第五十一話 再会
悲鳴を聞いてそこに駆け付けた双輝はその現状に震えた。急いで怪我人を抱え、四季剣達にも手伝うように言ってその場で動けずにいるものを運んだ。
双輝の見た風景は、あちこちに倒れた村の人々。ぱっと見では半分が怪我で倒れ、残りはどうして倒れているのか見た目だけではわからなかった。しかし、双輝が焦ったのは何もそういうことではない。悲鳴が上がってからすぐに駆け付けたにもかかわらず、この状況の元凶がない。どこにも。
「今はいい・・・。とにかく皆を運んで!この雨に打たせつづけるわけにはいかない」
双輝の言葉に四季剣達が反応し急いで人を運ぶ。
倒れた人達をなんとかして屋内に入れると双輝は外を確認するために扉を開けた。その先には、雨に打たれて立っている男が一人いた。双輝はその男を見て目を疑った。小さな声が漏れると同時に全身が小さく震えた。漏れた声を聞き取って男はゆっくりと双輝の方へ顔を向けた。双輝を視界に入れてか、男はゆっくりとそして不気味に笑みを浮かべた。
「霍・・・忌・・・?」
窓から覗き込むと、この雨の中佇んでいるものがいたことに、銀葉は驚いた。双輝があれほど雨に打たれるなといっているのに、傘もささず立っている。赤褐色の髪が雨に濡れている。そこへ、家の中から様子を見るため双輝が出てきた。銀葉はこれで一安心だと思った矢先、双輝はその男に屋内へ行くように指示した様子はなかった。むしろ固まってしまって言葉を発っせずにいるようにすら見えた。男が双輝の方へ向いた。細かい表情までは見えないが、双輝の様子があからさまにおかしいことだけは理解できた。
「ガスイ・・・何か、双輝が変だよ?」
「え?」
足元で座っていたガスイが腰を上げて窓の外を見た。するとガスイも表情を凍らせた。
「霍忌・・・!」
「えっ!?あの人が!?」
銀葉の言葉はガスイにはあまり届いていないようだった。
焦げ茶色の瞳が楽しそうに歪んだ。双輝は全身の血が止まり凍りつくような感覚に陥った。
「双輝?どうしたの?」
クレハが後ろから双輝を押した。そしてクレハの瞳に霍忌を写して青ざめるのがみえた。そんなクレハの様子を悟って奥からヒコウとスイセツがドアに近寄ってきた。クレハはバネのように跳びはねてスイセツへ飛び込んだ。
「なんだ、クレハ」
「いやっ・・・!あの!お、奥で倒れた人達の様子を見ていよう!?」
クレハが焦ってスイセツを戻そうとした。ヒコウはそんなクレハと双輝の背を見比べた。そしてそっと双輝の背を叩く。
「スイセツを奥へ・・・」
「え?」
双輝すらスイセツを押さえようとしている理由を探るべく、先程から一切動かない双輝の視線の先を見て合点がいった。
あの日の惨劇後、初めて顕現したスイセツと他の四季剣達は交流した。その際はひどく不安定な己の主の身を案じていた。何があったのかは話してくれなかったが、霍忌がいなくなったことを聞いた。その霍忌が原因で双輝の精神が不安定になったということは、言わずともわかった。スイセツは実際にその場を見ているせいか、霍忌に対する敵意は計り知れないものだった。
だからこそ、今スイセツを霍忌に会わせる訳にはいかない。ただでさえ相枦の事で堪忍袋の緒が切れたというのに霍忌に会ったらどうなることか想像も出来なかった。スイセツは双輝の命で奥に行くように言われた以上、それに従わないわけにはいかない。どこか殺気御もった目で扉の向こうを睨みながらクレハと奥へ行った。