲われていたのは、やたらと豪華な馬車で、襲っていたのは、見るからに悪人顔をした盗賊だった。
かなり長いこと戦っていたのか、馬車は扉が片方なく、屋根の部分は矢によって独創的なものになっていた。
それにしても・・・。
「やめてくれよ・・・どう考えてもフラグじゃねえか・・・国家タイプの・・・」
『しょうがないです。諦めてください』
いやだって・・・どうみても助けたら国に連れて行かれて、士官させられる未来が待ってそうなんだが・・・。
だって、ほら、馬車の上にたなびいてるもの、王家っぽい紋が描かれた旗が。
周りの兵士の装備も、なんかキラキラしてるし。
扉の中から、王女様らしきものが見えてるし。
これで、実は商人だったら詐欺だよ。間違えなく訴えるよ。俺が。
「・・・なんか変装できるもの持ってないか?」
『その右手にある剣を使えばいいじゃないですか』
「・・・はっ?」
ついにアテネが壊れました。剣で変装なんか出来るわけねえだろ。いくら魔剣といったて・・・て、もしかして・・・。
「まさか・・・《嫉妬の執着》か?」
『やっと気づきましたか。《嫉妬の執着》はあらゆるものをくっつける能力です。そしてそれをうまく使えば・・・』
「わかった、わかった!・・・これならいけるな」
これなら、顔もバレることなく助けることができる。
フッフッフッ、完璧だ、完璧な作戦だ。
『あのー勇者?』
むっ、折角いい気分を味わっていたのに。
「勇者言うな。で、なんだ?」
『馬車は、ほっといてもいいんですか?』
馬車を見ると、盗賊に追いつかれて襲われている姿が・・・。
「って、ヤバ!行ってくる!」
『はいはい、頑張ってくださいね』
俺は、そんな声援を聞き流しながら、大急ぎで向かうのだった。
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〈side レミア〉
ガタガタと大きな音をたてながら馬車が走ります。
それにつられて、揺れも大きくなります。
いつもだったら、こんなことをしたら私の騎士が、大きな怒鳴り声を上げて、行者を怒っているでしょう。
しかし、彼はいま、ここにはいません。
盗賊が襲ってきたからです。
護衛の皆さんも、ほとんどそちらのほうに行ってしまい、今私の近くにいるのは二人だけです。
さらに、一人は怪我をしていて、肩から血がドクドクと流れています。
わたしを庇って矢から守ってくれたのです。
森は、もうすぐで抜けられ助かります。
森を抜ける前に必ず追いつくと私の騎士が言ってくれたからです。
しかし、そんな願いも叶いませんでした。
盗賊に追いつかれてしまったのです。
二人は必死に戦ってくれました。
だけれど盗賊は十人います。
とてもじゃありませんが、手負いの状態で勝つこと等できません。
二人は切られて倒れてしまいました。
そしてわたしも外へ引きずり出されてしまいました。
「なかなかの顔してんじゃねえか。流石、王女様だ」
「本当にそうっすね」
「それにしても、随分と手間かかせてくれたものだ。騎士だがなんだかは知らねえが、うっとおしくてしかたがねえ」
「でもまあこれで依頼は成功でしょう。さっさと帰りましょう。兄貴」
「そうだな。おら!行くぞてめーら」
そう、リーダーらしき人が言い、盗賊は私を連れて、撤収を始めました。
「わ、わたしを誰だと・・・!」
「はいはい、〈ジッダ王国〉の第三王女様でしょう?」
「ならなぜこんなことを・・・!」
「依頼だよ依頼」
「依頼・・・?」
そんなことを盗賊は言いました。
「そ、お前らが戦争中の〈ヴァンデス帝国〉の方からな。まあ怖がるこったねえ。可愛がってやるよ」
「・・・っ!誰か・・・」
「助けなんか来ねえよ。諦めな。お・う・じょ・さ・ま」
盗賊は下衆な表情を浮かべ私の手をひっぱっていきます。
「誰か・・・誰か助けて!」
「来ねえっていてるだろ!」
「それがねえ・・・」
不思議な声がしました。男とも、女とも聞こえそうな声です。
咄嗟に振り向くと、手の拘束が外れました。
いえ、切られていました。―――リーダーの男の手ごと。
「ぎゃあああああああああ!!」
「あ、兄貴!てめェ!なんてことを!」
「お前らもやってただろ。お互い様さ」
そんな、涼しげな声で言う剣士はどこかおかしい感じでした。
それは、なぜか?理由は・・・。
「一体何もんだ!?てめぇ!」
「見りゃわかるだろ?ただの通りすがりの―――」
その右手には、血で錆びたような真っ赤な巨剣が握られていて。その体は・・・。
「―――不審者さ」
血で錆びたような、真っ赤な鎧で覆われていました。
次回は、バトル!
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