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妖しいスピリッチャー眼鏡  作者: 山田ヤマダ


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3/3

妖しいスピリッチャー眼鏡3

ホラーです。

オタク女子の岩見沢莉子のクラスに、謎の転校生。

人付き合いが苦手な莉子に転校生が強つよに絡んでくる。

どうする?

 妖しいスピリッチャー眼鏡3


 私は岩見沢莉子。

 六月も中旬になった。例年になく暑い。私なんかは老婆の体力なので、毎日熱中症が怖い。

 私の農電大学附属高校の三年生は三十人学級が七クラスある。一年生は五クラスだから受験者が減っているのか全体の中卒人口が減っているのかは知らない。

 私は三年六組。一応『進学クラス』と言われている。外部受験を希望する生徒が多いクラスだ。でも七割は、附属のメリットなので農電大学に進学する。外部受験する生徒も農電大を併願する。

 ちなみに三年七組も進学クラスで、六組は文系クラス。七組は理系クラスとされている。

 理系進学クラスの学級委員長は猪瀬。この辺も猪瀬への嫉妬心を煽る事実だ。私も昔は数学ができた。でも猪瀬は、部活掛け持ちと配信に忙しくて、実質の委員長は副委員長だと聞いている。

 猪瀬も外部受験するのか聞いてみたら「私は成績順位で三番以内なら農電大でも奨学金が出るからしないよ」と、また羨ましい事を言う。でも私も学費は父の口座から引き落としなのでお金の心配はしていない。羨ましいのはおかしいのかも知れない。

 でも猪瀬・・・いつ勉強してるんだ。

 ちなみに心美は三年五組。『一般クラス』と呼ばれている。一組から五組は一般クラスだ。ほとんどの生徒の進路は農電大に進学するか就職の二択。「外部受験するなんて言うとヒーローになれる」と、心美は言う。

 

 月曜のホームルームが始まる。

 担任の柏亜紀は体育教師。いつもグレーと黒のジャージ。髪はヤンキー風の茶髪だが「地毛だ」と言う。

 「はい注目。転校生を紹介します。」

 男子が言う。「マジか!三年生の一学期も後半だぜ」

 柏「うるさい。」

 こいつは蓮司。農電附属高校野球部エースでキャプテン。前大会ではベスト16に入る快挙をあげた。でも農電大学の野球部は何年か前の不祥事で壊滅状態で不良部員の遊び場なので、他の大学に行こうと勉強している。

 黒い学ランの男子が入って来た。我が校は紺ブレだ。

 「大葉力です。よろしくぅ」

 みんなも「よろしくぅ」と応えた。ノリが良いのがこのクラスのいいところ。

 でもこの人?なんか声のトーンがおかしい。

 細かいビブラートが耳障りで頭に刺さり込んでくる感じ。不快。

 私の右横の女子が楽しそうに囁く。顔は美人ぽいが体は貧相な舞ちゃんだ。

 「なんかイケメンだよね」

 「そうかなあ」

 柏が言う。

 「じゃあ、岩見沢さんの横が空いてるから」

 私の左、窓際の席に来る。不安。自分の肩が上がるのを感じる。

 髪は立てていて、つんつんヘアー。体格は太っても痩せてもいない。身長は正人ぐらいだから百七十ぐらいか。

 その目はつり目で、かっこいいと言うよりギョロっとしていてちょっとキモい。

 口は漫画のように、口角を片側だけ上げてニヒルな感じ。実写で初めて見た。ヤバいやつ。

 舞ちゃんが机に乗り出して私越しにその男子に言う。

 「わたし舞っ。よろしくねっ」

 かわいいな。

 でもその男子、舞ちゃんには答えずに言った。

 「岩見沢って下の名前何?」

 ビクッとした。

 おぅい・・・舞ちゃんは無視かよ。かわいそうだろ?

 「え、あの・・・莉子です。」

 男子は応えずにどっかり左の席に座った。

 なんとなく涼子に絡んだ不良大学生のような臭いがした。

 「莉子ってどこに住んでんの?」

 んんん?初対面だろ?呼び捨てだし、住所聞いてどうすんだ。家に来る気か?

 「あの・・・何で?」

 男子は半笑いだが口をへの字に歪めて言った。

 「何でじゃねえよ。聞いてんだろ」

 「・・・」

 こいつ怖え。一方的に何言ってんの?常識ねえ。あほなの?馬鹿ヤロウだ。

 この男子は私の左腕を拳でトントン突いてきた。

 「聞いてんだろ?」

 うわ。感じ悪りい。いてえ。涙が出る。人の気持ちが分からないサイコパスなのか?

