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壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい  作者: あまぐりムリーパー
魔獣

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今後の目標とかどうしようかな

「すみません、あっちの治療が足りてないです!」

「局長が出れないから助っ人に回しといて!」

「あっ、こっちの呪い解除お願いします!」


 慌ただしく、治癒局内を神官たちが駆け回る。みんな、忙しそう。


 その中に、アクイラとディオネがいる。


 ……なんか、俺が来たせいでイリスが仕事できなくてちょっと追い付かないらしい。


 俺がずっと意識を保てないから、正直どうなってるのかよくわかんないんだけどな。


 その代わりにディオネが仕事をすることになったみたい。本当にごめん、俺がやれたらよかったのに。


 少し前に、ディオネとアクイラがいないなと思ったら、そうなってたんだ。


 少しだけ様子を見ていると、アクイラが仕事を分けていて、それにディオネがこなしているみたいだ。


「大丈夫ですか?すぐに治しますからね」


 患者としてやってきた人に、にこりと微笑んでいる。あいつ、そういや聖女だったな。

 一人一人に話しかけながら、直ぐ様癒していく。異端殲滅官よりもこっちの方があいつのメインの仕事だろうしな。


「すごいでしょ、ディオネ」

「まあそうだな。……って、イリスがやらないからディオネがやらされてるみたいな話じゃなかった?暇なの?」

「おーっと、悪いことを言うのはこの口か?うりゃうりゃ」

「いひゃい」


 ほっぺを引っ張られて、ひりひりする。……本当に俺の扱いがガキなんだけど。いや、こんな身なりはしてるけどさ。


 今は、イリスとシリルが、俺と同じ室内にいて、イェルクとエオスはまだ外にいるみたい。俺の治療のために二人がいるのわかるけど、あいつらどこいったんだろ。

 あ、俺の報告しに行ったんだっけ?……結果が怖すぎるな。


 でも、体に引っ張られて幼くなってたり、女っぽくなってるような気がしなくもない。


 俺、こんなんばっかだな。


「ディオネはね、こういう仕事をすべきなのにさ。変に責任感だとか、自分が救えるものは救わないといけないとか、考えちゃうせいで。異端殲滅官になっちゃったんだよね。お陰で、ディオネよりも治癒が得意じゃない私が、ここのトップになってしまったし」


 物憂げな様子で、イリスはディオネを眺めている。昔からの知り合いなんだろうか。


 っていうか、こいつらの繋がりってよくわからないな。地位が高いからこそ、会う機会が多いとかなのかな。


「元々、治癒局以外にも守護局ってあったの。障壁みたいなのを張ったりするんだけど、そんな仕事ってあんまりないから一緒になったんだよね」

「そんな合併とかあるんだ」

「そうなんだよ。んでね、ここの仕事って守護と治癒の2系統あるわけ。で、私は治癒よりも守護の方が得意なの。だからこうなって人を治してると、ディオネの方が得意なのになーってなっちゃうんだよね」


 軽く、俺の頭を撫でてきた。まあ、いいか。少しぐらいは許してやる。


 と思ったら、少ししたら離された。なんなんだ。


「確かに、聖女だしな」

「そうだねえ。っていうか、そろそろ治しますか」


 隣にいるシリルに目線を向けた。どうやら、シリルの力を借りるらしい。


 にしても、治ったらどうしようかな。


 俺って元々、この世界ではディオネの代わりに働いてただけで。それ以上の何かはない。

 というか、ディオネを見捨てて帰ることもできなかっただけだ。


 でも、どうやらディオネは持ち直したみたいだし、俺がこっちでやらないとってこともなくなった。


 だからまあ、帰ってもいいんだよな。


 ……でもさ、なんか知らないけどそこそこ俺は好かれてるというか、気に入られてるからさ。


 今後もちょっと、こっちにいてもいいかなって。

 そのうち、帰りたいけどね。


「ねえ、ライ。そろそろ治すよ」

「おう」


 ゆっくりと、シリルの手が伸ばされてきた。


 ああ、触らないといけない系なんだ?

