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魔界の地、人生二度目の学園に

どうも、コーフィーブラウンです。


どうぞ、お楽しみください。

私はリク・レシオン。しがないサラリーウーマンだったはずなんだけど・・・


チュンチュン・・・


おかしい。

私の家はこんなに日光が差さないのに。

ベッドの向きも違って落ち着かない・・。

微妙に天井の白さにも違和感を感じる。


ガバッ 「嘘・・・」 全く知らないレイアウトの部屋。


もう一度仰向けになって顔を手でおおう。


「なんかちょっとうれしいんだけど・・」


窓をあけるとさわやかな風が吹き抜ける。鳴いていた鳥が羽ばたく。 

魔界といえど、だ。


部屋を出て階段を下ると、でかい獣人のばあさん。(クマ)


「あら、朝はやいのね。起こしちゃったかしら」


この方はここの寮母さん。


「いえ、日課です。」 


「まあ、あの子と同じね。」 


その時、


「ふぅーっ  お、おはよう」 


「アテリーさん、あ、アテリー、朝からどこに?」


「どこにも。訓練だよ。」


大きな剣を持っている。うわーっ、ファンタジー。


「サナンス、はやく身体洗っておいで。リク、ごはん食べていきなさい。」


「はい」


ここは、魔王国唯一の学園、『教場』の教官専用寮。

つまり私はなぜかこの国で教師になったのだ。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


それは昨日のこと。


「お待たせいたしました。魔王様」

ガッチャン・・と重々しい扉が開かれ、入ってきたのは


「おう。ヨシル」

赤い髪に朱色の角。

魔人だ。

スタイル抜群の全体像、ところどころにある筋肉、なんといっても野性味あふれる傷跡! 

あ~異世界だわーこれ。


「その者が」


「ああ。彼女がリク・レシオンだ」


「・・・」 

彼女は色濃く、引き締まった長足で私に迫って、


「ふむ、・・ふむ、ふむ・・」

私の髪先から靴下まで、一周回りながら、彼女はくまなく見ている。


えっ!? なにっ!?

何を見てるの? この服? ・・あっ、もしかしてほんものの『鑑定』!?


「うん。 ・・うん、よろしく頼む」  

ごつごつとした皮膚が各所にできた彼女の手が差し出される。


「あ、ああ はい、こちらこそ」

身をかがめて頭を下げながら手を握る。

ギュっ かたっ。 それに手首の傷が・・あれ? 手が震えている。


「あっ! す、すみません! つい・・」


「あ、ああ」


何度も謝罪しながら、急いで手を離し数歩下がる。


「良いな!やはりあいつの娘なだけあって、分別はあるようだ!」

嬉しそうに大笑いする魔人の女。


「じゃあ、後は頼んだぞ。

リク、お前の父さんには本当に助けられた。

同じことを求めはしないが期待はしているぞ。

この国は彼の遺産でもあるんだからな。」


「はっ。 また後で伺わせていただきます」

彼女は重々しい角ごと上半身を折り曲げて、お辞儀する。


ほえ、魔人なのに礼儀正しい。


彼女は振り返って、

「私はヨシル・ルマン。

国立学園『教場』の教官長をしている。

お前のほうでは校長ってやつだ」


「そうなんですねー・・」

どうしてそんな人が・・・あっ、もしかして生徒として入学っ!? 青春の再来かも!?


「お前を新たな教官、教師として我が学園に迎えたい。」


うん? 私が教師!? えええぇ・・

「・・はい」


自分が教師に選ばれたことへの困惑の思いが、異世界に対する不安だと受けられたのか、彼女は少し焦った様子で、


「だ、大丈夫だ! お前のすごさは私たちのほうが分かっているし、それにお前の父からちゃんと守るように言い聞かさされているんだ! 