 舞ちゃんが眉をハの字にひそめて言った。

 「あ、ごめんね大葉くん。この子人見知りなの。」

 「あ?ははっ」

 バカにしたな?バカにバカにされる屈辱。いや、バカな奴ほど人をバカにしたがる。

 頭に来る。でも言えない。いや、言わなくて正解。これ以上噛みつかれても困る。バカと関わる時間が惜しい。

 柏「こら、そこ!ホームルーム始めるよ!」

 男子はふざけた言い方で返す。

 「ほ〜い。見ろォ怒られちゃったじゃねえかぁ」

 男子は両手を頭の後ろに当てて前に向き直った。

 教室は薄い笑いが起きた。

 こいつ絶対ヤダ。

 

 休み時間のチャイムと同時に廊下に出る。

 振り返ってそっと教室の中を覗くと、やつが私の置いてあるカバンを掴んだ。ヤバい!手癖も悪いぞ。

 舞ちゃんや男子達が大葉に話しかけた。

 「大葉くんってどっから来たの?」

 あいつはカバンから手を離した。ほっ。

 「埼玉ァ」

 バカっぽい。ムカつく。

 「学校は?」

 「公立だよ。」

 「三年生で転校なんて大変だね?」

 「ここって附属でしょ?受験考えたらここにするのが一番だよ。」

 「へええ」

 なんか普通。でもさっきの態度を思うと、急にブチギレそうで怖い。

 私の横に太め女子のむっちゃんが来た。

 「何してんの莉子。」

 睦美。この子とは三年間一緒のクラス。身長は百五十六センチで、私より二センチ低いが体重は二倍以上ある。

 「転校生怖い。」

 「ふ〜ん。莉子はあいつダメなんだ。」

 「むっちゃん!癒して!」

 後ろから抱きついた。柔らかくて抱き心地が良い。

 む「よしなさい。」

 むっちゃんは別に抵抗しない。

 む「イケメンなのにね。」

 「そう?あの目つきキモすぎるけど」

 「ええ?カッコいいじゃん」

 「うそお」

 カッコいいか?むっちゃんも舞ちゃんも何か変だ。

 アニメ雑誌を持った女子が通りかかった。マキコだ。

 「ごめんマキコ。私のカバン取ってきて」

 「何で?」

 顔は童顔で可愛いのに低い声。ギャップ萌えする男子後を絶たず。

 「転校生怖い。何も話したくない。」

 「あそう。」

 マキコは堂々とした歩きで私の席に行きカバンを持ってきてくれた。

 むっちゃんを放してカバンを受け取る。

 マキコ「なんかくれ」

 「缶ジュースでいい?」

 「ゼリーの」

 「了解」

 去ろうとしたらむっちゃんが言う。

 む「ちょっとぉ、ええ?早退なの?」

 「職員室行く。」


 職員室

 担任の柏亜紀と話す。

 「あいつ怖いです。こっちの話も聞かないで下の名前聞くし、住所とか聞いてきます。カバン取られそうになったし、限界です。席離してください。」

 柏「そんなに嫌うなよ。かわいそうだろ?可愛いやつじゃん」

 「ええ〜?怖いですう!」

 何だろう。みんなの認識がおかしい。みんなあいつに肯定的。私がおかしいのか?

 それともあいつ、私にだけきつい態度とってないか?

 柏「そうやって眉間に皺を寄せるな。何とかする。」

 「お願いですよ?私学校来れなくなっちゃう

 柏「そう担任を脅すな。」

 

 火曜日

 昨日あの後、席は廊下側の委員長と代わってもらった。

 学級委員長は長身百八十五センチの男子バスケ部。イケメンではないがバスケをしているときはカッコいい。でも、普段は腰の低い男。高一から高三まで三年間、どのクラスでも学級委員長だった。いつも「委員長」と呼ばれているので「桜庭アツシ!」と本名を呼んでやると照れる。

 大葉が委員長に言う。

 「あんたがこのクラスの委員長?」

 委員長「うん。」

 「うんじゃねえよ。なんかムカつく」

 「ええ?じゃあどう言うんだよ」

 「うぅるせえぇい」

 大葉はおどけて右こぶしを委員長の腕にグリグリ擦り付けた。

 おどけ声がムカつく。顔は笑ってるが気に食わない感情がありありと伝わってきて気分悪い。

 大葉と目が合った。ニヤッとしやがった。キモい。

 委員長は大人しい。あいつ・・・気の弱い人に対して、嵩にかかって上から言ってくるみたいだ。たちが悪い。

 でも委員長は委員長だから、腰は低いが気は強いぞ。

 委「ばあか!痛ってえよ」

 委員長は軽く大葉の拳を手で払った。

 大「おう?なぁんだよ。やるか?」

 ええ〜?『やるか?』じゃないだろ?今の流れでケンカすんの?バカなの?