 なんで、こいつそんなびくびくしてるんだ。


 そういえば、イリスとかが言ってたっけ。いや、ディオネもそんな感じのことを言ってたか。

 シリルが、俺のことを気になってるだとか。


 ……いや、なんか。俺が距離感とかでやらかしたのはわかってるけど。


 ってか、そんなん言い出したらどいつもこいつも、俺に対しての雰囲気おかしいんだよな。


 なんかもう、よくわかんなくなってきた。どうしようかな。


 まあ、一旦治してからにするか。


 恐る恐る、シリルの手が俺の頭に触れた。


「ライの記憶を定着しやすくするよ」

「うん」


 触れてる部分から温もりが伝わって、少しずつ何かが入ってくる感覚がした。


 頭の中に、するすると入ってくるそれが、全身に広がっていく。


 それと同時に、意識がはっきりとしていく感覚がした。


「じゃあこっちも、ライちゃんの中の境界をはっきりさせるよ」


 ぺたり、と肩にイリスの手が触れた。体の中の曖昧になっている部分が、少しずつはっきりしていく気がした。


「にしても、かわいいライちゃんももう終わりかー」

「なんで残念そうなんだよ」

「かわいいからね」


 頭がはっきりしてるのに、前みたいに頭が痛くなったりしない。治ってきてんのかな。


 そんな気がする。


 体の隅から、少しずつ活力が戻ってくるような。


 それと同時に、体の中の変な感覚がわかってくる。体内に神聖力がある。それと同時に、もやもやした変なものがあるのがわかる。きっと。呪いの根源がこれか。


 ……なにかと繋がっているような感覚もするけど。これ、ディオネと繋がったままなのか。そこは変わらないんだ。


「……ライ、大丈夫?」

「うん。お前の恩寵すごいな。どういう感じなの?これ」

「例えば、物を固くしたりとか軽くしたりできるんだけど。人にもある程度影響させられるんだよ」


 なんだっけ、性質の付与とか言ってた気がするな。その力で、俺の体になんか付与したのか。

 便利だな。


「さんきゅ」


 たぶん、治った気がする。治ったんかな。


「うーん、大丈夫そうだね?うんうん」


 ぐるぐる、と俺の周りをイリスが回って俺を見てくる。


「じゃあ、完治ってことで!」

「適当すぎない?」


 治ったならいいか。すっきりした。


 んだけど。……その。


 少しずつ、今までのことを思い出してくる。


 主に、俺が幼くなってた時のこととか。


 ……なんか、すごい甘えてた気がするんだけどな。おかしいな。


 昔のことをなんとなく思い出して、母親に抱き締められたり、姉に手を握られたりして。俺はきっと、その時のことをなんとなく覚えてて。

 そのせいで、そういう行為にひどく安心感があったんだと思う。


 それが根源だったとしても、あれはちょっと。……恥ずかしいし。


「ライ、どうかしたの?」


 心配そうに、シリルが顔を覗き込んできた。


 こいつも、こうしてると大きく見える。ディオネの時よりも、小さいんだなこの体。


 こいつのことをガキ扱いしてたのに。俺の方がよっぽどガキになってない?幼児みたいな時もあったし。


「いや、ちょっと色々と思い出して」

「思い出す?何を?」


 それを答えようとして、少しだけ悪戯心が沸き上がってきた。


「――お前を押し倒したときとか」


 と、なんとなく冗談で言ってみると、シリルが少しだけ顔を赤くした。純情かよ。


「……なんでそんなことを?」

「なんか、この前イリスがさ。シリルの嫁になれって言ってきたから。ついね」


 その前にディオネとラブラブの恋人になれとか言ってたけど。

 ディオネも、なんか相当重いよな。直接好きって何回か言われた気がするし。


「……何の話をしてたの?イリス」

「おっと。なんか面白そうな話してるね?シリルくん、君も覚悟決めたら?」

「うるさいな」


 ぷいっ、と顔を背けた。……こいつ、もしかして本当に俺のこと好きなの?

 いやいやいや。なんか、変な風には思われてそうだけどね。


「ライも、あんま変なこと言わないで」

「なんで?」

「……俺も、男だって言ったと思うけど。まだガキだと思ってる?」


 ぐいっ、と目の前まで接近してくる。息がかかりそうになって、少しだけ鼓動が早くなった。


「近いわ、アホ」


 その感じを出さないように、シリルを遠ざけた。ビックリするだろ。


「ってかさ、お前って俺のこと好きなの?」


 って思わず聞きたくなったけど、さすがにやめておいた。

 ちょっと、取り返しがつかなさそうだったから。こいつをからかうのもほどほどにしとくか。


「やっぱりライちゃん、悪い女の子だね」

「うるせー」


 女の子ではないけど。

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