た、確かにここには人間は少ないがっ それでm・・」


「んっ くくっ・・(笑いをこらえきれない様子のリク)」


ああ、よかった。

異世界といえどじゃないか。

どうやらこの世界が父の墓場となったらしい。

だとしても、それでも。


「分かりました。 あまり自信はありませんが、精一杯務めさせていただきます。」


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


この世界のごはんは、日本の頃のような味ではないけど、素材の味がしておいしい。

特にこれなんて、黒いひもがピクピクしている。


「アテリーさ、アテリーこれって何?」


山盛りのご飯をガツガツ食べていた彼女は口は動かしながらも手は止めて、

「ん?そりゃあハエヌキトカゲだな。うまいだろ。」


「う、うんー・・、くせになる食感だね。」

トカゲかあーっ。 

昨夜のパーティーで出てきたあれは確かインコの肉だっけ。(しかも彼らの羽も丁寧に添えて)


「だろー。あ、リク。今日は一緒に行くぞ。じゃねえと生徒にいじめられるだろうからな。」


「ええっ、それはどういう・・」


アテリーはかなり大きな焼き魚を手で持ってバクッと噛みつくと後に、

バリっ、ボリッと太い骨が砕かれる音が聞こえる。


「ハハハッ、冗談冗談。」


それから彼女はものの数分で食べ終え、

「ミリアを起こしてくる」 

とドタドタ大きな足音を鳴らしながら階段を上っていった。


「ごめんね、うるさくて。 ゆっくり食べて頂戴ね。」

寮母さんが彼女の食べた後の食器を集めながら、優しく微笑んでそう言う。


「はい」 

ああ、幸せだな。 

こんなにゆっくり、しかも手の込んだ料理を朝から食べられるなんて。

日本での私は毎日クッキングロボットに任せてばっかだったし、コーヒーを飲むのなんて休日の特権なのに。


それから部屋に戻ってクローゼットを開き、いつものシャツとパンツになって手が止まった。


「魔族の教官って何着ればいいの・・?」


あれ、私って言葉伝わってるよね?

魔法使ってとかいわれたらどうしよう?

教科書を見た感じは義務教育で十分ぽかったけど・・

『なんで人間なの』とかきかれたら?

もし授業中に襲われたら?

その途端、色んな心配事がブワァッと湧きあがってきた。

今になって私は気づいてしまった。


私きっと、ピンチなのかも。


寮の外で待つアテリー・サナンス。


ガチャッ 寮のドアが開いて、

リク・レシオンがブラックのスーツの上に外面が黒、内の生地がワインレッドで、金色の紐や装飾が施されたケープが被されている。


「お、来たか。おーっ、昨日も見たけど、まあそうなるんだろうな。」


それってどういう反応?

流石アテリー、十中八九で人の欲しい反応を外す。


「アテリーもそのケープ似合ってるよ。」


これが一番平和な模範解答なのよ!


「そ、そうか? まあ、私は好きで着てないけど。」


照れちゃってー。


「じゃ、行くk」


「あ!待ってー!」


寮からギャルが走ってくる。

同じく同僚のミリア・コルトーン。

小柄で可愛げしかないが、彼女のツインテールに負けないぐらい立派なツノがある、魔人だ。


「ハアッハアッ、おっ、わーっ!

こうなるんだ!めっちゃ似合ってんじゃん!私もこれ装備課につくらせて着たーい!」


出たな、無意識人たらしめ。

こういう気質の人物は最重要警戒対象だ。

じゃないと、私の自己肯定感がどんどん上がっていくーっ!


「ま、アテリーは今日も下着もろだしと。」


 ブフッ


「はあ!?下着じゃねーからこれえっ!おいリク、笑うなっ!」


寮から職場の教場は数分程度。

魔王城の入り口付近や主要道は多くの人々で雑多ににぎわい、

魔王城に入った広場ではそこに勤務する大人たちが行き交う。

そしてここ、教場の登校時は

「おはよー!」  「ああ、おはよう(アテリー)」

「せんせぇ、おはよ。」  「おはよっ!あいさつできてえらいね!(ミリア)」

大人数の生徒たちとともに校舎へ入っていく。


二人とも慕われてるなあ。


「あれ、その人誰?」


「新しい先生だ。あとで紹介するから、早くいけ。」


「ウェーイ! みんなー!」

走っていく男児一人。


「今日の話題の中心は、リクで決まりだね。」


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


教師か・・

教わっていた頃の自分は、先生というものは、教室という彼らにとっての王国を平定に治めるために、最低限の体力をかける者といったイメージだった。


ただ、なぜそんな思いを抱いていたのかは、もう覚えていない。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


「リク、ここが教官室だよ」


ミリアはどんどん進み、一番奥のすっきりとしたデスクを指すと、


「ここが君の席っ! 