 委員長も唖然。みんなも引いた。

 大葉「へっへぇ。冗談に決まってんだろ?」

 こいつ・・・また委員長の腕にこぶしをグリグリした。

 ダメだ。キモくて見ていられない。

 大葉「委員長ってどうやったらなれるの?」

 委「成績だよ。先生が成績順に割り振るんだ。」

 大葉「ほおお、頭良いんだ君ィ。」

 感じ悪いなあ。

 

 水曜日

 委員長が学校を休んだ。皆勤賞が自慢だったのに下痢嘔吐だそうだ。

 クラスではみんなあいつの奇異な行動に注目している。

 本人も周囲の目を意識して、常に独り言風に感想を口に出していて、下手な役者の演技をずっと見ているようで、腹立たしい。注目を浴びているのが嬉しいみたいで感じ悪い。

 集団の中心にいないと気が済まないタイプを『貴族趣味』と言う。『派手好み』と言う意味ではないと聞いたのは最近だった。

 でもまた一日中あいつの『劇』を見ないといけないかと思うと腹立たしくて頭が痛い。

 あいつが椅子をガタガタと動かして女子の真横に座った。

 その子はマキコのオタク仲間の清美ちゃん。この子とマキコとは二年生から私と同じクラス。この子もベラベラしゃべる方ではないので私と話したことはほぼ無いが、私が珍しく少しだけ参加した二年生最後のクラス会では、カラオケでメタル風のアニソンで絶叫していたツンデレちゃんだ。マキコはその時、デスヴォイス部分を担当して盛り上がったが、声を潰しそうで心配だった。

 あいつが清美ちゃんの肩に手を回した。セクハラ!

 大「ふふん。俺の彼女ぉ」

 野郎ふざけんな!こいつ、気の弱そうな女子を狙ってんな?卑怯者!

 でも清美は強い子だぞ?

 清美ちゃんが立ち上がった。

 そして思いっきり右手を後ろに振りかぶってから、あいつを引っ叩いた!

 『バチン!』と乾いた音が教室に響いた。イエーイ!よくやった。

 大葉は自分の左頬を両手で押さえながら言った。

 「痛ええ、こんの野郎、俺、仕返しすっからな」

 こいつ!自分が悪いのに・・・分かんない歳でもなかろうに。いや『分からない・自分が正しい』を周囲に主張して居るのがキモい。それとも本当に、叩かれて当然の事しても分からないんだろうか。

 男子が数人立ち上がった。

 まずいな。修羅場になるかも。

 女子二人が顔を見合わせて頷き合って立ち上がった。二人のうち一人は横のもう一人の女子の腕を引っ張って連れて行った。三人は大場に詰め寄った。

 女子1「あんたねえ、そのふざけた態度やめてよ!みんな迷惑してんのよ!」

 女子2「ここは進学クラスなの!ふざけて勉強の邪魔するんなら他のクラスに行って!」

 ヨシ!よく言った!言ってくれた!あんた達は偉い!

 女子1「てゆうか学校やめてくれる?他に行ってよ!」

 おお、言うねえ。そのぐらい言いたかった。

 あいつが嫌だったのは私だけじゃなかったんだ。

 でも言い過ぎかも、それパワハラっていうか、いじめと言われてもおかしくない。

 一人目の、この子は心菜。三つ編みにメガネ。ガリ勉風だが演劇部で二年の時に某エルサ役をやった美人。模試で某国立大が圏内に入ったと言うから必死なのはわかる。

 二人目は優芽ちゃん。ボブを真ん中分けにして後ろでまとめている。一年の時に一緒だった。文化祭の作業の割り振りで揉めて、クラスが険悪な雰囲気になった時に泣きながらみんなを諌めた。男子達もそれで矛を収めて事なきを得た。農電大にはない看護科のある大学に行こうと勉強中。

 後ろで黙っている長身の女子はサキ。引っ張ってこられた。

 入学当初は茶髪でおっかなそうで、最近の竜二のように『不良枠』だろうと言われていた女子。サキは高校から柔道を始めて東京都大会で個人優勝した。でも全国大会で神奈川の『アヤ』に三秒で投げられて、畳の上で大の字になって泣いている動画を最近見た。笑いながら投げるアヤが怖かった。大会の後、彼氏の影響で勉強するようになって高三からは進学コースにいる。

 大葉は片眉をあげて女子たちを見ている。いやな表情。やっぱキモい。

 大葉は立ち上がった。やる気か?

 大「そんなキツイ言い方しなくてもええやん!」

 泣いた。

 裏返った声で言い訳、

 「おれ、前のガッコで事件に巻き込まれて退学になってしもてん。このガッコダメやったらさいごやさかい、勘弁してえな・・・」

 みんなは『仕方ないなー』みたいに苦笑して互いに顔を見合わせた。

 え、マジなの?どうせ嘘泣きだ。何で分からないんだろう。みんな優しい。

 私だけ冷たいのだろうか。

 いやでも、暴力振るうDV野郎は、泣き落としと極端な優しさで誤魔化して女性をダメにするというから、そういうことを知っていると同情心は湧いてこない。

 言った女子二人が謝った。謝らなくていいのに。

 「ごめん大場くん。」

 「私も言い過ぎだった。でも君、ツッ張らないといい感じだね。」

 大葉は泣き笑いを見せて言う。

 「何やーもうー褒めんといてやー」

 絶対嘘泣き。

 でも、あんなに怒ってたのに、こいつを褒めるなんて信じ難い。

 サキ「大人しくしてなよ。せっかくいい男なんだから。」

 だからさ・・・イケメンじゃないと思うの。サキまで何言ってんの?


