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第11章:熱を帯びた朝

ウィンドフィールドの村は、またも穏やかな朝を迎えていた。通りは暖かな夜明けの光に包まれ、金色の陽ざしが屋根の上に溢れ、風に揺れる露に濡れた木々の葉をきらめかせていた。村はずれにある質素ながらも居心地の良い家では、半分開いたカーテンの間から差し込んだ陽光が小さな寝室を照らしていた。


光がエマの目に直接当たり、不安定な眠りから彼女を覚まさせた。彼女はうめき声を上げ、侵入してくる明るさを遮ろうと顔の上に毛布を引き寄せたが、無駄だった。銀白色の瞳は疲れで輝きを失い、しぶしぶと開かれた。


「なんだこれ? なんで体がこんなに重いんだ?」エマはかすれた声で呟き、ほとんど聞き取れないほどだった。横を向こうとしたが、その動作だけで手足に鈍い痛みが走った。信じられないというような、かすかな笑みが彼女の唇を歪ませた。「ありえない。かつてフロストフォール・タワーの領主だったこのエマが、弱さを感じるなんて」


強がりにも、体は彼女を裏切っていた。ベッドから起き上がろうとした時、足ががくがくと震え、一歩一歩が糖蜜の中を進むかのように重く感じられた。それでも意志を固め、彼女は廊下をゆっくりと進んだ。薄い銀色の髪は乱れ、パジャマも少し歪んでいた。奇妙な体調不良を太陽の温かさで洗い流せるかもしれないと考え、裏庭へと向かった。


庭は鮮やかな色彩と新鮮な香りに満ちていた。石畳の小道沿いには蕾を付けたバラとスミレが並び、大きなオークの木が木製のベンチに広々とした日陰を落としていた。母親のヴィヴィアンはチューリップの花壇の近くにしゃがみ込み、伸びすぎた草を丁寧に刈り取っていた。


ヴィヴィアンが顔を上げ、エマの姿を見た瞬間、彼女の穏やかな表情は一変して心配そうになった。エマの青白い顔色は明らかだった。トリマーを置くと、ヴィヴィアンは素早く立ち上がり、駆け寄った。


「エマ、どうしたの? 気分が悪い?」ヴィヴィアンの優しい声には心配の色が滲んでいた。


エマが答える前に、ヴィヴィアンは手を彼女の額に当てた。鋭い白い瞳が光り、娘の状態を確認した。「熱があるわ」彼女は小さく笑った。「生まれて初めてのことね」


エマの頭の中が騒いだ。熱? ばかげている! この新しい人生で一度も病気になったことなんてない。彼女は眉をひそめ、一つの可能性に思い至った。待てよ… 数日前、イーサンも熱を出していた。もしかして、うつったのか?


ヴィヴィアンが優しくエマを家の中へと導き、彼女の思考を遮った。リビングのソファに腰を下ろすと、温かみのある色合いの部屋には本棚がぎっしりと並び、居心地の良い空間が広がっていた。


「じっとしていて」ヴィヴィアンはメガネを外し、そっと横に置くと指示した。手をエマの頭の近くに寄せると、柔らかな緑色の光が彼女の掌から放たれた。光は潮の満ち引きのようにリズミカルに脈動し、やがてエマの肌に染み込んでいった。


温かさがエマの体中に広がり、熱の束縛を追い払った。手足のしびれも消え、代わりに心地よい静けさが訪れた。彼女は母親を見上げ、目に驚きの色を浮かべた。「癒しの魔法で熱も治せるの?」


ヴィヴィアンはくすくす笑い、メガネを再び鼻にかけた。「ええ、癒しの魔法は万能なのよ。怪我だけのものじゃないわ」


エマは首を傾げ、好奇心が瞳に灯った。「他に何ができるの?」


ヴィヴィアンは微笑み、表情が柔らかくなった。「呪いを解いたり、折れた骨を治したり、体力を回復させたり、失った手足を再生させることもできるわ」彼女は一瞬ためらい、からかうように笑いながら付け加えた。「でも最後のは、あなたの年齢には少し難しいかもしれないけどね」


エマの唇が皮肉っぽく歪んだ。もし知っていたら… 私の前世では、切断なんてものよりずっと酷いことを見て、そして引き起こしたのに。彼女は言葉を飲み込み、代わりに丁寧に頷いた。


「ありがとう、お母さん」エマは立ち上がり、ヴィヴィアンの頬にさっとキスをした。「図書館に行くわ。勉強したいことがあるの」


ヴィヴィアンは理解を示すような笑みを浮かべ、娘を見送った。「行く前に」彼女は声をかけた。「聞いた? 今週末、王立書店が庶民に開放されるそうよ」


エマは歩みを止め、心臓が一瞬跳んだ。


ヴィヴィアンは娘の目に浮かんだ興奮の輝きに気づき、笑みを広げた。「行ってみる?」


エマは振り向き、隠しきれない熱意を顔に浮かべた。「行く! もちろん行くわ」彼女の声は期待に溢れ、頭の中は駆け巡っていた。王立書店… そこにある知識の数々は計り知れない。魔法、歴史、この世界の秘密に関する本―全てが手の届くところにあるかもしれない。


エマが急ぎ足で廊下を消えていくのを見て、ヴィヴィアンは静かに笑った。


静寂と知恵に満ちた聖域である図書館の中で、エマはお気に入りの隅に落ち着いた。薄暗い室内には、天井まで届くほど高く積まれた本棚が迷路のような列を作り、ステンドグラスから差し込む光に照らされた塵が空中で舞っていた。


エマは近くの棚から分厚い本を引き抜き、王立書店が約束する可能性に思いを馳せた。どんな謎が私を待っているんだろう? その奥底にどんな秘密が隠されているのか?


本を開き、読み始めると、彼女の心は既に先へと跳んでいた。開かれようとしている知識の扉を想像しながら。熱は忘れ去られ、目標が再び燃え上がった。この世界には与えるものがたくさんあり、彼女はそれを全て手に入れるつもりだった。

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