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60話


 私の研究によって王国は「眼球移植」に成功した。



 枯渇人救済のため。そう聞かされていた。

 実際は違った。



 目的は「神器」の──「強制解除」


 

 神器──俗称を名のある武器とも言う。

 名前を与えられた神の力を宿す武器。

 扱える人間は武器側が選ぶ。

 その条件の一つに、属性の一致があった。

 神器は固有の属性を持つ。

 所有者と神器の属性。



「眼球移植」は、強制的に属性を合致させる。神器に適合する人間を王国は意図的に創り出そうとしていた──。

 


 移植は成人した人間には適さなかった。成熟した身体に眼球は馴染まない。発育途上の若い人間。子供たちが望ましかった。


 魔力の雫マジックヒールの資源となり白眼となった子供たちが被検体となった。

 この実験が未来の枯渇人たちを救う、そう信じて私は研究に没頭した。



 眼球の視覚部への移植は困難を極めた。激痛と大量の出血を伴い、それだけで命を落とす子供たちが続出した。



 そこで私は別の箇所への移植を試みる。

 最も適していたのは手のひらだった。

 筋肉が柔らかく、中手骨が固定の役割を果たす。

 そして初めての成功者が誕生した。


 我々は彼を──ぜろと呼んだ。


 零は手のひらに移植した眼球をまるで、自分の眼のように扱うことができた。

 零が成人を迎えると王国は神器を彼に与えた。

 零は所有者になった。私は王国の意図を理解する。それは──ダメだ。私の思惑通り、零の行動は意に反するものだった。


 零は神器の力を使い、すべてを──灼払やきはらった。


 そして、姿を消した。

 当然の結果だ。彼は王国を憎んでいた──。



 その後、医療技術は飛躍的に向上し、成人や視覚部への移植が可能になった。反逆者。新たな零を作らないために王国は「眼球移植」をほどこす人間を選別した。

 魔力を失った人間を救う為ではない。研究の成果は人々の為ではなく、王国の私利私欲の為に使われた。


 しかし、零のような適合者は現れなかった。解放条件は属性の一致だけではない。

 神器は所有者の潜在能力に呼応している。

 なぜ零は神器を扱うことができたのか?



 移植技術を会得した私の研究は、眼球そのものへと変わっていった。

 


 属性は火、水、風、地、光。

 種族を隔てず全ての生命が五大元素の魔力を生まれ持つ。氷や毒は水属性。熱は火、雷は光。派生亜種と呼ばれる属性が稀に存在するが五種類の系統に区分される。

 私は系譜の始祖となる特別な眼球があることを発見した。


 一見は対象属性と区別がつかない。が、光りを当てると虹彩は通常の眼球とは違う色合いを示した。

 より強い魔力を内包する眼球。それを「神獣眼」と名付けた。


 ある仮説を立てる。零に移植した眼球。今となっては確認することはできない。──が、あれは「神獣眼」だったのではないか? 


「神獣眼」は、個人の潜在能力を問わず神器に選ばれるのではないか?


 我々は「神獣眼」を探した。

 王国にとって脅威となる存在。使い方次第では大きな戦力となる。


 私のもとに眼球が集められた。もはやその出所がどこであろうと関係ない。いや、考えることを拒絶した。仮説が立証されれば魔力革命となる。私は自分の研究に集中した。


 そしてついに、神器の強制解除に成功したのだ。私の推測は正しかった。

「神獣眼」を持つ成人男性は潜在能力を問わず神器が扱える。

 王国は意図的に所有者を創り出した。しかし、それを不服に思う者たちが存在した。貴族たちだ。


 国家のバランスは王族と貴族によって保たれる。私の功績によって拮抗が崩れ始めていた。王族の独裁を恐れた貴族たちは陰謀を計る。



 それが、──私の人生を大きく狂わせることになった。ある人物の死が──私の研究を、いや、世界の常識を根底から覆すことになった──。



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