 昼休み

 トイレから帰ってきて自分の席に着く。

 この学校には学生食堂も購買のパンもあるが、お弁当派も多い。私も最近はお弁当。少なめにできるし、かつ栄養バランスも調節できて丁度いい。と言っても私のはご飯とハムと野菜ジュースだけだが。

 向こうを見ると、舞ちゃんが弁当を広げて、フタにおかずを置いていた。横にいるマキコもそのフタにご飯を取り分けた。何やってんの?

 舞ちゃんがそれを隣の席のあいつに渡した。

 あいつがそれを割り箸で喰らう。

 「いやあ、すまんなぁ。おれ弁当忘れて逆に得しとるやん。」

 それを微笑ましく見守る舞ちゃんたち。

 嘘だろう?あんなにキモいやつに?籠絡されるにも程がある。

 気分が悪い。教室を出た。どこで食べよう。いやもう食欲がない。

 

 木曜日

 朝。家で朝食。

 最近いつもギリ起きだった心美が今日は一緒の朝食。

 心美「いやあ、配信の編集やっと終わったわ。」

 でも私はあいつのせいで学校に行くのがつらい。ため息が出る。

 「ふう」

 「なに?」

 「何って?」

 「ため息。憂鬱そうだね。また『やめやめ病』なの?」

 「うん・・・正直言ってもう辞めたい。キモいやつ転校してきちゃった。」

 「あんたは神経質すぎるのよ。ほとんどはそんなに嫌なやつじゃないのよ。」

 「もう!みんなそうなんだから!会うたびにあいつに籠絡されていく」

 「会ってねーし。」

 「あいつは侵略者よ!インベーダーよ!」

 「古いゲームか。」

 「私が悪いの?私の見方が間違ってるの?」

 「泣きそうじゃん。待ちな。落ち着け。」

 「もうヤ!」

 涙がジワった。

 「よしよし。お姉ちゃんがメガネで見てあげるからね。」

 「何がお姉ちゃんよ。私のが二ヶ月も年上じゃん」

 心美は眼鏡をかけた。

 「・・・男の霊が憑いている。姿がハッキリしているから生き霊ね。ふう!莉子モテる!」

 「モテないよ。ふざけないで」

 「でも赤っぽいから怒ってるのかも。」

 「どんなやつ?」

 「髪の毛立てて、ツンツンヘアーの目つきの悪いやつ」

 「やっぱり!でしょ?目つき悪いよね?イケメンじゃないよね?」

 「イケメン?じゃあないよね。チンピラ風。フフッ。カツアゲされそう」

 「なんか言ってる?」

 「ええ?莉子に?・・・あなた、何か言いたいですか?」

 心美は、うんうんと、うなづいた。

 「フフッ『俺に逆らうなよ』だって。『トップ取ったるねん』だって。」

 「馬鹿ヤロウだね。やっぱりあいつだ。」

 「でもぉ、あのクラスって臭いよね。誰か体臭キツくない?」

 「それスメハラ。分かんないけど、それ言っちゃダメよね。」

 「でもホントだもん。動物園みたいな?」

 「ああ!だよね!わかる!多分あいつだ。」


 学校。クラスに着いた。

 引き戸を開ける。

 むっちゃんが教科書を見せて、あいつに勉強を教えていた。

 「むっちゃん・・・そんなやつと仲良くしないで」

 は、口に出してしまった。

 大葉が睨んだ。目を逸らした。

 むっちゃんが言う。

 「リキちゃんが数学教えてほしんだって。」

 「り?・・むっちゃん、お前もか」

 大葉が私に言う。

 「莉子お、最初おれ緊張しててん。変なこと言うてごめんなあ。許してやあ」

 みんなが見た。無言の圧力。私も謝れって?仲良くしろって?

 逃げる!走って逃げた。

 

 始業のチャイムが鳴る。

 それを外から聞いている。

 今日は病気でもサボりでもない。

 人のいないテニスコートが見える中庭のベンチに居る。職員室や教室から見えない位置を知っている。

 だめだ。もうクラスで孤立している。わずか四日。

 帰るか。

 ベンチから立つ時にポケットでメガネケースが突っ張った。

 心美に貸してもらった眼鏡。

 せっかく貸してもらったのだから、クラスを見てみよう。

 

 眼鏡をかけて授業中のクラスを見た。

 むっちゃんが見えた。

 頭に茶色の小動物が乗っている。は?

 床にもいる。何で?

 いやいや。これは霊だ。

 何?リス?じゃない。胴が長い。これはイタチってやつだな。体長は長いしっぽを入れて四十センチぐらい。

 可愛い、くはない。小さいけど顔は獰猛な感じ。

 これは霊だ。本物は写真ではもう少し可愛かった気がする。

 でも、イタチは肉食で、蛇も食べてしまうそうだから、ウサギなんかよりずっと獰猛だろう。

 教室にたくさん居る。クラスメイトの頭や肩に乗っている。何じゃこれ。どういう状況?

