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第4章: 発見 パート2: 図書館の秘密

邸宅での時の流れは、日々の暮らしのリズムによって刻まれていた。朝の光が華やかなカーテンの隙間からこぼれ、木の床を金色に染める。市場へ出かけてから三ヶ月が経ち、その間にエマの世界への好奇心は抑えきれないほど膨れ上がっていた。彼女の小さな手は、屋敷の隅々まで探検したくてうずうずし、その愛らしい姿の奥には果てしない探究心が隠されていた。


ある午後、太陽の暖かさが和らぎ、柔らかな涼しさが広がる頃、エマはついにその機会を得た。ヴィヴィアンは台所で鍋の音を立てながら忙しく働き、デリックは書斎にこもり、時折数字や取引について独り言を漏らしていた。その隙に、エマは小さな冒険者のごとく、静かに寝室を抜け出した。動きは慎重で、しかし慣れたものだった。


図書室への道のりは、小さな体のエマにとって決して容易なものではなかった。分厚い絨毯が彼女の手や膝の音を吸収し、そびえ立つ扉の枠は、未知の世界へと続く門のように見えた。そしてついに目的地に辿り着く。わずかに開かれた重厚なオークの扉が、彼女を静かに誘っていた。


中に入ると、空気が変わった。ひんやりとした空間には、古い紙と磨かれた木、そしてインクのかすかな香りが漂っていた。図書室は、エマがこれまでの人生で見たどんな場所とも異なっていた。天井まで届く書棚が壁一面を埋め尽くし、大小さまざまな本がぎっしりと並んでいる。高窓から差し込む陽光が光と影のモザイクを描き、隅には巻物や灯されていない油ランプが散らばる重厚な机が鎮座していた。


エマの大きな瞳は、緑や深紅、漆黒の装丁に金や銀で刻まれた書名を追った。小さな指が滑らかな革の表紙をなぞり、一冊の本を引き抜いた。だが、それは彼女の手には大きすぎた。本はゆっくりと滑り落ち、絨毯の上で鈍い音を立てた。


エマは両手を使って何とか本を開いた。指先で紙をめくるたび、かすかな音が響く。そこには、血のように赤い月を背にそびえ立つ城、幽玄な霧に包まれた森、奇妙な記号が刻まれた地図が描かれていた。文字はまだ読めなかったが、一つ一つの筆跡に物語の重みが宿っているように感じられた。


さらにページをめくると、ある一枚の挿絵が彼女の目を引いた。天に届くような巨大な樹、その根は蛇のように絡まり、枝は雲を抱くように広がっている。その隣には、鋭くも威厳に満ちた表情の巨人の姿がうっすらと描かれていた。


エマの心の中で、物語が鮮やかに広がる。霧の森の奥に隠されたエルフ王国エルヴェリアンが、古の魔法と危険な冒険の予感を囁く。そこには、鋼をも貫く棘、誰も見ていないはずの影の動き、そして沈黙を破るかすかな囁きが存在するのかもしれない。


南方には、孤高のドワーフたちが築いた《アサリオン要塞》がそびえていた。その防御は伝説的で、石と知恵の結晶のような城壁がそびえ立つ。その空には、虚ろに光る瞳を持つドラゴンたちが旋回し、ドワーフの死霊術師の召喚に応じて飛来するという。


さらに東へ行けば、《ヴァーモンシー王国》が存在する。その先にそびえる《世界樹》のスケッチに、エマの視線が釘付けになった。その巨大な根は大地に絡まり、無数の生命を育んでいる。その下を歩く巨人たちの足音は大地を震わせ、彼らの異文化は世界と深く結びついていた。


エマは息を呑んだ。これはただの物語ではない。世界は広く、未知に満ちている。そして彼女の目の前には、その扉が開かれていた。


別の本にも手を伸ばすと、そこには錬金術の記号や道具が描かれていた。鮮やかなスケッチには、不気味な光を放ちながら渦巻く薬液や、泡立つ秘薬が並ぶ。ページをめくるたびに、まるで薬の匂いが漂ってきそうな錯覚を覚えた。ドラゴンの吐息の精髄や、粉末状のフェニックスの羽……。錬金術の作業台の詳細な図解も載っており、すべての道具に丁寧な注釈が添えられていた。


「まるで宝の山みたい……」


幼い舌足らずな囁きが、かつての大人の意識と相反して滑稽に響く。しかし、その言葉には真実があった。生まれ変わって以来、初めて感じる心の安らぎ。知識と発見の喜びに包まれたこの瞬間は、何ものにも代えがたいものだった。


だが、その静寂は長くは続かなかった。


「エマ!どこにいるの?」


ヴィヴィアンの声が、廊下の向こうから響いてきた。


慌てながらも、エマは慎重に本を元の場所へ戻した。指先が表紙の滑らかな感触を惜しむように撫で、最後に一度だけ図書室を見上げた。


「また来るから」


小さく呟いたその言葉には、揺るぎない決意が宿っていた。


扉が軋み、ヴィヴィアンが姿を現した。彼女は安堵の笑みを浮かべながら、エマをそっと抱き上げる。


「やっと見つけたわ。何をしていたの?」


エマは母の胸に身を預け、小さな手で彼女の服の端を握りしめた。


──別に。


心の中でそう呟く。だが、胸の奥では、彼女が見つけた秘密が鼓動していた。


ヴィヴィアンの優しい歌声に包まれながら、エマは寝室へと連れ戻された。母の肩越しに、図書室の扉が小さくなっていくのを見つめる。


その香りはまだ残っていた。古い紙とインクの匂い。


やがて眠りに落ちる中、彼女の心は期待で満たされていた。


図書室はただの部屋ではない。そこは知識と冒険の扉。いつかまた戻り、さらに深く、この世界の秘密を解き明かしていく。


この世界は、彼女のものだった。


そして、エマ──小さく、好奇心旺盛で、決して諦めない少女は、決して一ページたりとも見逃すことはないだろう。

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