第五十話 滅び
村についた時には雨の勢いが増しているような気がした。相枦を屋内に入れて、その小屋に結界を張る。トキほど強固なものではないが、最早それは必要ない。相枦にこの雨の影響を最小限にするためだけのものだ。以前よりも窶れ、皮膚の色も土気色になっていた。髪も白髪が混ざり、この数日で一気に老け込んでまるで老人のようだった。
「生気を吸い取られたみたいだ・・・」
村のものが相枦をみて言った。確かにその通りだった。生きることの気力を感じさせない。まるで息のある人形のよう。一体何があったのか、聞こうにも聞ける状態ではない。
「きた・・・きたんだ・・・このちが・・・ほろびる・・・とき」
虚ろな目で相枦が言った。双輝とヒコウは耳を疑った。この地が滅びる?そんなことあってはならない。あって良い訳がない。
「おいっ!それどういう事だ?おい!」
双輝の呼び掛けには一切応じない。目を見開いてただ同じ事を繰り返し言っていた。双輝は仕方なく立ち上がった。そして、その小屋を出た。
帰ってきた双輝の顔色はひどく悪かった。そしてこの地が危機に瀕していることを聞く。それからガスイにたえず銀葉のそばにいるよう指示していた。ガスイはそれを頷きだけで返事していた。一体これから何が起こるのか。それがわからない故に焦りは駆け足で近寄って来る。不安は耳元で囁いて来る。
村に悲鳴が上がった。双輝は慌てて家を飛び出して行った。銀葉も追おうとしたがガスイに止められた。
「双輝が心配じゃないの!?」
「俺は双輝の四季剣だ!心配しない訳無いだろう!それでも、双輝が銀葉を守れって伝った!危険な行為はさせられない!」
悲痛なガスイの叫びに銀葉は負けた。他の四季剣達は双輝について行っている。この家にはガスイと銀葉しかいない。銀葉は何とも切ない気分になった。こちらの世界からして見れば、自分は勝手に来て勝手に居座って。そして大切な主を傷つけて。それなのにこの世界に何も貢献できていない。それがもどかしくて悔しかった。
「あっ、おい!」
「大丈夫。窓際まで」
「大丈夫なもんかっての・・・」
呆れたように銀葉のあとにつくガスイだった。銀葉はそれを横目で確認しながら窓から外の様子を覗き込んだ。