第十二話 襲い
食材が煮込み終わったらしく、双輝はさらにそれをよそって4人に手伝わせながら食事の支度を始めた。
「あ、あ・・・あの、私も手伝う・・・」
「いや、いいよ。座ってな」
「・・・・私さ、これからしばらく双輝の家にお邪魔するわけだよね?」
「四季神様曰くね」
「・・・だったら、何か手伝いたい。今日だけなら・・・そりゃぁ~~お客さんしているけど。でも、これからしばらくなわけだから、ただのお荷物は嫌だ!」
「・・・・?! わかった。じゃぁ、そこのコップを並べてもらってもいいか?」
「うん!」
双輝は一瞬、動きを止めた。それから。
「少し出かけてくる。すぐに戻るから支度を進めておいて」
「はーい」
そして双輝は家を出て行った。四季剣の皆様方と共に支度を進めていると少し気になったことがあったが、気にしないことにした。
がたん、といって双輝が戻ってきた。その音の正体は。
「椅子?」
「銀葉が来て、椅子の数が足りないだろう? 今までに人を招いたことなんて無かったからさ」
気になったことが解消された銀葉は双輝に礼と謝罪をした。
「礼は解るが、謝罪する必要はねぇよ」
双輝はそういって椅子をテーブルの前に置いた。コレで全員分の支度が終了。食べ始めることになった。
「おいしい!こんなにおいしいの、初めて食べた!双輝は料理が上手いんだ!?」
「いや・・・そんな事無いさ。食材がいいから自然といい味が出るだけさ」
「謙遜してぇ~~」
おいしい味にほほが落ちる、、、とはまさにこのことだろう。みんなもおいしそうに食べているわけだから双輝はやはり料理が上手いんだ。
食事が終わって片づけをしていた時。
「ん・・・?」
「どうした?」
「・・・・妖、怪・・・」
「・・・?双輝にしては自信なさそうだな?どうした」
「いや・・・。ともかく見てくる。ガスイ。付き添え」
「あいよ」
双輝はガスイを従えて外に出た。ヒコウが外に出ようとした銀葉をとめた。
「妖怪が出たときは双輝の許可が無い限り、ただの人間は外に出ないほうが身のためだ」
理解できるが納得できない。身の安全を護らねばならないのだから当然のことだが。でも妖怪を見てみたいという好奇心も引け劣らない。
村人が双輝の到着に気付き声を張り上げる。
「双輝!あそこに妖怪が!」
「・・・・異国の妖怪か」
「え?」
「アレはこの森に住む妖怪じゃない」
村の者は双輝の言葉を聞いて少し疑問を感じたが、信頼する双輝がそう言うのだからそうなのだろう。
「ギャーーーー!!!」
雄たけびを上げてその鳥のような風体をした妖怪は空を舞っている。村に凄まじい眼光を浴びせながら。
「コドモ!コドモ!コドモノニクハヤワラカイ!」
妖怪はそう叫びながら村に向かって急降下してきた。双輝はガスイを刀にしてその妖怪を見ていた。そして。
「ガスイ。春風」
静かにそれでいて強烈な一言が村に舞う。ガスイより繰り出された強烈な風に妖怪は巻き込まれ姿を消した。
「さすが双輝! 双輝は本当に強いよな!」
安心した村の連中が双輝にそう言った。やわらかく笑った双輝は銀葉の待つ家まで戻った。