第七話 巫女
「さっき、なんていった?」
「え?」
「四季神、って言った?」
「・・・・言ったけど。何か?」
「そう。なんでもない」
ここの世界、どこか違うところであることに間違いないが、四季神を信じていることは変わりないんだと、思った。いや、信じているなんて、そういう問題でもないのかも知れない。双輝は『会った事がある』といっていたから。
「さて。じゃぁ、巫女様に会いに行こうか。少し見てもらったほうがいい」
「うん」
銀葉は双輝の後に続いて、今度はそこそこ立派な造りの家の前に来た。扉の前に男が二人立っていた。
「すまない。彼女を少し見てもらいたいのだが、かまわないだろうか?」
「・・・・アナタなら、イイでしょう」
一人の男がそういうと、扉を開けた。中は広々としていて、そこの中心に不思議な格好をした髪の長い女性が端座していた。簾がかかっているせいで顔まではわからなかったが、何か独特な感じがした。
「あれが、巫女・・・?」
「巫女様な、巫女様。敬称はつけよう」
「はい」
双輝に指摘されてとりあえずそうするべきだと察した。
「巫女様。恐れ入りながらお聞きしたく、参りました。構いませぬでしょうか?」
双輝の態度が明らかに変わった。格好良く、礼儀正しく座る双輝の真似をして必死でよく座ろうとする銀葉だった。
「構いません。話してみてください」
あれ、意外に礼儀正しい答えが返ってきた。偉ぶった口調を想像していたため、どうにも不思議な感じがした。
「そこに居る女性、名を銀葉と申します。どうにも、この世界の住人とは思えないのです。是非とも、貴女様の御力で、見通して頂きたく」
「解りました。やってみましょう。少し時間がかかります。ので、時間が経ちましたらまたお出向き下さい」
「畏まりました」
双輝は一度深々と頭を下げるとさっと立ち上がり、銀葉つれてその家を出た。
「巫女様って、あーいう感じなの?すごい上品」
「全員がそうとは限らない。中にはあまり・・・・その・・・アレだ。その、あの・・・」
「・・・うん。いいよ。わかったから」
「すまん」
「いえ」
双輝は少し焦っているようだった。巫女は絶対の忠誠を約束した存在。決して悪口など、言ってはならない。
「で?私はどうしたらいいかな?」
「うん・・・。嫌じゃないというなら、巫女様の祈りが終わるまでは俺の家にいるか?」
「え・・・あ・・・うん。お邪魔させてもらう」
「変なのが居るが、気にしないでな」
「う、うん・・・・」
変の。少し気になるが、まぁ、問題は無いだろう。