 あいつを見た。

 あいつの後ろには茶色と黒の服の人がいる。斜め後ろからなので顔は見えていない。

 足先は足袋に草鞋。和服?でも袖が細い。腕や手の甲やスネには黒い金属製のガードみたいのを着けている。

 忍者?茶色の上着は袖のない長めの羽織り。白髪混じりでグレーの髪を肩までの長髪にしている。

 時代劇の忍者の頭領みたいな感じがした。

 あいつが急に振り向いた。同時に霊もこっちを見た。顔は黒くて見えないがつった赤い目だけが光った。

 走る!全力で走る!

 振り向くと床をイタチのようなものが黒雲のように迫ってくる!すごい数!数百はいる。

 振り返らずに走り、地下鉄に乗った。

 息が苦しい。床に膝と手をついた。

 周りの心配の視線を感じる。

 気を失いそう。でも、ここで倒れたら追いつかれて動物まみれになる。

 何とか立ち上がる。今度は立ちくらみでクラっとしたが、ドアに手をついて耐える。

 駅に着いた。

 ホームは静かだ。大人たちが出口を目指して歩いていく。

 眼鏡をかけた目に、地下鉄の後方の闇からウオオと黒雲のようなものが吹き出してくるのが見えた。

 来る!また走った。私のマンションはすぐそこだ。

 エレベーターを上がって廊下を走って玄関のドアを開けた。

 後ろから何かがザザザと近づく音がする。

 ドアを閉める。何かがドアの外側にガガガと当たっている。

 その後カリカリとドアを引っ掻く音がする。

 霊が通り抜けてこないか心配。とりあえずそこから逃げた。

 奥のリビングでソファーにうずくまって毛布を被った。

 ドアではカリカリと引っ掻く音が続いている。

 ああ、眼鏡を外せばいいのか。眼鏡をとったが、音は続く。

 何分かで聞こえなくなるはず。


 目が覚めたらもう四時。気を失って眠っていた。

 「ただいまぁ」

 ミユキだ!帰ってきた!まずい!動物霊が入ってきちゃう!

 立ち上がったが、ミユキは普通にリビングのドアを開けて中に入ってきた。

 訊いた。

 「ええ?イタチは?」

 「え?見えてたんだ。ああ、眼鏡ね。ここんところ莉子ちゃんに変なのがついてきてたから家に結界を張ってもらったの。守護霊の水蓮さんがね『汚らわしい獣なんぞ一歩たりとも立ち入らせんぞよ!』ってスゴイの。うふ」

 「ミユキ知ってたんだ。クラスのみんなにイタチが乗ってた。そのせいか、みんな大葉ってやつを受け入れる感じなの。きっと洗脳よ。あの霊たちがみんなの気持ちを誘導してるんだわ。」

 「でも莉子ちゃんの心の中には、鬼と妖怪の巫女さんが居るから、小さい獣の霊は取り憑けないよ。」

 「鬼とか妖怪とか、えらい言われようだけど」

 「うん。良くはないんだろうけど、それでも護られてるんだと思う。」

 「ああ、でも分かった。それで私だけ見え方が違うんだ。」

 「でも、何だろうね。私もこういうの初めて見た。」

 「忍者だったよ。忍者の偉い人みたいなのが、あいつに憑いてる。」


 金曜日になった。

 目が覚めた。まだ午前三時。トイレに行ってからまた寝た。

 急にビシッと体が重くなった。

 動けない。金縛りだ。

 目を開けた。

 上にツンツンヘアー。あいつだ。

 生き霊か。暗い部屋にシルエットがハッキリ見える。

 『俺に逆らうな。俺に逆らうやつはいつも酷い目に遭うのさ。委員長のやつ、俺の『使いの霊』が弁当に糞してやったら腹痛になりやがった。霊的な毒さ。俺を引っ叩いた女だって今に病気になるぜ!』

 うるさい。早くどけ。生き霊だけに自己中心。自分の主張をベラベラと。それに関西弁どうした?

 『関西弁って親しげな感じするだろ?あいつらの警戒心解くには一発だったな。チョロかったぜ!』

 詐欺師かよ。

 『お前みたいに、たまに俺の『使いの霊』が効かない奴がいる。お前、最初に会った時から嫌な目で俺のこと見てたろ?そういう奴は最初に集中してやっつけるのさ。でも、しつこく住所聞いてもお前疑り深いから言わなかったな。高校生なんて強めに言やあ何でもいうこと聞くかと思ったのにな。』

 そんな質問おかしいだろ?住所聞いてどうすんだ。

 『家行って火ィつけてやろうと思ったのに。』

 ひでえ奴。言わなくてよかった。危な。

 『前の学校でもそうやってクラス委員長から生徒会長まで成り上がったぜ。俺は何でも出来る選ばれた魂なのさ!何もしなくても大半の敵はいなくなるのさ!』

 じゃあ何で転校してんの?

 『お前みたいな言うこと聞かない奴がいて、ナイフで脅してやったのさ。』

 最低じゃん。あたしも刺すって?

