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第5章: 発見 パート3: ページのささやき

読んでくれてありがとうございます…!


もしこれまでの物語を楽しんでくれているなら、ぜひ感想を聞かせてもらえると嬉しいです。(あなたの意見を知ることで、物語をより良く発展させる助けになります。)


改めて、ありがとう…!

エマが図書館と初めて出会った日から続く数日間は、失敗と挫折の連続だった。

いつも目を光らせているヴィヴィアンは、どこからともなく現れては、母親のような口調で叱るのだった。


「エマ、ここは小さな子のいる場所じゃないわよ。さあ、行きなさい。」


しかし、今日は違った。

家の中はいつになく静かだった。ヴィヴィアンは用事で出かけ、デリックは仕事に没頭し、書斎の扉を固く閉ざしていた。エマにとって、またとない好機が訪れたのだ。


保育室の扉が軋みを立てながら開く。小さな少女がそっと顔を覗かせ、廊下を見渡した。

夕方の陽射しが木の床に長い影を落とし、入り組んだ模様を描いている。


エマは静かに、慎重に床を這うように進んだ。ひんやりとした板張りの床に、小さな手をそっと添える。

角に差し掛かるたび、彼女は目を大きく見開き、誰かがいないかと周囲を探った。


そして、ついに目的地に辿り着く。


目の前には、どっしりとした木製の図書館の扉がそびえ立っていた。まるで異世界への入り口のように。

小さな手でぐっと押すと、重い扉が低くうめき声を上げながら開いた。エマはすばやく中へ滑り込む。


そこは、静寂と荘厳さに包まれた世界だった。

そびえ立つ本棚が整然と並び、それぞれが無数の本を抱えている。

空気には、古びた羊皮紙と革の装丁の香りが漂っていた。

高窓から差し込む陽の光が、舞い落ちる埃を金色に輝かせている。


エマは這うようにして最寄りの本棚へと向かった。小さな指が、分厚い一冊の背表紙をそっとなぞる。

ぐいっと引き抜こうとすると、思ったよりも重く、バランスを崩して尻もちをついた。


「ふふっ…」


こらえきれずに笑うが、その音は広い図書館に吸い込まれていった。

床に落ち着くと、彼女はそっと本を開く。年季の入ったページがかすかに音を立てる。


そこには「人間王国エルド=クリアロス」の地図が広がっていた。

西方に位置するその王国の記述の中に、「リリィの谷のサターン」と呼ばれる広大な草原の話があった。

満月の夜にだけ咲くとされる星光の花々。そこは、黎明の女神オーロラが生まれた地だと言われていたが、本には詳細な説明がほとんどなかった。


「もっと知りたいのに…」


エマは小さく唸りながら、次のページをめくる。


そこには、人間王国の壮麗さが描かれていた。

活気あふれる市場、壮大な城、穏やかな村々——まるで絵のような光景が文章の中に息づいている。

エマは想像を膨らませながら、じっとその情景を思い描こうとした。


しかし、ふとした違和感に眉をひそめる。

おむつの端を引っ張りながら、不満げに呟いた。


「こんなのがあったら集中できないじゃない…!」


それでも諦めるわけにはいかない。彼女は次のページへと目を移した。


そこには「冥界王国ネザーランド」の記述があった。

地の底に隠された謎多き国。そこにそびえ立つ「塔」の存在。

巨大な黒曜石の柱が、突如として地上に現れる——。

それは災厄の前触れとされ、その後には必ず混乱と破滅が訪れるのだという。


エマの指が震える。


そして、予言の一節が目に飛び込んできた。


「塔が現れる時、闇は溢れ、世界を永遠の夜へと染め上げる。

地上に生きる者は、誰一人として逃れることはできない——。」


ページを閉じる小さな手が、わずかに震えた。

それでも、彼女の瞳は揺るがない。


「そんなこと、絶対にさせない…!」


力強く呟く。

小さな体にもかかわらず、その決意には確かなものが宿っていた。


その時——


上の棚から、一冊の本が落ちてきて、彼女の頭に直撃した。


「いたっ!」


痛む頭をさすりながら、彼女は落ちた本に目を向ける。

金の文字が刻まれた表紙には、こう書かれていた。


《魔法》


心臓が高鳴る。

震える指でページをめくると、そこには見たことのない紋章や図形が並んでいた。

魔法の基礎——それは、集中と意志、理解によって制御できるものだと記されていた。


これが鍵になるかもしれない。

世界を守るために、暗黒に立ち向かうために——。


エマは夢中で読み進める。


——と、その時だった。


背後に影が落ちる。


背筋に冷たいものが走る。


「エマ。」


低く、鋭い声が彼女を呼ぶ。


喉がひゅっと詰まり、ゆっくりと振り向く。


そこに立っていたのは——エリーだった。


驚きと呆れが入り混じった表情で、腰に手を当て、首を傾げている。


「…何してるの?」


エマは息を飲むと、思わず声を上げた。


「エリー…!」


しかし、それは静寂の図書館には少し大きすぎた。


エリーはため息をつきながら、慣れた手つきでエマを抱き上げた。


「ここは、あなたがいるべき場所じゃないのよ。さあ、ベッドに戻るわよ。」


エマは頬を膨らませたが、抵抗はしなかった。

エリーは軽やかに話しながら、彼女を保育室へと運んでいく。

その声には優しさがあったが、エマの思考はすでに別のところへ飛んでいた。


魔法の本——あのページが、彼女の心から離れなかった。


「また来る…」


彼女は小さく呟いた。


月明かりがカーテン越しに差し込む中、エマは静かに眠りについた。


夢の中に広がるのは、王国と魔法、予言と試練——。


図書館が見せてくれた未知の世界。

その秘密を解き明かすために、彼女はまた、一歩を踏み出すのだった。


明日も、新たな発見が待っている。

エマはそう信じていた——。

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