表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドウ・コレクターの憂鬱 〜鏡のなかに、誰も立っていない〜  作者: 弌黑流人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/5

第五話 鏡の中の二重債務①

 「自分を切り売りしてまで手にした成功に、どれほどの価値があるというのか。……鏡に映るその虚飾、僕がすべて清算しよう」  ―九条―

 「九条さん、今日のお客さんはちょっと毛色が違いますよ。あ、コーヒー、そこ置いときますね」


 事務所の窓際で端末を弄っていたリコが、画面をスワイプしながら言った。

 九条はデスクに置かれたカップから立ち上る湯気を眺め、やってくる依頼人の情報を待つ。


 「毛色が違う? 影取鬼に襲われた被害者ではないのか」

 「それが、被害者でもあるんですけど……加害者でもあるっていうか。今回のターゲットは『鏡の影』です」


 リコが提示した資料には、ある若手実業家の写真があった。最近、メディアで「不眠不休の鉄人」として持て囃されている男だ。


 「この人、鏡に映る自分の影に『仕事』を肩代わりさせてるんです。二十四時間、自分は遊び歩いて、鏡の中の影がオフィスで数字を叩き出す。画期的なライフハックですよね」

 「……ライフハックなどという洒落た言葉で片付けるな。それは単なる契約違反だ。影という資産の転貸、あるいは多重債務の一種だよ」


 九条が苦々しく言うと、事務所のインターホンが遠慮がちに鳴った。

 入ってきたのは、写真の男とは似ても似つかない、酷くやつれ、輪郭がボヤけた男だった。


 「助けて……。鏡の中の『あいつ』が、もう僕の言うことを聞かないんだ。それどころか、僕を鏡の中に引きずり込もうとしてる……」


 男が震える指で差し出したコンパクトミラー。そこには、男と同じ顔をしながら、不気味に口角を吊り上げた「もう一人の男」が映っていた。


 「なるほど。貸した側が借りた側に飲み込まれかけているわけか」


 九条はゆっくりと立ち上がり、男の持つ鏡を覗き込んだ。鏡の中の影は、九条と目が合うと、嘲笑うように中指を立ててみせる。


 「リコ、解析しろ。この契約の『担保』は何だ」

 「もうやってますよ。……九条さん、これ、最悪です。この人、影に仕事をさせる代わりに『心臓の鼓動』を半分貸し出してます。このままじゃ、鏡の影が本物になって、この人はただの反射光に成り下がりますよ」


 リコは真剣な表情でキーを叩き、男の周囲に漂う異常な魔力波形を固定していく。


 「リコなら三分で強制解約のコードを書けますけど、その間、鏡の中のあいつが黙ってないはずです。九条さん、ガードお願いしますね」

 「三分か。カップのコーヒーが冷めるには十分な時間だ。……差し押さえを始めよう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