第二十三話 歓迎
森を出ると、巫女様を迎える準備で双輝が忙しそうにしていた。手伝いに入ると、村人に止められた。
「女性は手を傷めてしまったら大変だ。向こうで休んでいな」
「え・・・私もやるよ・・・」
「でもね・・・」
「銀葉は特殊な子なんです。やらせてあげてください」
双輝が巨大な箱を持ってこちらに来た。
「きゃー!?双輝!?そんな大きな箱一人で持ったら腰が壊れちゃう!」
「ん? そうでもないぞ。軽いしな」
「私も手伝うよ!」
「んじゃ、上に乗っている箱とって」
上を見ると巨大な箱の上に小さめの箱が乗っていた。
「それは、少し重いから気をつけて。 で、あっちでヒコウが荷物を整理しているからそっちまで運んで」
「わかった」
箱を取ると、意外に重かった。双輝の持っている大きいほうの箱の重さが知れない・・・。銀葉はそんなことを思いながら怒鳴り散らすヒコウの元へと急いだ。
「不思議な子だ・・・。本当に」
「そうでしょう? 四季神様ですらよくわからないらしいからね」
「・・・そうか」
村人は柔らかく笑ってその場を後にした。双輝も準備に走った。
次の日に、壮大な馬車が村に訪れた。驚くほど豪華で中に乗っているのは巫女。顔は見えないが。
「巫女様って本当に凄い扱いだね・・・」
「まぁね。唯一、四季神様とコンタクトを取れる存在だからな」
「・・・あれ?でも、双輝も、一度四季神様に会ったって?」
「言ったよ。一度だけ、特別に会わせて頂いた」
「誰に・・・?」
「・・・・・・」
「双輝?」
「父さんに」
「お父さん・・・?そう言えばいないよね・・・?何処にいるの?」
「遠くさ。護人は自立をしないとやっていけないからね」
「へぇ~!凄いんだね・・・。なんだか大変そう!」
「あぁ。そうだな」
「・・・?」
双輝の表情に違和感を覚えたが、馬車が止まり、中から巫女が出てきたので、そっちに気がとられた。
「キレーだな・・・巫女様・・・」
「そーきぃ~!!」
「ひ、ヒコウ!?」
突然後ろからヒコウが双輝にダイブした。双輝は少しだけバランスを崩し、前進した。
「っと・・・」
その拍子に人にぶつかった。
「すみません」
顔を上げた双輝の目に巫女を連れてきた護人の顔が飛び込んだ。
「護人か?」
「はい。そうですが?」
「ふーん・・・」
護人は何か納得したような声を上げて巫女のほうへと歩いていった。
「双輝~?今日は巫女様が来たけど舞うの?」
「さ?」
「なんだよ、それ~。お前が舞うの楽しみにしてるんだぞー?」
「笑いたいだけだろう」
「よくわかった!」
「ふん」
「ヒコウ、舞うって?」
「え? あぁ、そっか。銀葉は判らないのかぁ~! 巫女様が着たら歓迎って事で護人か、その村の女子か、またはその両方が舞を披露することになっているんだよ」
「そうなんだ! 双輝が!?」
「そうだよ! 興味あるだろう!?」
「あるある!!」
「あのな・・・」
ため息を吐く双輝を他所に異様なまでに盛り上がるヒコウと銀葉だった。