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四季神  作者: ノノギ
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第五十七話 決戦

 相手は霍忌の形をした化け物だ。もう、迷う必要もない。ただ斬ればいい。鬼神を。

 スイセツを刀にして勢いよく前に踏み出す。突然切り掛かったので羅刹も反応が遅れていた。降りかかって羅刹の左肩を斬る。そしてそのまま振り上げる。今度は羅刹も反応し刀で防がれる。双輝は畳み掛けるように何度も刀を振るった。一度刀が大きく後ろへ弾かれた。だが、双輝は腕に力を込めて振り上げる。羅刹の右肩から出血する。羅刹は後ろへ吹っ飛んだ。刀を地面に突き刺しとんだ勢いを殺して地面に立つ。羅刹は構えて突っ込んできた。双輝は踏み込んで刀を前に出す。羅刹はそれでも勢いを止めなかった。一種運それに間を奪われる。羅刹は顔が切れることも厭わず突っ込んできた。羅刹はその勢いを失わないまま刀を双輝へ向けて突き刺してくる。

「くっ・・・!」

何とかかわしたがあまりの勢いとその無謀さに驚いたために右のほほを軽く斬られた。その痛みが普通ではない。かすっただけでここまで痛むということはあの刀に何かがあるかそういう力を羅刹が持っているか、ということになる。

「お前、自分が斬られることも構わないのか?!」

「あん?何言ってんだ?これは俺じゃない。この程度の痛みなど感じないさ」

あまりの桁外れな発言に双輝は刀を握りしめる。雨のせいでぬかるんでいる地面に足がめり込む。

 互いの刀が弾きあう。羅刹は勢いよく横払いに刀を振った。それをかわして双輝も横払いに刀を振る。羅刹はよけようともせず腹部が大きく裂ける。その後も幾度となく刀を振る。重たい攻撃がぶつかり合う。金属音の高い音が空に響いて消えていく。互いに振り下ろした刀が衝突し力の押し合いになる。このままではらちが明かない。双輝は一瞬力を緩めて体制を若干崩した羅刹の体重から逃れる。

 後ろへ大きく下がる。羅刹は未だに笑っている。だが、このままでは本当に埒が明かないと判断したらしく持っていた刀を投げ捨てた。

「何を・・・?」

「もういい。本当ならお前をもて遊んで壊すつもりだったんだが、意外にもお前が強くなっていてね。面倒だからさっさと片を付ける」

右手を前に出して取り出した先ほどよりも数段禍々しい刀。だが、その刀には見覚えがあった。

「それは・・・霍忌の・・・?」

「あぁ、そうだ。この体にはこっちの方が合うだろう?」

その刀を手にした羅刹の力が大幅に上がる。急激な力の変動で怪我の部位から血が噴き出た。

「そんな状態でやる気なのか?」

「何度も同じことを言わせるなよ、双輝。そもそも俺はそれをむしろお前に言いたい。もう一度言う。これは俺ではない。『霍忌』という人間のものだ。そんな躊躇なく斬っていいのか?」

双輝はそれを聞いてわかってはいたはずなのに。手が軽く震えた。

「双輝。何を怯えている?自分を信じろ。銀葉とて己を信じて力を開拓した。お前にだってたやすくできる。聞こえるか、双輝。あの四季剣の悲鳴」

スイセツが言う。双輝の耳に響く苦しむ雑音。

「あの悲鳴が羅刹には聞こえていない。刀と体が同じものでも心とはつながっていない。信じあわぬ者同士共に戦ってもそれは力を損なうだけだ」

「あぁ。己の力しか信じない者にはそれがわからないんだ」

「双輝は、俺が信じられるか?」

「当然だろう、スイセツ。俺は全身全霊でお前を信じる。俺の魂全てをお前にかける。だから、力を貸してくれ、スイセツ」

一瞬だけ、スイセツが笑ったように思えた。持っている手から流れ込んでくるスイセツの力と想い。双輝は肢体からその力を放出させる。羅刹が目を細める。

「まだそんな力が残っているんだな」

「当然だろう。俺はスイセツの力を借りてスイセツと共に戦っている。自分一人でしか戦おうとしないお前にはわからないだろう」

「共に戦う?四季剣と、か。はん!刀は戦うための道具に過ぎない。共に戦うなどとは自分の腕で戦えない負け犬のセリフだろう」

互いに力が増幅していく。大丈夫だ。己を信じて。スイセツを信じて。そして、霍忌を信じて。腹部が痛み出している。先ほど銀葉が施してくれたものだがそう長くは持たないかもしれない。おそらく次の踏み込みが最後になる。双輝は心を決める。今、自分が斬らなければならないのは何か。もうわかりきっているものだ。それだけ。それだけを斬ればいい。スイセツが力を貸してくれる。だから大丈夫。

 互いにぬかるむ地面を蹴り飛ばし泥が宙を舞う。双輝は刀を振り上げる。羅刹は振り下ろす。その二つの刀が大きな力を纏ってぶつかり合った。


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