第五話 待遇
「で・・・?女性の待遇がいいのはどうして?」
「あぁ、そうだったな。女性とは、巫女様になる確立があるし、子を成してくれるのも女性だ。それにか弱く、儚い。なら、大切にして当然だとは思わないか?」
「・・・思・・・・う・・・の、かな?」
「ふーん。世界観が違うからそうでもないのか。でも、俺たちの所では女性はすごく大切に扱われているよ」
「へぇ」
双輝は軽々足早に森を駆けていく。そして、ふと、止まった。目の前は崖だった。下のほうに『村』があった。街じゃなくて・・・村。なるほど。
「あそこが俺の村だ。ここの崖を降りたほうが早いんだけど、いいかな?」
「うん。 ・・・・え?」
「ん? 降りるんだよ。少し衝撃があるかもしれないけど極力無いようにするけど、もし嫌ならいいけど」
「降りるって・・・この崖を?」
「あぁ。問題あるか?」
「うん、ものすごく」
「・・・そうか?これくらいは飛べると思うが」
「・・・どういう足しているの・・・?」
「多少は鍛えているからな。護衛とかもしないといけないから」
「護衛?」
双輝が言うには、この世界の巫女様は本当に尊敬に値する存在で、どんなものよりも、巫女様を大切にするらしい。己の命をも、巫女に捧げるという。そして、そんな巫女が、移動する間は、護衛をするらしい。
「大変ね」
「まぁ、巫女様の護衛を出来るのは名誉なことだから、辛いとは思わないな」
「ふーん」
たくましいなと、思う。で。
「降りるの?」
「出来れば。遠回りはしたくないからな」
「・・・・大丈夫なの?」
「もちろん。少しの衝撃で・・・」
「違う。貴方が」
「・・・俺が? 俺の心配?」
「・・・そうでしょう!?」
「へぇ~。ありがとう。でも、大丈夫。これくらいならどうって事ないから」
双輝は自分が心配されたことにとても驚いている様子だったけど、一体なぜ?ここでは、女性の待遇が異常なまでに良い。だから、男である双輝を女性が心配することなんて無いのだろうか。
「じゃ、降りるぜ」
「あっ・・・う?!」
ガウンと、宙に浮く感覚をまた味わった。あまり好きじゃないこの感覚。バンジーをしたがる人の気持ちが知れない。ドン、と着地した双輝は何事も無かったようにまた歩き始めた。
「大丈夫なの?」
「ん?全然。貴女は?」
「・・・銀葉。さっきそう言った」
「そうだったね。すみません。銀葉、さん?」
「銀葉でいい」
「そう。じゃぁ、銀葉。 銀葉は大丈夫?」
「・・・うん、平気」
双輝はにっこりと笑うと、頭を前に戻した。しかし、さっきの衝撃で耳に掛けていた髪がばさりと前にたれてそれをウザったそうに時々頭を振って前からどかしていた。
「?!」
自然と手が出ていた。双輝の前髪を左の耳に掛けてやる。その行為に双輝は首だけを銀葉に向けて目を見開いていた。
「いや・・・邪魔そうだったから」
「そうか」
「切らないの?」
「あぁ。少しだけ、意味があってね」
「ふーん。意味って?」
「それは・・・・あまり言いたくないな」
「そう。じゃぁ、聞かないでおく」
「ありがとう」
双輝が礼を言うと何か照れる。男がこんなにも簡単に礼を言うことに違和感があるからだろうか。