 『かもな。でもそいつのせいで退学で保護観察さ。』

 あんた事件に巻き込まれたって言ってたじゃん。自分のせいだろ。

 『いやいやいや、絶対巻き込まれだ。あんなやついなきゃ万事俺の思う通りだったのに。』

 自分の罪が分からないんだね。サイコパスだね。

 『うるせえ!お前なんかもう学校来んじゃねえ!何とか色々な手ェ使って農電大附属に潜り込んだのに邪魔すんじゃねえ!』

 行かねえよ。お前なんかの相手するだけ時間の無駄だよ。

 『そうしろ!おれはあの学校の生徒会長になって、大学でもトップに立つ。そして政治家になって日本の首相になって、天下に号令する!』

 どうにもならない天狗野郎だね。

 『お前なんか死ね!』

 くっそ。

 その時、体が軽くなった。居なくなった。

 部屋のドアが開いた。また別の霊か?

 ミユキが目をこすりながら入ってきた。

 「なんか来てた?」

 「・・・うん。」

 ホッとした。

 でも、普段たまに、死にたいなんて思うが、何も分かってないバカにそんなこと言われると本当に悔しい。

 辛かった。

 「じゃあ、一緒に寝てあげるね。」

 「なーによ。可愛いじゃん。」

 「ウフ」

 「ありがとうミユキ」

 

 遅い朝食。

 ミユキも心美も正人も、とっくに学校に行っている。

 あの話はみんなに一通り話した。

 パジャマ姿でトーストをモクモクひたすら噛んでいる。

 学校に行きたい。

 でも、もうクラスはあのノリの良いクラスではなくなっているだろう。

 あいつに居場所を奪われてしまった。クラスを変えてもらうか?それも気が引ける。

 あいつは生徒会長になると言っていた。あの数の『使い』が居れば、それは出来るのかもしれない。

 そうなると私は高校も自主退学。高校中退ということになるのだろう。それは悔しい。

 携帯が机の上で動いた。いつもバイブ設定になっている。

 見るとTV通話を要求している。

 着信拒否して相手の番号にリダイアルした。電話代がかかっても顔を見せたくない。

 『何よ莉子ピ!ココミンに聞いたよ!学校に『獣霊使い』が出たって?』

 「猪瀬うっさいわねえ。参ってるのよ。」

 『大丈夫?ミユキちゃんのおかげで家には獣は入ってこないんでしょ?』

 「代わりにあいつの生き霊が来て脅された。まだその辺にいる気がする。それにあいつが獣使いじゃなくって、その後ろの霊がそれだよ。忍者の師匠みたいだった。」

 『忍者?』

 「笑うなよ?」

 『忍者って現代で言うと特殊部隊だからねえ。戦国時代とかは合戦のために総力使ってるから、霊能者も色々な呪いをやっていたって話だからね。手なづけた動物を殺して『使い魔』にするような呪術もあるかもしれない。』

 「ふ〜ん。良く知ってるね。」

 『にゃはは。莉子ピに褒められた。』

 「どうなるんだろう。みんなあんなのがイケメンに見えるんだって。」

 『多分クラスのみんなに憑いている使いの獣たちは、ご主人の獣使いが大好きだから、それが憑くと、そいつがイケメンに見えるのよ。』

 「ほう、そんなことも分かるんだ。」

 『今週わたし絶好調なのよ!今、霊的にギンギンだから何でも見えちゃう!』

 その猪瀬のバイオリズムの波はどうなっているのかが知りたい。

 その時、部屋の隅から視線を感じた。

 眼鏡をかけた。赤黒い学ランを着た奴がいる。あいつだ。

 それが首を絞めてきた。霊が叫ぶ!

 『この野郎!誰か呼ぶ気か!』

 「そんなこと言ってないじゃん!もう!」

 猪瀬『莉子ピ!ミユキちゃんの部屋に行ってお守りを身に付けて!』

 「ええ?やだあ」

 『ヤダじゃない!他に何があるってのよ!効き目は知ってるでしょ!霊を見てると波長が合って物理的な力も増してくる!早くして!今はまだ弱いけど、そのうちホントに絞め殺される!』

 確かに霊が首を絞めているが、死ぬ感じではない。

 「しょうがないわね。」

 立ち上がってミユキの部屋に行った。

 霊は入ってこれなかった。

 心美の時に病院でぶん撒いた紙でできたお守り。あれは涼子が持っていってしまったが、新しいやつが机に何枚も置いてあった。眼鏡で見るとライトみたいに光っている。

 それを一枚パジャマの胸ポケットに入れた。

 そのままリビングに行ったが、あいつの生き霊は付いてくるばかりで近づいてこない。お守りが嫌みたいだ。

 そのまま本を読んだり、動画を見たりしていたが、あいつは近くに来なかった。

 いつのまにかいなくなっていた。


 土曜日

 呼び鈴が鳴って、涼子と猪瀬が来た。

 みんなでリビングのソファーに座った。

 猪瀬「動物が憑くぐらいだから自己中心的な性格なのかな?」

 涼子「自己中心的なだけなら天狗霊よ。理性を無視してるから動物霊が憑くんじゃない?でもこの人のは昔からみたい。動物自体はご主人の言うとおりにやってるから、いわば『道具』になってるわ。クラスのみんなを支配しようとしている。」

