↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい  作者: あまぐりムリーパー
おまけ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/94

聖女代理

 ライこと、鏑木湊がこの世界を経ってからすぐのこと。


 ぐらり、と揺れたその体はすぐに俺たちのものになった。


 あの魂は、世界の向こう側へと消えていったらしい。


 一応、こっち側の魂はひとつにまとまったけど。ちょっとうるさいというか、たまに分かれていきそうになる。なんだ、これ。


 私たちわがまますぎる。


 本体のライが向こうに消えていったとき、ディオネは、泣きそうな顔をなんとか堪えてから顔を上げて決意をしたような顔をしていた。


「私、ライさんを追いかけます」


 と、ディオネが言うと、しんっと静まり返った後に、あははと教皇が笑っている。


「魂だけ世界を越えるのも大変なのに?」

「なんとかします」

「向こうでの生活もうまく行くかはわからないのに?」

「なんとかします」

「君がいなくなると困るのに?」

「……それはなんとかしてください」


 教皇の言葉に強気に返していたと思えば、さすがに自分がいなくなる分の負担を誰かに押し付けるのは気が引けるんだ。


 聖女だもんね。


「自己犠牲の塊だった聖女にそこまで言わせたんだ。だったら、私がなんとかしてあげないこともないよ」

「教皇様」

「黙って、グレゴリー。君が聖女をボロボロにしたツケじゃないのかい?」

「……意図的にボロボロにしたつもりはないですが」

「ははは、君は人間の強度を見誤りすぎだよ」


 くすり、と笑ってから教皇はこちらにやってくる。


「聖女の代理を、代わりに君にやってもらうよ。ライ」

「へ?」

「君の本体のせいで、聖女ディオネはその役割を辞退するわけだ。だから、その分の役割を君にやってもらわないとね?」

「……」


 えっ、それ俺たちがやるの?


 そういう雰囲気だっけ?


 っていうか。


「それ、向こうの世界に行けるってこと?」

「行けるんじゃないかな?神は、強い意思を持つ人間が好きだからね。彼女のことを後押ししてもおかしくはないよ」


 そっちの神様の方が好感触かも。


 にしても、聖女の代理って。できるもんなの?


 ……ディオネのためだし、やってやれないこともないけど。





 なんて経緯があり、俺たちは聖女代理として活動することになってしまった。


 暴走しそうなこの体もばっちり調整されて、別にその心配もない。


 別に、俺たちの本体が向こうに帰ったことに関しては何も思わない。帰りたかっただろうし。


 私たちはどうなのか?となると、別にこっちに居着いてもいいかなと思ってる。


 そもそも、分裂した俺たちはこの世界で生まれたようなもので。向こう側の世界への執着はあんまりない。


 こっちのやつらと生きていけるならまあいいかな、と思ってる。


 ただ、一つが問題があって。


 本体がいなくなってから、その感情の一端をこっちが受け止めることになってる。


 例えば、俺たちは今はディオネの住んでた場所で暮らしてるんだけど。そこにはアクイラもいる。


 ディオネはもう旅立ってしまった。


 世界を繋ぐような通路の形成だとか、向こうで生きていくための準備だとか。そういうものを全部、結構すぐに達成してしまった。


 あいつ、すごいな。


 んで、ディオネがいなくなってからアクイラの距離が妙に近い。


 すぐ真横にいる。


「ライさん」


 ぴと、と肩をくっつけてきた。


「……なに、アクイラ?」

「なんとなく」

「お前、そんなこと言うキャラだっけ?疲れてんだなー、よしよし」


 アクイラの頭を軽く撫でてやると、ぐりぐりと頭を押し付けてきた。


「……なんとなく、寂しくなって」

「アクイラも向こうに行きたい?」

「それはなんかこう……ディオネ様を邪魔したくはないですし」

「代わりに俺にじゃれついてるってわけね」


 そのまま、ゆっくりと俺の後ろに回り込んできたかと思えば、ぎゅっと抱き締めてきた。


「あったかい」

「子供体温で抱き枕に最適って言った?」

「言ってないですけど……」

「その通りだから、抱き締めて癒されてもいいよ?」

「……なんか、みんなみたいにだんだんとライさんのこと好きになりそうで怖いです」

「なんだ、そりゃ」


 みたいな感じで、アクイラがだんだん重たくなってきてる。


 まあ、いいか。アクイラかわいいからね。あんまり大きくないのにしっかりしてるのに、こうやってたまに年相応なところを出してくるのがね。


 そもそも、だ。こんなやばい世界に生きてるわりにちゃんとしてるから、アクイラはすごいよ。


 シリルもまあ、わりと普通だけどなんか。知らない間に俺たちが情緒を壊してしまったらしいことしかわからないから。


 そういえば、シリル的には俺は告白した本体ではないので、そのまま好き好きアタックはされないで済んでる。


 お嫁さんになりたい方の私たちもいるから、押されるとそのままいつかは了承してしまいそうなので、実はちょっぴり危ない。


 そんなこんなで、あいつの尻拭いみたいな感じで、聖女代理中です。


 代理とは言っても、ちょっとだけ仕事してるだけだからね。


 さーて、今日も働くぞ。


 ……アクイラがまだ抱き締めたそうにしてるから、ちょっどけ休むか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。