今は少ないだろうけど、この壁側の棚と一面の机は君のものだからね!」


「ええっ!?こんなに!?」


見回すと、とても広い部屋ではあるが、いち教師が、しかも新米の環境ではない。

しかし、すぐに分かった。


廊下から見ると広い一室で大人数の先生たちを想像していたが、

中のデスクの数や椅子の数を見るに十人程度だ。


私が不思議そうに首を振っているのを見たミリアは、


「ああ、ちょうど今ね、上級生と中級生の遠征実習があって、大体の教官は出払っちゃってるの」


「はあ・・そんな時に私みたいな新参者がいて大丈夫ですか?」


「大丈夫っ!・・ん~、みんな下級っ、じゃなくてちゃんとしてるから!」


「はあ・・?」


「おい!ミリア!リク!朝礼だ!行くぞ!」


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


ついていった先は校庭。

そこには埋め尽くすほど、は言い過ぎだけど、いっぱいいる。

ワイワイ・・ガヤガヤ・・


「静かにしろっ!では朝礼を始めるぞ! 気を付けぇっ!」


バッ 目の前の生徒全員が綺麗に姿勢をただす。


私はどうすれば・・

ミリアをちらりと見ると、彼女は特に静観している。

だとすればこの指示は生徒だけにみたいだ。


「知っての通り今日ここにいるのは下級生の諸君のみだ。

これをいつもより快適に過ごせると楽観的にとらえるか、

今の自分が、外の環境に出ることを許してもらえないような弱い生物だということを噛みしめるのかは・・

お前らのっ! 貧弱な向上心次第だっ!」


ハイッ!!


教官・・・初めて聞いた時、それは教師の間違いいだろうと思ったけど、

目前の彼女は、それそのものだ。


「よし。 事務連絡だ。

今日からここに配属された新たな教官を紹介する。」


アテリーは振り向いてこっちへ来いと手招く。


「あっ」  

困ってミリアを見ると、

「ふふっ、ガンバ」


「彼女はリクだ。主に基礎学と地政学を担当する。じゃあ、簡単に紹介を」


「はいっ・・どうも、リク・レk・・リクです。」


ヨシルさんに言われたことを思い出した。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


「リク。すまないが、君がコープの娘だということはしばらく伏せてほしい。

理由は、きみに降りかかる面倒ごとを避けるためだ・・。」


そりゃそうだ。

『英雄の娘』・・それだけで誰かの切り札、誰かの弱点だ。


「まあ、レシオンだけを封じてもらうだけでいいんだ。

大丈夫さ! それさえ守れば君を襲うヤツなんてこの国にはいないだろうからっ」


ヨシルが何を感じ取ったのか、焦った様子で。


「大丈夫ですから・・・」


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


「リクです。」

危なかったあっ・・


「好きなのは、動物です。犬とか。・・猫とか。(笑)」


何を言ったらいいんだ?

どうしよう、いや、自分は真面目で平凡な人間だから、これくらいシンプルでいいはず。

頑張れ!って発破でもかける? いや、そんなことして『また熱血キャラか・・』なんて思われたくない。


はあ、これが自分の悪い癖だ。

他人と会話しているはずなのに、いつの間にか自分の思考上の相手と話しているみたいな感覚になる。

それは思いやるとはどこか違う、

どこまでいっても、距離が縮まった気になれないのだ。


「よ、よろしくお願いします。」


パチ・・パチ・・パチ・・


まばらな拍手、拍子抜けかもな。



本作品を読んで頂きありがとうございます。


キャラクター紹介


ヨシル・ルマン  (35)

魔人。 昔は軍に属し、その強さと残酷さから『豪将』『第六天』と呼ばれたが、今は人事部(教場を司る役職)の部長など、デスクワークに苦しめられている。

リクの父、コープ・レシオンを深く慕っている。


寮母:マリス・カンカル (43)

クマの獣人。夫と共に暮らし。ヨシルと強いつながりがあり、ここ近年の教官さぼり件数は驚異の0。




同僚:アテリー・サナンス (28)

魔人。かなり服装はきわどく、先生が着るようなものではない。

おもに担当科目は対人剣闘、対人魔導。

10回を超える見合いをしてきたが、全敗。親も諦めている。




ミリア・コルトーン (21)

魔人。 自分のファッションセンスに忠実。かといって趣味はショッピングというよりは、実験やそのための素材収集。

担当科目は薬学、工作。

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