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恋に踏み出す、その前に。──たった一歩が、こんなにも遠くて、愛しくて。

作者:輝
 現代日本、都心から電車で一時間の丘の上にある民間交流施設「星見坂レジデンス」。ここでは二十代の若者が「契約共同生活」と「地域交流活動」に一定期間参加する。朝は敷地と遊歩道の清掃、昼は商店街の空き店舗を使った土曜市の手伝い、夕方は子ども向け読み聞かせ会や高齢者向けの配食準備――生活と地域が地続きの毎日だ。
 谷川凌は、段取りと合意形成に強い進行役。水谷愛梨は、輪の外から場の空気を読み、必要なときにだけ言葉を置く観察者。
 凌は「人間関係の詰まりをほどく力」を見込まれて招かれ、愛梨は「自分の感情に距離を置いたままでも暮らせる場所」を探してここに来た。
 同じ台所を使い、同じ玄関に靴を並べ、当番表に沿って働くうち、二人は“恋と呼び切れない関係”のまま、気まずさと安心を往復する。雨の日に凌が差し出した一本の傘、台所で皿を拭きながら交わす短い相談、ルールをめぐる衝突と歩み寄り――具体的な出来事が二人の距離を少しずつ測り直していく。
 る夜、連絡が疎かになりがちな伊織未奈が帰ってこない。門限後に動く必要を悟った凌と愛梨は、施設管理者に連絡して緊急外出の許可を取り、玄関脇の記録簿に目的と時間を明記して外へ出る。ルールを守ることと仲間を守ること、その両立を選んだ行動が、二人の信頼を深くする。
 計画表で走り続ける沢田翔大、静かに不安を拾う鳥澤礼奈と支える側に回りがちな伊佐俊樹、先読みで背中を押す戸野ほのかと「提案が信用されにくい」友坂拓矢、機械のようにタスクをこなす上地拓夢と緻密に準備する菅谷さくら、心を開くまで時間が要る渡邉理絵と直感の確かな河合龍也――日々の選択と小さな失敗、ささやかな成功が、凌と愛梨の心に反射していく。
 そして:卒業の時期が迫る。関係に名前を付けずに並んできた二人は、「結果より、伝えること」を選べるのか。手紙に残した本音、静かな再会、穏やかな告白。恋はゴールではなく変化のきっかけ――その実感に至るまでの時間を、生活の手ざわりと会話の温度で描く恋愛物語。
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