第八話 紹介
双輝の家は落ち着きのある家だった。中に入ると、銀葉は言葉を失った。部屋が汚いとか、狭い、広いとか、そういうのじゃなくて。一人の黒髪の女性のせいで。
「お帰り、双輝」
「ただいま」
その女性は女とは思えない座り方で、おまけに着ている服が必要最低限、隠すところは隠そう、といった感じになっていた。男性と二人で生活するには少し大胆すぎるような・・・・。
「おかえりー!双輝!」
奥の部屋から一人の子供のような女の子が出てきた。
―子供か!?
一瞬、そんな風に思ったが、父親であろう、双輝の名を呼び捨てで呼ぶことはまず無いだろう。
「んだ?帰ってきたのか? あれ?その人は?巫女様か?」
奥から、また一人出てきた。今度は男だった。やわらかいイメージを感じる人だった。
「いや、巫女様じゃ、ないと・・・思う」
「思うかよ。なんだよ、その自信のなさ」
「少し特別な人なんだよ」
「ふーん」
「紹介するから、全員集合」
双輝がそういうと、奥からまた一人出てきた。今度は物静かな雰囲気でどこか凍てつく感覚になる男だった。
「さて。こちらは、先ほど森で上から落ちてきた銀葉。どうにも、この世界の人間じゃないようだ」
「あれま」
黒髪の女性が言う。柔らかイメージの男性は何か不思議なものを見るように観察していた。
「で、今度は銀葉に紹介」
双輝は一番近くに座っている、柔らかイメージの男性の頭に手を乗せて言う。
「まずはこいつから。こいつの名はガスイ。『芽吹』と書いてガスイ」
「よろしく!」
「よ、よろしく・・・・」
「で、そこのが、ヒコウ。『陽光』と書く」
黒髪の大胆そうな女性を見て言う。
「ちわっす」
「どうも・・・・」
「で、そこの子供っぽいのが『紅葉』と書いてクレハ。最後に、そこの静かな奴が『吹雪』と書いてスイセツ。大体いいかな?」
「テキトーだなぁ」
ヒコウが言う。
「いや、まぁ、とりあえず、ここの世界の人間じゃないみたいだから、このくらいの紹介で抑えておく」
「このくらいの紹介?」
「本当はもう少し言わないといけないことがあるんだけど、ソレは巫女様の判定が出次第、決める」
「そう・・・・」
ガスイと呼ばれた柔らかい感じのする青年が、双輝の前まで来て、耳打ちをしていた。銀葉は自分のことを言われているのか、警戒した。
「いや、今日は・・・・仕事放棄した」
「なぁ!?」
双輝の返答から、銀葉は自分のことじゃないと思い、安心する。
「仕事?」
「いや、なんでもないよ。気にしな」
「双輝!」
「銀葉はまだこの世界のことをちゃんとわかっていない。俺の仕事だって、おそらく理解は仕切れないと思う。だから、巫女様の返答しだいで全て決めるんだよ」
「・・・・」
「あの・・・・」
「ん?」
「皆さんは、どういった関係なのでしょう・・・?」
「それも、巫女様のところから帰ってきてから話そう」
「はい・・・」
巫女。神に通ずる力を有する女性。だからか、とても敬っているようだった。一体・・・何なんだろうか、この世界は。