 心美「で?どうするの?」

 涼子「ここに呼び出してやっつけちゃおう。」

 「なんか軽いノリで言ってるけど?」

 猪瀬「にゃは。涼子はたまにそういうパワープレイになるのよね。でもこの前の巫女さんの女の子は呼び出せないって言ってたじゃん?どういうこと?」

 涼子「あれは強いもん。底が知れない。」

 「霊能者二人はいいけどさ。私には何が違うのかが分からない。巫女さんの霊は見てないし。」

 涼子は優しく微笑む。

 「莉子さん大丈夫よ。今回は祈願も受けてきたから。」

 猪瀬「ああ、じゃあオッケーだ。」

 「なんか納得してるけど、そういう問題なんだ。」

 「そういう問題なのよ。にゃはは。」

 涼子「じゃあ、みんな両手を合わせて『主よ守りたまえ』と心の中で繰り返していて下さい。何があっても私が良いと言うまで続けて。守られますから。」

 「はあい。」

 私は眼鏡をかけてから両手を合わせた。

 猪瀬。確かに今日はギンギンに光っていて後頭部には小皿みたいな後光まで出ている。でも涼子にはとても及ばない。半分にも満たない。

 ミユキのオーラも明るいし小皿みたいな後光も猪瀬並みのが出ている。

 心美、正人も手を合わせた。二人はホワッと淡い光に包まれた。お姉ちゃんの霊はいない。

 心美「目は閉じたほうがいい?」

 涼子「開けててもいいけど唱えるのはやめないで。」

 心美「はいはい。」

 眼鏡に見える涼子はギンギンに光っていて身体が白っぽく見えるぐらい明るい。後光もお盆みたいに大きく燦然と輝いている。

 涼子「主よ。創造主エルよ。我に悪霊たちを調伏する力をお貸しください。」

 天井はあるのに、上空から観音様が降りてきた。

 観音だけど中国風の鎧を着ているようにも見える。その顔は光っていて見えずらいが、涼子に似ている。

 鎧があるので胸がよく分からないが、男性のようにも見える。腰に剣を差している。

 観音様は降りてきて涼子に入った。

 涼子が強い張りのある声で言う。

 「根本なる仏の聖なる御名において命ず。岩見沢莉子に害をなしている者どもよ。その姿を現せ!」

 バチンとラップ音が響く。

 黒い顔に赤いつり目の忍者の師匠が現れた。

 涼子「汝は、あの者の先祖の霊。あの者は獣使いの家系。今まで悪さを続けていたようだな?」

 霊『我は忍び。たとえ坊主や神仏が立ちはだかろうとも我は何も明かすわけには行かぬ・・・喰らえ!』

 その霊からたくさんのイタチがブワッと噴出した。

 数百の小さな獣の霊たちが牙を剥き、大きな口を開けて涼子に飛びかかる。

 涼子がくるりと手を前で回した。

 獣たちはたくさんの赤いピンポン球ぐらいの火の玉に変わって行く。

 涼子が床を指差すと床に一メートルの黒い穴が空いて、火の玉たち数百は吸い込まれた。

 「動物を統括する神と精霊よ。彼らを導きたまえ。」

 黒い穴は消えた。

 それを見て忍者の霊は刀を抜いた。

 涼子は両手を左腰に回して剣を抜くような仕草をした。

 バチン!と空気が振動して、涼子の右手に雷でできたような光の剣が現れた。

 忍者霊が怯んだ。

 涼子は忍者霊にその剣を振り上げた。

 「ええーいっ!」

 涼子が剣を振り下ろすと、その剣はバチバチ鳴りながら伸びて忍者霊の胸を貫いた。

 『ぎゃあああああ!』

 霊は叫びながら消えた。

 あいつ本人の生き霊がそこに浮かんでいた。

 涼子は、躊躇せず剣を振り上げた。

 「生き霊返しっ!エエーイッ!!」

 涼子の『雷剣』は生き霊の胸を貫いた。

 霊は『フンギャアアアアア!』と叫んで消えた。

 でも悲鳴までバカっぽくてうんざり。

 涼子は剣をしまう動作をした。剣は消えた。

 観音様はスッと涼子の上に抜けて上空に消えていった。

 涼子は両手を合わせて祈った。

 「主よ。ご指導ありがとうございました。」

 涼子は柏手を一つ『ポン』と打った。

 「はい。終わりです。いいですよ。」

 私たちは「はあ〜っ」と安堵のため息をついて脱力した。


 日曜日

 ゆっくり過ごした。

 午後になって、涼子から電話が来た。

 『お兄ちゃんの知ってる警察関係の人から聞いたんですけど』

 「うん。」

 『その大葉っていう人、本当に危ない人だったみたい。』

 「でしょ?そんな感じしたもん。」

 『莉子さんの学校にも年齢詐称して偽造の身分証明書で転校って事にしてたけど、本当は二十二歳だって。』

 「うわウッソ!でも二十二歳でも高校は入学できるよね?」

 『去年、事件起こしてて執行猶予中だったんですって。ネットに名前と年齢が出ちゃったから身分詐称をしたらしいわ。』

 「ひええ、事件て何?」

 『色々。今までは獣の霊たちが守ってたから発覚しなかったみたい。』

 「ああ。霊たちはどうなったの?」

 『獣の霊は集合霊としてあの世の修行場に入れて浄化中だって。術師の忍者霊は地獄に封じられて出て来ない。生き霊は本人に向かうようにしたから色々な人に送っていた攻撃的想念が本人に還っていくわ。』

