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異世界に存在するのか、東京よ

どうも、コーフィーブラウンです。


どうぞお楽しみください。


ここは日本、電車の中。

あ、あまり声は出さないで。  そういうルールなの。

私はリク・レシオン。

とある編集社でカルチャー誌を担当しているサラリーウーマン。

連休明けの出社はしんどすぎる・・。


「はあー・・・」 斜め前にいたサラリーマンがため息をついた。


つられて私も少し息を長く吸ってしまいそうになる。

またか。

今日一日で一体何十回聞いてるのか。

そりゃあ、全ての声がネガティブなものではないが、私の貧しい価値観にはそう写る。

そして勝手にこれがこの国の日常風景だと思っている。


だって解放死なんて言葉が数年前に流行ったんだもの。


別にみんな死にたいほどつらいわけじゃない。

娯楽も日々進化していく。

でも、あまりの危機感のなさに、様変わりしないサイクルにみんな呆れている。

ひと昔前には、”転生”というジャンルが流行して随分と異世界に憧れを抱く人が続出して・・・

かく言う私もその内のひとりなんだけど・・

そんなのは昔の話。


適当に潜っていたSNSのアプリを閉じて、溜まった受信を処理するために個人用のコミュニケーションアプリを開くと、


~あの『異世界大全』の新たなDLCが出たーッ!~


目新しかったVRMMOなんていうのも、あっという間にこの業界の主流となった。


プシューッ 干渉型バーチャルで作られた扉が開き、


「ふうっ」降りる。 

ピロリン ー決済完了、ご乗車ありがとうございます。ー

少し歩いて、門をくぐると

ピロリン ー健康のために階段はいかがでしょうかー


「いや、今日は疲れた。」


ピコン ー承知いたしました。ー


シュン 出てきたエスカレータに乗ってあっという間にいつもの扉のまえに立つと、

ピコン -顔認証完了、開錠されました。ー

ガッチャリ・・・


「はあー・・」


こんな毎日だ。

ーおかえりなさい。リク様ー

「ただいまー」

ー一件通知があります。ー

「今日は一件だけか、珍しっ」

ーコープ・レシオンの子、リクよ。ー

「ん?」

聞きなじみのない声。おっさんだ。

ー私は魔王。そなたに話がある。面と向かって話がしたい。返事をくれ、ではな。ー

「は?誰?」

ピコン ー差出人は魔王です。ー

「そんな奴知らないんだけど。」  どこの厨二だよ。


「そいつに返信送るわ」

ーピコン、了解しました。ー フォーン

「おい。どなたか知りませんが、今度そんなしょうもないの送ってきたときは分かってんでしょうね。

通報させてもらうから!」


そのあともブツブツ言いながら部屋着に着替えて、

晩ご飯のサラダを作り終わって机に置き、クッションに座り込む。


「はーっ・・疲れっ」

おかしい。下ろした腰が一向にクッションにたどりつかない。


「うわあああああぁぁ・・・」


まるでクッションがダークホールのように私だけを闇に引き込んだ。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


「アイシテイル」そういって私の半分をつくってくれた人が自分の頬をなでる。

父との思い出はずいぶん残っていないけど、その分きっと残ってる記憶は貴重なんだろうけど。

でも。

久しぶりに心地よい夢だ、夢自体いつぶりだろう。


でも、

でも硬い。冷たい。なんで、ソファじゃないの?


ゆっくり目を開くと見慣れぬ黒い天井。

「高くない・・?」

まるで立派なホテルのロビーみたいで、

その目線のままみわたして・・・ヒュッ 喉がひくつく。


そこには、バケモノがいた。

黒くて、でかくて、どこか懐かしい。

右壁の窓から淡い紫色の夕陽が差し、奴の身体のフォルムがより鮮明になる。


紅い瞳が心臓を突き抜いているようで、全身が動かない。


なんでか、体を起こせない。


「目を覚ましたか」 


「・・・!」


「オゼロ様。」


「ああ、すまん。」    男が目線を外して髪をかき分ける。


はっ

呼吸が戻った感覚がする。


ピクッ指先は動く。

息も、瞬きもリアルすぎる。


夢じゃ・・ない・・


すぐに、よろけながらも立ち上がり身構える。


「・・ぇっ」 

彼の目線はいくら壇上に居るからといえど、はるかに高く、壁のように大きな椅子の背もたれにも負けないぐらいの身体付きだ。


「でっか・・」  座っているとは思えない。

だめだ。 逃げないと。


ダッ

映画みたいに窓を割って、それで、飛び降りて・・


と同時に温かい風が追いついた。


え? 追いついた?

