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四季神  作者: ノノギ
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第二十六話 異変

「ちょっ!?何・・・?!」

「・・・」

黙って家の奥へと進んでいくスイセツに、少しムクッとした銀葉は声を張った。

「スイセツ!」

「!?」

その予想だにしなかった声に驚いてか、スイセツは身を固めるように停止した。

「なに・・・?」

少し、予想外のスイセツの表情に戸惑いを感じながら、疑問を打ち明けた。

「巫女様がいなくなるって・・・?どういうこと?そんなにまずいことなの?」

「・・・説明は奥に行ってからではだめか?」

「・・・結構です。すみません」

スイセツの声をこんな間近で聞くのは初めてだった。何か胸の辺りに違和感を覚えた。

「ガスイは?」

「双輝と共に」

「・・・何があった?」

「巫女様がいなくなったらしい」

「?!」

スイセツの言葉を受けてヒコウもクレハも異常なまでに驚いていた。軽くいらだちながら、そわそわしている銀葉にスイセツが気づいて、ヒコウとクレハに目で合図をしていた。

「この世界じゃ、巫女様がとても大切に扱われていることは知っているでしょう?」

クレハが確認を求めてきたので、それに軽く頷いた。

「で、その巫女様に対して、必ずしもベストな状況でいて頂かないとならないんだよ。情緒不安定なんてさせてはいけない。だから、もし今回のこの巫女様がいなくなられてしまったのが、巫女様の意思であった場合、この村の人間は巫女様を無碍にしたと咎めを受けてしまう」

「はたまた、そうでなく。誘拐をされてしまった場合は、その村にいた護人が不甲斐ないと咎めを受けてしまう」

「・・・!」

一瞬、冷たい空気が流れた。銀葉も硬直していたことは自分でもわかっていた。

「どういうことか、判るよね?」

「・・・うん・・・」

「それでね。もし、誘拐だったとして・・・。ありえるようなことじゃないんだけど・・・」

「過去にも例が数件ばかりあったから怖いんだ」

「何が・・・・?」

ヒコウとクレハは恐怖からか、軽く震えて喋らなくなってしまった。首を傾げる銀葉にスイセツの冷たい声が届いた。

「殺されていた、ということも考えられる」

「!」

言葉が詰まった。スイセツの言葉を受けて頭が真っ白になった。

「そうなった場合、咎めは誰に行く?」

「・・・護人・・・」

「その通り。ただ、今はこの村にはもう一人護人がいるからな・・・。どうとも言いがたいが」

「どういうこと?」

スイセツはついと、その冷たい視線を銀葉に向けた。銀葉はドキッとした。心の奥まで何か冷たいものがコトンと落ちてきたような感覚。そしてこの時初めて、スイセツと目が合ったことを理解した。

「根本的に、巫女様をここまで護衛してきた護人が『留まる』場合、その村でも巫女様の護衛を9割負担する」

「そうなの・・・?じゃぁ・・・双輝は・・・?」

「だから双輝も安心していたんだろう? それに、この村の近くの森は奴が陣を張っている。油断したんだろう」

「やつ・・・?」

「がんゆだよ・・・」

震える声でクレハが答えた。ヒコウは黙然としている。

「・・・・でも、他の人だってありえるでしょう・・・?」

「・・・・?」

銀葉の言葉を受けてスイセツが本気で疑問の表情を浮かべたことに少し驚く。戸惑っている銀葉に、スイセツは何かを納得したように軽く頷いてから口を開いた。

「そうか。お前の世界ではありえるのか」

「え?」

「俺たちの世界で巫女様に己から触れるなど、言語道断だ」

「!」

「己から何の罪意識なしに触れることができるのは、妖怪か、四季神様の・・・この二つに一つ」

「あ・・・そっか!」

世界観が違うだけでここまで変わってくるんだ。恐ろしい・・・・。では、誰が、巫女様を・・・?いや、根本的に巫女様は己の意思でこの村を出たとすると・・・?それは・・・。一体何を示しているの・・・・?

 走る足音に違和感を覚える。ガスイは刀から主人の命なしに人型へ戻った。

「ガスイ・・・?」

その行為に、双輝は疑問を投げかけた。

「双輝。何を無茶している?」

「・・・・?」

「妙だ、お前。何かがおかしい。何をそんなに焦っている?落ち着けよ」

「・・・・」

ガスイの言葉に双輝は押し黙った。あたりを見渡すと、限りない木々が覆っている。巫女様の気配を感じたといってここまで走ってきたが、ガスイからしてみれば、双輝が、無理しているように、焦っているように思えたのだ。

「・・・俺は、過去の過ちをまた犯したくないだけだ」

そう言い放った双輝の目に宿る光はガスイを再び刀へと成した。刀に成ったガスイを掴み、また巫女様の気配のある方向へと走り出した。

 走り続けていると、小さな小屋のようなところに着いた。その小屋の中から巫女様の気配を感じた。双輝はガスイを強く握った。

『無茶だけはするなよ』

ガスイの声が双輝の頭の中に響いてきた。

「・・・あぁ。判っているよ。冷静さを欠いて身を削るのは己自信だからな」

双輝は小屋の中へと足を踏み入れた。


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