第三十三話 四季神様
玩愉が妖力を入れ終わると、確かに双輝は楽に呼吸をしている。
「後は時間が解決してくれると思うぞ」
玩愉はそう言って、立ち上がった。そして、トキに目線を向けた。
「さて、四季神談義の途中だったな?割って入ってすまなかったよ」
「・・・・玩愉は・・・四季神様を、どう思っているの・・・?」
「さてね?俺たち妖怪を封印した張本人だからなぁ?」
挑発するような発言。四季神を崇める人間を憎む。
「なぁ、トキぃ?どう思うよ?」
「え・・・?玩愉と、トキ君・・・知り合い?」
「まぁね」
「・・・・・どう、とは?」
「とは? 何を聞きたいんだ? 俺は、お前に四季神をどう思っているのか問うただけだぞ?」
玩愉はトキに対し、挑発するように発言する。四季剣は硬直してそのやり取りを見ている。
「・・・・四季神・・・・?そんなもの、消えてしまえばいい」
トキは玩愉から目を背けて小さな声で言う。
「ほう?」
銀葉は、この二人の関係が気になった。一体、どういう関係なのだろう・・・?
「玩愉・・・。その・・・・申し訳なかった・・・。謝って済む問題でないことは判っている。でも、判ってくれ!?お前たちを封印したのは、意図的じゃない!オレは本当にお前たちを封印するつもりなどなかった!」
トキは苦しそうにそう叫んだ。 え?
「トキ君?!」
「そっかぁ。お前ら知らないのか。だから、『ご本人』前に、四季神談義が、出来たわけか?」
「え・・・・?」
四季剣が確実に凍った。銀葉は呆然と目を見開いていた。
「トキ君・・・?」
「・・・・そうだよ。オレは四季神だ」
「な・・・・!?」
驚く銀葉に細く笑いかけると、トキは家をでようと足を進めた。
「おっと。待ちなよ、トキ。俺との話が済んでないぜ?」
「玩愉・・・・」
「俺は結構、今、腹が立っているんだぞ?長い間封印しやがって」
「だからそれは・・・・!」
「こんっの、どアホ!」
玩愉のほうが、身長が高いせいで振り下ろした玩愉の頭部がトキの頭部を強打した。
「う゛・・・・!!」
頭を抱えるトキ。ここは・・・笑うべき・・・?
「この引きこもりが!」
「ぅ゛・・・ぁ゛・・・い゛だ・・・・」
相当、痛かったらしい。そんな、四季神の存在を見て、四季剣たちはどうしたらいいものか、困っている様子だった。
「お前が、俺たち全員を封印できるほどの度胸があるなんて思っちゃいねぇよ、この馬鹿」
「・・・え?」
「俺が怒っているのは、貴様が引きこもっていたことだ。封印したことじゃない」
「がん・・・ゆ・・・?」
トキは異様なまでに驚いている。銀葉も、結構驚いていた。玩愉は、四季神を恨んでなどいなかったということか・・・?
「封印したことは確かに怒れることだが?んなもん、お前の口から一言、謝罪が聞ければいいと思っていたんだがなぁ?でてきてみりゃ何処にいるかと思えば、何だ?森の奥深くに引きこもりやがって! ビビってんじゃねぇよ、このどアホ!」
玩愉はそういうと、トキの返答を待つために黙った。そして、しばらくの時間の後、トキが泣きそうになりながら玩愉に謝罪の言葉を入れた。それを聞いて、玩愉は肩を落とし、ため息をついた。
「いつでも来い。穉瑳も会いたがっているからな」
トキにそういうと、玩愉は姿を消した。
双輝が目を明けたのは夜が明けてからだった。星空の元で護人、相枦に体中を斬りつけられ、挙句の果てには『四季神の森』へ飛ばされて瀕死の状態になったのだから。今、こうして微笑むことが出来るのは・・・。
「玩愉には頭が上がらなくなってしまったな・・・・」
嬉しそうに双輝はそういっていた。
双輝が気を失っている間に、銀葉は四季剣の全員に必死で謝った。
「あなたたちの主である双輝を、何の話も聞かないで叩いてしまって・・・本当にごめんなさい・・・」
確かな話を聞いて銀葉は謝った。クレハが、教えてくれたのだ。双輝は相枦に『護人なら妖怪を斬ることなどたやすいことだろう?』そういわれ、ある種否定することが出来ずに肯定すると、斬って来いといわれ、仕方なく森に入り糊草という糊のように粘り気のある赤い花があり、それの粘液を剣に塗って見せたという。相枦はそれで満足していたらしい。そうだ。双輝が本当に妖怪を斬ることができるわけなどないのに。冷静に物事を考える癖をつけようと心に決めた。
「ごめんなさい・・・」
とくに双輝を敬っているスイセツに強く謝罪した。みんな許してくれた。