まだ数歩しか進んでいないのに? 何かが隣にいる?


見上げると頭に牛骨を被った騎士。


「・・・うぐっ!?」


巨大な騎士はその大きな右手だけでスーツ姿の女性の頭と体を抑えつけた。


すごく重い何かがのしかかっているしとにかく、「リ・・アル・・・」


「して、お主はリク・レシオンだな?」


驚いた。

「私をっ・・知ってっ・・?」

誰だ。 私はこんな同級生をもったつもりはない。

会社の中にも、あやしい人物は見当たらない。


「ああ。」


おかしい。  いくら私でも、こんな馬鹿馬鹿しいゲーム買った覚えはない。


もがく私の口から血が出てるのを見たのか、立派な椅子に座り込んだままの奴が右手を挙げた。

それを見て騎士はすぐに手を離し、姿勢を正す。


「私のことは知っていないのか?」

奴は少し不思議そうに手を顔に当て、私の顔を覗きこむように前かがみになる。


「・・・存じ上げません。」


すると近くにいた牛骨の騎士が急に、

「そんな訳ないだろう!」 

ガチャッ と重い金属の装備を鳴らしながら迫る。


「ひっ」  びくっ

訳わからないのはこっちだよ・・・


「おい、本当に知らないんだな?」 


私は少し迷いながらも、うなずく。


「これは驚いた。・・・お前、父の名は?」


「父、ですか」


もう父はいない。

母の口癖だ。

自分たちの目や耳に、頑張る他人の父親や幸せな家族が入ってくるたびに呪文のように。


父はどうしてこんなにひどい仕打ちをするのだ。

残酷な人だ。


でも私の少ない記憶での彼は違う。


憧れの人だ。

ただ、ある日を境にいなくなった憧れの人だ。


「コープ・レシオンです・・」 


「そうか。 そうか・・そうかそうかぁ・・」

目を細める。

異界の帝王は初めて目線を私からはずして、遠くをみた。


何よ、その反応。

あんた達もお母さんと一緒、どうせ聞いても教えてくれないんでしょ?

・・・でも、もし、そうじゃないなら。

だめっ!


開きかけた口をかみしめて、顔を背けるスーツの女性。

だけど・・けどっ・・!

あいつには何かある、でも。

止まって、私!

これ以上関わるのならもう戻れないのは明白なのに、


「父を、知っているのですね!」


「ああ。」


これ以上はだめなのに。


「今はどこに!そもそも生きているの!?」


「おい!言葉を選べ!」   うるさい  


「うるさいっ! お前には聞いてないッ!」

騎士が少したじろぐ。


彼の顔は次第に曇っていく。

そうか。


「父h・・」

「君の父さんは亡くなった」


「・・・っ」 ほら、やっぱりそうじゃん。


「私の父とともに。君の父さんは私の父の部下だったんだ。」


もう分かってたのに。

いらない、慰めの言葉は。え?


「私の父は東京で・・」


「東京か。知っているぞ。君の父さんが話してくれた。」


そうだ、それよりも超重要なことがあったはずだ。


「ここは・・・どこ?」


「見た方が早い。」

パチン 

彼が指を鳴らすと、カーテンが開かれた。

と同時に見えた光景は、青白い月のまぶしさと、紫の洞窟のような建物と、真っ黒の山。

バーチャルが終わらない。


「ホントの、話・・・?」


座っていた者がいつの間にか近づいてきてこう言う。


「魔界へ、ようこそ」



本作品を読んで頂きありがとうございます。


キャラクター紹介


キャラクター紹介


リク・レシオン (23)

主人公で人間。 担当科目は基礎学、地政学。 何かにつけてすぐに悲劇のヒロインぶる。


カリフ・エラ・オゼロ (42)

魔人、というより魔王。

本来この世界では、『魔王』は偶発的かつ、継承されるものではないが、

この男の圧倒的な力でその座を引き継いでいる。



これから応援、何卒宜しくお願い致します。

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