第7章: 魔法の起源
夜明けの最初の光が村に差し込み、質素な屋根を黄金色と琥珀色に染め上げた。朝の光は小さな家のカーテンを柔らかく通り抜け、エマの眠る部屋に優しく降り注ぐ。彼女は毛布の下で小さな体をわずかに動かしながら目を覚ましつつあった。
昨日の記憶が、彼女の心に鮮やかに刻まれている。光り輝く魔法の球、渦巻く風、そして姉の揺るぎない集中力――その瞬間が、彼女の中に消せない何かを灯した。好奇心と野心の炎。それは、もはや無視することのできない衝動だった。
完全に目を覚ましたエマは、小さな手で毛布を押しのけ、家の中をいつものように這い始めた。冷たい木の床が彼女の動きに応じて軋み、その音は朝の静寂にすぐさま吸い込まれていく。向かう先はただ一つ――図書室だ。
重厚な木の扉が堂々とそびえていたが、エマはためらうことなく進んだ。体重をかけて押し開き、わずかな隙間から中へと滑り込む。そこにはいつもの静寂が広がり、古びた羊皮紙と革の装丁の匂いが空気を満たしていた。埃が朝の光に照らされ、まるで異世界のような幻想的な輝きを放っている。
エマの目は、昨日手に入れた魔法の本へと向かった。革の表紙は使い込まれ、わずかにひび割れている。彼女は本へ這い寄り、小さな手で背表紙にそっと触れた。そして、それを引き寄せ、床に座り込みながら、畏敬と期待の入り混じった表情で本を開いた。
最初の一文を読んだ瞬間、それはまるで彼女のために書かれた言葉のように感じられた。
「この世界には、三種類の魔法使いが存在する。オーグメンター、キャスター、そしてスペシャリストである。」
エマは小さな声でその文章を繰り返し、言葉を噛みしめるたびに胸の高鳴りが増していった。彼女の指は、ページに描かれた挿絵をなぞる。鎧をまとった戦士、輝く魔法陣に囲まれた魔導士、そして言葉では表せないほど奇妙な力を操る者たち。
「オーグメンター……」
彼女は興奮気味に声を上げた。
「彼らは肉体や戦術能力を強化する魔法使い。戦闘や防御に優れ、物理世界と深く関わる特殊な技を持つ。」
彼女の脳裏には、拳で岩を砕く巨大な騎士や、目にも留まらぬ速さで動く戦士の姿が浮かんだ。
「キャスター……」
彼女の興味はさらに深まる。
「彼らは呪文を操り、元素を駆使し、召喚を行い、戦場を支配する魔法使い。魔法を紡ぎ、この世界の法則を道具や武器に変える。」
そして、最後の項目へと視線を移した。目を大きく見開きながら、彼女はその言葉を読んだ。
「スペシャリスト――時にミュータントとも呼ばれる。彼らの力は予測不能であり、しばしば遺伝的変異や神秘的な起源に由来する。」
エマの背筋にぞくりと震えが走った。それは、どのような力なのだろう? どんな奇跡を生み出せるのだろう? 限りない可能性が広がっていく。
ページをめくると、人の体の中心に輝く球体――「気核」の図が描かれていた。
「この世界の魔法は、生命の源である『気核』を通じてのみ顕現する。」
彼女は神聖な響きを感じながら、その言葉を声に出した。図の下には、気核の段階が色ごとに記されている。
「黒――初期または不純な状態。」
「赤――覚醒。」
「橙――上昇。」
「黄――凝縮。」
「緑――定着。一般的な魔法使いが到達する段階。」
彼女は息を飲んだ。
「銀――飛躍。」
「白――純粋。凡人が到達しうる最高峰。」
そして――
「無色――超越の段階。神のみが到達しうる無限の領域。」
エマの胸に、言葉の重みがのしかかった。彼女は目を閉じ、その高みへと到達する自分を想像した。死すべき者を超越し、神々の領域に足を踏み入れる未来を――。
震える手で、彼女はもう一冊の本を手に取った。表紙には「魔法の覚醒」と刻まれている。
「魔法の覚醒は、通常五歳から十歳の間に起こる。」
エマは苦笑した。
「私はまだ一歳にもなってないのに。」
その事実は、彼女に妙な自信と決意を与えた。
「気核を覚醒させるには、修練が不可欠である。外界と体内のエネルギーを生命の源に集中させることで、魔法は目覚める。」
エマは本の挿絵を眺めた。瞑想する子供たち、その体から光の波紋が広がっている。彼女は自然とその姿勢を真似た。小さな手を膝の上に置き、目を閉じる。
静寂が広がった。村の喧騒が遠のき、聞こえるのは自分の呼吸音だけ。彼女は自分の内側にある気核を思い描いた。小さな、小さな火種。でも、それは確かに存在する。
しかし、その瞬間、玄関の軋む音が現実へと引き戻した。
母親が帰ってきたのだ。
エマは慌てて本を閉じ、元の場所に戻した。そして急いでベビーベッドへと這い戻る。
天井を見上げながら、彼女の心は高鳴っていた。図書室の秘密が、彼女の中に一つの種を植え付けた。未来の自分の姿が見えた――強く、堂々と立ち、愛する者を守るために魔法を操る姿が。
夜の帳が降りる中、エマは夢を見る。血潮に魔法の力を感じながら。
いつか、必ずこの力を手にする。
いつか、必ず超越する。
――でも、今はただ夢を見るだけ。
そしてその夢の中で、彼女の内に宿る炎は、ますます激しく燃え上がっていった。