第十四話 強さ
クレハが参加しないのは、なぜか問うてみた。すると、クレハはニコニコしながら答えた。
「私って双刀でしょ?だからやるのに、歩が合わないみたいなぁ?」
なるほど、と思いながら双輝たちに目を移した。カキン、カキンと、金属音のぶつかり合う音。澄み切った美しくも繊細でそれでいて苛烈な音。その音を響かせ、双輝は一体今までにどれほどの数を斬ってきたのだろう。
「双輝は、今までに一度も妖怪を斬ってはいない」
稽古が終わったみんなにそれとなく尋ねてみると一番近くに居たあまり喋らないスイセツが答えてくれた。
「え?でも、そんなんで、どうやって妖怪たちが強いと判断したの?!」
「脅しだよ」
双輝が答えた。
「護人が持つ特有の圧倒力に押し負けて弱い妖怪はこの村を襲ってこない。ただ、強い妖怪は本当に強いからな。なぜ襲ってこないのか不思議なくらいだ」
剣の手入れをしながら、双輝は言っていた。剣の手入れといっても、銀葉にとってはマッサージにしか見えなかった。
「あ~~~!!!そこそこ!!そこが気持ちい~~!!」
「はぁ。お前なぁ」
双輝の気持ち的には、剣に戻してから手入れをしたほうが楽と言う。しかし、剣の側かすると、人間の格好している状態での手入れのほうが気持ちいらしい。仕方なく、人間の格好して手入れをするらしい。ガスイ、ヒコウ、クレハはそうなのだが、どうにも性格上の問題か、定かでは無いが、スイセツは剣になってする。不思議だね。
「巫女様がいらっしゃる前に、今いる巫女様を次の村まで送らないと成らないんだろう?」
ガスイが気持ちよさそうに手入れされているヒコウを恨めしそうに見ながら言った。
「いや、今回は向こうから迎えが来る」
「・・・最近、いやに多いな」
スイセツが警戒しながら言った。銀葉はそれがどういうことなのかまったく解らない。尋ねて見ると、スイセツは黙ってしまったことに少しむっとした。
「気にすること無いさ。スイセツは双輝しか認めていないからさ」
ヒコウが気持ち良さそうに言う。
「護人というのは、巫女様の護衛をしてこそ、一人前!ってね?だから巫女様の護衛が出来るのはとっても名誉なことなんだよね。なんだけど、最近、双輝が護衛できないんだ~。これ程まで立派なのに!」
少し腹立ちながらクレハが説明した。
「それなりに事情があるんだろう。仕方ないさ。俺だって最高じゃないんだから」
双輝の言うことは大体が自分を抑えている。もっと自信持てばいいのに。
「最高じゃない?確かにそうかもしれないね?でも、次くる護人が四季剣、2本だったらどうなのよ!? 双輝のほうがはるかに・・・」
「父さんは、2本で4本の相手に勝ったぞ」
「そ、それは・・・・」
「双輝のお父さん、凄いんだ!?」
「あぁ。今の俺なんかより断然な」
「へ~」
家を見る限り、父や母の姿は無い。護人をやるにあたって一人暮らしをしているのだろう。そんな風に思った。
「でもでも!双輝が護人同士のやり合いで負けたこと無いじゃん!」
「あるよ。何度も何度も。それに俺は護人だけでなく、巫女様にまで嘘をついている。四季神様がお怒りなんじゃないかねぇ」
のんきな口調で言う双輝。それに対して反論したそうな四季剣の御方々。とにかく、銀葉にとっては雲の上の話でしかなかったからいまいち話に参加することが出来ないでいるのだけれども、とにかく、双輝は軽くヒイキを受けているのではないのか?ということが解った。