 「あいつこれから大変だね。」

 『てゆうか昨日の夕方逮捕されちゃった。もう学校来ないと思う。』

 「え、嘘、やった。え、あれ、やったで良いのかな?」

 『良いんじゃない?莉子さん辛かったんだから。』

 涼子優しい。


 月曜日

 そっと教室の引き戸を開けて入った。

 みんな真剣に話していて私に気づかない。

 廊下側の私の席に座った。

 「てゆうか莉子!」

 「うわ!何!」

 むっちゃんが急に後ろから私の首に腕を回してきた。抱き付くな。私にはない大きい胸が当たるって。

 舞ちゃんたちがタタッとこっちに来た。

 「莉子知ってる?あのイケメンくん逮捕されちゃったよ!」

 「逮捕されたのは知ってるけど、何で?」

 訊きながら、前のいつも通りのみんなでホッとしている。

 舞「街で女性つけ回してて、警察に職務質問された時、でかいナイフ持ってたからだって。」

 委員長「先生たちもおかしいと思ってたんだって。で昨日、あいつの住所に行ってみたら家がなかったんだってさ。実際に住んでたのは汚いアパートだって。」

 「でもナイフの不法所持か。じゃあそんな重罪じゃないね。」

 マキコが言う。

 「正しくは、去年、女性への強要と誘拐未遂で執行猶予中の銃刀法違反。あと先生たちが通報したから文書偽造。他にも窃盗とか傷害とか詐欺とか痴漢とか色々やってたみたいよ。」

 舞「やだ、こわ〜い。信じらんない。」

 「でもマキコよく知ってんじゃん」

 マキコ「お父さん捜査課の刑事。ドゥフ。」

 「内部情報漏らしちゃダメじゃん」

 舞「やだ私絶対狙われてた!あいつ謝ってきたもん。『仲ようしてやあ』だって」

 むっちゃん「あんたの貧相な体は狙われないよ」

 舞「何よ!むっちゃんの横幅だって可愛げがないじゃんよ!」

 舞ちゃんはむっちゃんの左肩をポコポコ両手で叩いた。

 む「あ〜、それ気持ちいい。肩こりに効く。」

 「あははは!」

 清美「ねえ、あいつ大卒ぐらいの年齢だったんだよね?」

 委員長「うん」

 蓮司「うげ!超怖ええ!」

 「嘘つきでわけわかんないね。」

 マキコ「高校三年の時にナイフ使って脅迫で訴えられてる。不起訴だって。でも退学になって、関西で働いてて、去年、女性を脅して執行猶予。で、また帰ってきて文書偽造で身分詐称してまで高校入って。でもそれでもそういう事やっちゃうんだね。」

 委員長「面接では真面目そうだったって。高校を何とか卒業したいって、」

 む「ええ?なら大人しくしてればいいのに」

 心菜「オラオラだったよね?」

 優芽「自己顕示的性格だとか?」

 「サイコパスの考えなんか知らん。」

 みんな笑った。

 サキ「うちの学校って誰でも入れるもんね。教員だって、この前「あれ来なくなったな」って思ってたらチカン常習者で捕まってた、なんてことあったじゃん?」

 心菜「うっそ。知らないそれ!」

 優芽「何でそんな奴ばっかり入れるの?」

 「来るものは拒まずでしょ?やめてほしいわ。苦労するのは現場なのよ!」

 舞「ふは!現場!」

 楽しい。いいクラスだ。

 む「莉子。寂しい思いさせてごめんね。」

 「えっええ〜?急に何?」

 む「先週そんな感じだったじゃん」

 「やだあ、気にしないで。涙ジワる。やめて〜優しくしないで好きになっちゃうぅ、でも優しくして」

 舞「すげえ早口。普段ももっと喋れ。」

 「でもありがとう、むっちゃん。みんなもありがとう」

 マキコ「私ら関係ないじゃん。ああ、てゆうか早くゼリーのやつくれ。」

 みんな正気になってくれて有難う。とは言えない。

 妙な感動の涙が頬を伝う。

 4に続く。

 

 

3は短めです。

23年に元になるものを書いたときは本当はなかった章です。

ちょっと思い付きを付け足ししました。言うまでもないのですが人物等は全てフィクションで仮名です。

次の4と6も、21年ごろに書いていたものを強引にぶっ込んだので全体の感じからちょっと逸脱しています。

ご容赦ください。

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